テラーノベル
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「……!」
僕は瞳を小刻みに動かしていた。
既にボロボロに泣いた顔に涙が溢れ出る。
彼は、僕を『優しく抱きしめていた』のだ。
最初はその状況に驚いたが、なにより彼の『温かいオーラ』に驚いた。
(……どう、して……?)
僕は驚きつつじっとしていた。
暫くして、耳元に彼の声がした。
「苦しかったんだろう……。」
「……え……?」
僕はあまりにも驚いた。
僕が殺そうとしていたのに。
僕が君を殺そうとしていたのに、と僕は悲しくなった。
「俺を殺そうとするのもきっと、苦しかったんだろう。……こんなにも、震えているのに。」
言われて僕はハッとした。
確かに僕は、彼の腕の中で震えていた。
「殺せと命じられたんだな。怖かったんだな。……。」
彼はそう言いながら僕の頭をそっと優しく撫でる。
まるで、怖がる小動物を撫でるような手つきだった。
それは不思議と安心感を覚えさせた。
「……どう、して……僕を……?」
僕は震えた声でおそるおそる聞いてみた。
「……かつての『俺』みたいで、見ていて俺は『怖かった』んだ。……だからだと思う。」
「だから……って……?」
僕は同じように聞いてみた。
彼は姿勢を変えず、撫でる手を変えずに話す。
「……前、こうやって俺を『受け止めてくれた』人が居たんだ。だから、『君を助けたい』と思ったんだ。」
それを聞いて僕は、瞳を丸くした。
信じられない事だと思っていたが、何故か不思議と、彼だと信じたい、と思ってしまう。
「今まで頑張ったな。……きっと、今まで苦しい経験、悲しい経験、辛い経験があったんだな。」
彼は耳元で優しくそう言う。
抱きしめられている、という事もあり、彼は『温かかった』……。
人の温もりには初めて触れた。
なにより『優しさ』に初めて触れた。
僕は彼の言葉を聞きながら涙を流すことしか出来なかった。
「君の心も体も、相当傷つけられてしまったんだろう。痛かっただろう。怖かっただろう。」
僕は震えながら、泣いて彼の背中に手を回す。
「──────もう、大丈夫。君は此処まで頑張ったんだ。生きたんだ。生き抜いたんだ。沢山、沢山頑張ったんだ。」
嗚呼、僕は……こういうものに弱いんだ。
そう思いながら僕はぽろぽろと涙を流していた。
彼は──────『優しすぎる』……。
「君は頑張ったんだから……もう、大丈夫。今──────俺が『君を助ける』から。」
彼はそういうと、近くの部屋の方を見てジッとする。
そこに居た研究員がそれに気が付くと武器を構えた。
彼は僕を抱いた姿勢を変えず、研究員を見ながら話す。
「お前が……いや、お前達がしてきたに必ず『天罰』は与えられる。その天罰を、俺が与えてやろう。……俺は『天を司る最高神、ユピテル』の『仮人間』だからな。」
研究員は瞳を丸くしながら武器を使い攻撃を始める。
銃弾が飛んでくる。
彼は僕をふわりと持ち上げて、避ける。
僕はふと彼の顔を見ると彼の瞳は、先程と同じ黄色の瞳をしていた。
逆に、僕の瞳は元の色に戻った。
「荷物を持ったまま天罰を?お前が出来ることなのか、それ?」
研究員は言いながら攻撃を飛ばす。
彼は僕を持ち上げたまま避ける。
何ともなさそうに動く彼を見て、研究員は少し唾を飲みこむ。
「出来ない、と誰が言った?」
彼がそう告げた瞬間、研究員の方に雷撃が物凄く大きな音を立てて落ちた。
「きゃっ!?」
僕は思わず声を出した。
その雷撃の音と共にこの施設の研究員が集まって現れた。
「撃てーっ!!!」
その声と共に様々な攻撃が飛ぶ。
僕は怖くなって思わず彼の服をきゅっ、と握った。
「……『雷閃光』!!!」
彼がそういうと、彼の周りに生じていた雷が一気に広がり、激しく光る雷撃に変わり、研究員達の攻撃を一気に打ち消し、研究員達を軽く飛ばす。
その攻撃の威力を見て、僕は驚いた。
(つ、強っ……強すぎる……っ!!!???)
上級の上級の階級の仮人間と真逆で下級の下級の仮人間である僕からするとそんな言葉しか頭に出てこなかった。
「……俺は人を殺しはしない。これは、俺なりのお前達への『天罰』だ。」
研究員は確かに全員死んでいなかった。軽く気絶してる人が居れば多少起きていても、痛みや麻痺で動けない人が居た。
「……そして、お前達にも告げておこう。人を平気で傷付ける人は『大っ嫌い』だ。」
彼はそういうと、僕を持ち上げたまま、施設の外まで走っていった。
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それは瞬間移動のようで、瞬きを一、二回した時には、外の景色が目に見えていた。
外に出てきて、彼はゆっくりと僕を下ろす。
(これが……外……???初めて、見た……。)
僕は初めての外で少し警戒があったのか、彼の方に少し寄った。
何故か分からない。
不思議と、彼は『信用することが出来る』ような気がする。
此処まで誰かを信じるのは初めてだった。
「……どうした。」
考え事をしていたら、彼の声がして我に返った。
「ぁ……な、なんでも、ないよ……。」
僕はどう話せばいいのか分からなかった。
まずはお礼を言うべきなのか、自分を名乗らずに助けられたから、先に自分を名乗るべきか。
それすら分からなかった。
彼は表情を変えずに居る。
表情は変わらないのに、何故か『優しさ』のオーラを感じる。
きっと、さっきは彼の『優しさ』に救われたのだろうか……。
感じたことがない『温かさ』だからこそ……。
──────僕は、彼の『優しさに溺れた』のかもしれない。
コメント
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尊さに語彙力が消えた為、アホみたいなコメントを残します。 お前ら速く付き合ってくれ
境命ペアぁぁぁっっ!!😭✨ 最高過ぎる、感動が止まらない!!✨ やばい(´;ω;`)