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惜しからざりし命さへ

長次のためなら私は死んでも良かった。死んでも良かったのだ。

天鬼に長次が殺されかけた時、咄嗟に体が動いた。右の胸をざくりと斬られて。気が狂うほど痛かった。ここで死ぬのかとも思ってしまった。でも。長次が私のことを庇ってくれた時の、その時の顔が、私よりも痛そうな顔をしていたから。相手に背を向けるだなんてあってはならないのに、死んでしまうかもしれないのに、それも厭わずに、私を庇ったのだ。

一連の騒動が終わったあと、長次は私の右腕を引いてこう言った。

「竹藪での件だが……もう、あんな無茶はやめてくれ。私は、小平太には幸せになって欲しい……」

いつもよりも数段小さい声だった。

私は長次に死んで欲しくない。どうか、長次には、生きて幸せになって欲しい。でも、長次も同じ気持ちなのだ。どうか私に生きてほしい、幸せになってほしいと、思っているのだ。

私はまだ生きなければならない。好いた人間のそんな悲痛な願いを無下にはできないだろう。だから。

「長次。私も長次には生きて、幸せになって欲しいとそう思っている。だから約束をしよう。『私と長次で、一緒に幸せになる』だ!」

長次は少し驚いたような顔を見せた。が、すぐにいつもの顔に戻って言った。

「小平太……それでは私に求婚しているようだ……」

「なはは!細かいことは気にするな!それとも本当に私に嫁ぐか?」

「嫁ぐにはまだ早い……」

「えっ! 本当に嫁いでくれるのか!?」

「もそ……細かいことは気にするな…。さあ、帰ろう」

「……おう!」

私は、長次と生きていたい!

rkrn 短編集 主にBL

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