(……ま、待って? 始まっちゃう?)
シャワーとか、今何時とか、色んな事を考えないといけないはずなのに、柔らかな舌の感触を味わい、チュッチュッと唇をついばまれていると、次第に頭がボーッとしてくる。
尊さんはすぐにストッキングを脱がし、私の太腿をスベスベと撫でた。
「……やべぇ。すげぇ興奮してる」
少し唇を離した尊さんは、そう言って私の手を握ると、自身の股間に導いた。
「ぁ……」
スラックス越しにも、そこがすでに芯を持っているのが分かり、私はサッと赤面する。
「抱きたい」
尊さんは私を見つめて、これ以上ないストレートな言葉を口にする。
「……押し倒してストッキング脱がせて、キスしておきながら言う言葉ですか?」
「じゃあ、いい?」
彼は私の手をとり、上目遣いに見つめながらチュッと手の甲にキスをしてきた。
(~~~~っ、こういう事、サラッとやるもんなぁ!)
「……どうしてもというなら、シャワー後に応じます」
「じゃあ、一緒に入りませんか?」
尊さんは私の手を握ったまま、再度手の甲に唇を近づける。
「は……、入って差し上げても宜しくってよ!」
照れ臭くて、ついなんちゃってお嬢様になってしまった。
「では、お嬢様。参りましょう」
私のお嬢様ネタにノッた尊さんは、ニヤッと笑ったかと思うと私を姫抱っこして立ちあがった。
「ちょ……っ、今の悪い顔、執事じゃない。悪役だ」
「お嬢様をさらう悪役御曹司でもいいんじゃないか?」
「当て馬?」
「そのまま、お嬢様が調教されて快楽堕ちするパターンもあるだろ」
「どこのエロ漫画!」
バシッと彼の胸板を叩いた時、ストンと洗面所に下ろされた。
「『月間速水』じゃ駄目?」
彼はふざけたまま、両手を洗面台について私を腕の中に閉じ込めてくる。
「……やらしくない雑誌名だから却下」
「『尊先生の教えてあ・げ・る』」
「ぶふぉおっ!」
私は噴きだしてその場に崩れ落ち、肩を震わせて爆笑する。
「いやー……」
私はしゃがんだまま尊さんを見上げ、彼が眼鏡を掛けて教鞭をとっている姿を想像する。
「……アリかも……」
ボソッと呟いた私を見て、尊さんはクスクス笑う。
「どんな想像してるんだよ。スケベ」
「なにを~! 尊さんなんてドスケベのくせに!」
「ほう……」
言い返しただけなんだけど、ドスケベと言われて尊さんはニヤリと笑った。
う……っ、これは今までになく悪い笑みだ。
「俺はドスケベだから、元彼に会う朱里をグチャグチャに抱くつもりでいるからな」
言われて、明日昭人と会うのだと思いだし、ちょっとだけ気持ちが沈んでしまう。
すると私の表情を見て、尊さんはしゃがんで目を合わせて微笑んできた。
「気持ちは分かる。でも側にいるから一緒に乗り越えよう。ちゃんと解決して、前に進むんだ」
「……はい!」
側に好きな人がいると思うだけで、こんなにも勇気が湧いてくる。
(好きだなぁ……)
しみじみと思った私は、尊さんに抱きつきしばらくそのぬくもりを堪能した。
……と、尊さんがポンと私のお尻を叩いてきた。
「さて、猫洗いするか」
目の前で彼が悪戯っぽく笑ったので、私は赤面してジロリと睨みつつ、「にゃあ……」と鳴いてみせた。
髪と体を洗った私は、バスタブの中で尊さんに後ろから抱き締められていた。
こんなふうに一緒にお風呂に入って、心から安心感を得られるのは尊さんだけだ。
「……私、昭人と尊さんを比べて、彼を落としたいわけじゃないんです。フラれたからって、恨んで悪口を言いたい訳じゃない……。と思いたい……」
「うん」
急に話し始めても、尊さんは「何の話?」と突っ込まず聞いてくれる。
そういう、何があっても受け入れ、きちんと聞くという態度がやっぱり好きだ。
「尊さんと付き合うようになって、あなたの色んな面を見て、言葉を聞くたびに『昭人はこうじゃなかったな』って思っちゃうんです。勿論、尊さんがすべての面で優れていて、好きっていう意味で」
「それは良かった」
尊さんは私の耳元でクスッと笑い、こめかみにキスをしてきた。
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月刊速水(*ノ∀`)ノ゙))アヒャヒャ 尊先生の教えてあ・げ・る ガン見👀ガン読み👀します(*゚∀゚)=3ハフンハフン