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仕事終わり。
数十メートル先に、見覚えのある影をとらえる。
その瞬間、こんな時間まで続いていた仕事のせいで疲れていたはずの身体が、不思議とどんどん軽くなっていくのが分かった。
無意識に歩く速度が上がり、すぐに触れられる距離まで近づくと、自分よりも少し小さいその背中にぎゅっと抱きついた。
「っわ、はやと、?」
「ん、悪い遅くなった」
「いや全然大丈夫だけど、ここ外なんだわ」
離して、と腕を軽く叩かれるが、もちろんそんなつもりは一切ないので更に強く抱き締める。
「充電、させて」
「後でゆっくりできるでしょ、ほら、 」
「んんー…やだ、今がいい」
「もう…今日は甘えたなの?」
諦めたような顔をした仁人が、腕の中で身体を捩らせてこちらを向いてきた。
「うん、って言ったら?」
真っ直ぐ目を見つめてそう言うと、そっと、仁人の顔が近づいてきて。
「、…今は、これで我慢して」
「家帰ったら、好きなだけ何でもしていいから、」
照れたように伏し目がちで告げる仁人。
「っ…今日飯食い行こうと思ってたけど、やっぱデリバリーでいい?」
早く抱き潰したい、と耳元で囁くと、分かりやすく頬を赤く染めて
「調子のんな、!」
と胸を叩かれた。
逃げるように先を行く仁人は、照れているのか、それとも俺と同じ気持ちなのか。
待ってよ、と追うその背中に愛おしさが増すばかりだった。