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スタートヽ(*^ω^*)ノ
◆レトルト視点
(あぁ、疲れた)
お昼を過ぎて、仕事に煮詰まり、
ちょっとだけ気分転換にと外に出た。
パジャマから最低限のTシャツに着替えて、マスクもせず、コンビニに向かう道中だった。
聞き覚えのある声。
耳心地の良い、愛おしい人の声に自然と振り向いた。
――その光景を見てしまった。
数メートル先に、キヨくんがいた。
同性でも見惚れてしまう程よく似合うスーツ姿、ビシッとした髪型。
横には見知らぬ、大人っぽい男性。
二人で笑い合いながら、なにか真剣な話をしている。
……すごく、距離が近かった。
レトルトは動けなくなった。
手にした財布も力なく下がり、呼吸も浅くなった。
(……誰? なんで、楽しそうに……)
ついさっき、あんなに甘いメッセージをくれたのに。
こんなにも近くで、別の人と笑ってるキヨくんを見て、
胸がざわざわと騒ぎ出した。
(……なんで、こんなに……)
喉の奥に、苦いものが込み上げる。
“嫉妬”だった。
こんな感情、初めてだった。
“信じたい”気持ちと、“不安”が入り混じる。
でも――
キヨくんは、気づいていなかった。
こっちを見ようともしない。
そんなことにすら、また心がちくりと痛んだ。
レトルトは、そっとその場を離れた。
スマホを握りしめたまま、ずっと胸の奥がざわついていた。
キヨくんと、あの知らない人。
仲が良さそうだったとか、楽しそうだったとか――
そんなこと、きっと気にする必要ないのに。
(……俺、何やってんだろ)
信じたいのに、不安が消えない。
頭の中で「大丈夫」って何度も唱えてみても、
あの光景が焼き付いて離れてくれなかった。
「……逢いたい」
ぽつりと漏れた声に、自分でも驚いた。
だけどそれが、本音だった。
ひとりでいると、どんどん悪いことを考えてしまう。
キヨくんの声が聞きたい。
触れたい。
……キヨくんに、包まれたい。
でも、外は嫌だった。
もう誰かと楽しそうにしているキヨくんを見たくない。
人の視線も、もう今日は無理だった。
震える指でLINEを打つ。
⸻
レトルトのメッセージ(LINE)
「キヨくん」
「逢いたい……」
「でも……外は、今日はちょっと無理かも」
「変なこと言ってたらごめん」
⸻
(……送った)
心臓がうるさい。
変に思われるかも。
でも、キヨくんは優しいから、きっと――
スマホを握ったまま、じっと通知を待つ。
数秒、数分が永遠に感じる。
(……どうか、嫌われてませんように)
つづく