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スタートヽ(*^ω^*)ノ
◆キヨ視点
スマホの画面を見た瞬間、身体がピクリと動いた。
いつものレトさんと、少し違う。
この短い文章の裏に、何か隠れてる。俺の胸の奥がざわついた。
さっきまで、ガッチさんと楽しそうに週末プランを立てていた。
「夜景が見えるとこはどう?」
『いや、レトさん人多いとこ苦手だし』
そんな他愛ない会話を交わしていた自分が、今ではもう信じられない。
全部、いらない。
行きたい場所も、食べたいものも、
レトさんが「逢いたい」って言ってる今、どうでもいい。
『…ガッチさん、悪い。全部、任せた』
「は?」
『急用できた。いや違う、最優先事項。俺、行くわ』
驚いた顔のガッチさんの返事を聞く前に、俺は車のキーを掴んで立ち上がった。
すぐさま運転席に飛び乗り、アクセルを踏む。
(待ってろ、レトさん)
信号が煩わしい。
前の車が遅く感じる。
車線変更なんて、いつも以上に強引になっていた。
この胸の焦りが証明してる。
レトさんの“ただならぬ気配”は、間違いなく本物だ。
いつも控えめなレトさんが、自分から「逢いたい」なんて言うなんて。
ドンッとハンドルに拳を打ちつけた。
悔しかった。
俺はまた、レトさんに不安を与えてしまった。
(……絶対に、ひとりにしない)
気付いたら、速度は限界ギリギリまで出ていた。
だけどブレーキなんか踏めない。
レトさんが俺を求めてくれてる。
それだけで、他のすべてを投げ捨てたくなるほど、俺は――
「……レトさん」
ハンドルを握る手に、力がこもる。
この手で、今すぐ抱きしめに行く。
濡れた心を、俺の熱で溶かしてやる。
つづく