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**【背後の訪問者】**友達と楽しい時間を過ごし、夜遅くに家へ帰った僕は、疲れ果てていた。お風呂にも入らず、靴を脱ぎ捨てると、そのまま2階の自分の部屋へ向かった。階段を一歩一歩重たく踏みしめながら、ようやくベッドにたどり着くと、体が沈み込むように横たわり、すぐに眠りに落ちた。
その時、隣の部屋から兄の声が聞こえた。「もっと気を遣わずに喋っていいんだぞ」と兄が言った。僕は目を丸くし、なんのことかと驚いていた。「何を言ってるの?」と聞き返すと、兄は続けた。「さっき、お前が階段を上がって来る時、後ろに帽子を被った友達みたいな人がいたじゃないか。もっと喋っていいよ。」
その言葉を聞いた瞬間、僕の背筋に冷たいものが走った。目の前が真っ暗になり、心臓が激しく鼓動を打った。「そんなはずない」と呟いたが、兄の言葉は確かだった。僕は急いで布団にくるまり、震えが止まらなかった。なぜなら、友達と遊んだ帰り道に通った場所が思い出されたからだ。
その道は、以前に交通事故が多発することで有名な場所だった。僕も、その夜にその場所を通った時、不気味な気配を感じていた。まさか、あの事故現場から何かがついて来たのかもしれない。布団の中で震えながら、僕は神様に祈った。「お願いです、祓ってください」と何度も心の中で繰り返した。
その夜は長く、恐怖に包まれて眠ることができなかった。窓の外から聞こえる風の音が、まるで誰かが囁くように聞こえる。家の中の微かな音さえも、不気味に感じられた。兄の言葉が頭の中で繰り返され、ますます恐怖が募っていった。
やがて、外が薄明るくなり始めた。僕は一晩中、布団の中で震え続けていたが、ようやく朝が来たことに安堵の息を漏らした。恐る恐る布団から顔を出し、部屋を見回した。何も変わった様子はなかったが、心の中にはまだ不安が残っていた。
その朝、家族に昨日の出来事を話すと、母はお守りをくれた。母は、「これを持っていれば大丈夫」と優しく言った。そのお守りを握りしめ、僕は少しだけ安心した。それでも、あの事故現場を通るたびに、背筋が寒くなる思いは消えなかった。
あの夜、兄が見たという帽子を被った友達らしき人物が何だったのかは、今でもわからない。しかし、あの恐怖の一夜を思い出すたびに、僕はお守りを強く握りしめ、二度と同じ恐怖を味わわないようにと心に誓った。