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時は遡る。
side聖奈
私は今お城の後宮に来ている。
別にお呼ばれしたわけじゃない。だってここでは聖くんの奴隷として認知されているからね。
今日は王妃様のお茶会の茶菓子を頼まれたんだ。
こういう小さな事の積み重ねがいつか生きてくる。
お茶菓子は大変気に入られた。マカロンはやっぱり見た目も良いし、この世界では数少ない甘味だしね!
「セーナ。貴女なら知っているかしら?」
そう王妃様に言われた内容は衝撃的なモノだった。
この世界にも孤児がいる。
それは当たり前なんだけど、私はどこかこの世界がゲームやアニメみたいに感じていて、そこで暮らせる自分に酔っていたんだ。
力があるのに活用しなかった。私は聖くんに何度も助けられたのに。
孤児達の悲惨な境遇を知ってしまったら何かせずにはいられなかった。
早速お金を寄付したいと聖くんに頼もうかと思っていたけど。
「陛下もお心を砕かれています。寄付するのは簡単ですが、それではダメだと。
私には理解の及ばない所で悩まれている様です。セーナなら何か解決策を思いつくのではと思い、相談しました」
「王妃様。すみませんが初耳でしたもので、考えがありません。ですが、こちらでも出来ることはないか動いてみます」
「ありがとう。国民は等しく我が子。子供達を頼みますね」
安請け合いしちゃったかな?でも、私も助けたいし、出来ることはするよ!
どうやら寄付は一過性のもので長期的な解決にはならないから王様はしなかったみたい。やらない善よりやる偽善だと私は思うけど。
子供達が働けない事情はなんとなくわかったから、後は子供達を働ける様にするってことだね!
時は戻り。
side聖
「いらっしゃい。同年代の子だけど、この子は俺よりも頭が良いからしっかりと学んでくれ」
「「「よろしくお願いします!」」」
子供達が家に来て勉強することになった。広い屋敷だが、子供が増えると賑やかで良いな。
死んだ爺さんがよく言っていた(『家が賑やかで良いわい』)意味が、漸く少しは理解できたかな?
リビングを勉強部屋として子供達に授業を開く。
ちなみに何故か子供が昨日より多い…なぜだ?
10人はいるぞ?
後で聖奈さんに聞こう。
ミランが掛け算と割り算を教えて、足し算と引き算がまだ出来ない子には聖奈さんが教えている。
文字も書けない子にはエリーが教えている。
俺は暇をしている。
あれ?新手のイジメかな?
そもそもエリーには車を作ってもらわなきゃならんから、俺が算数を教えてミランが文字を教えれば全て解決するのに、聖奈さん達から俺は手を出すなと言われた。
なんか三人が俺には仕事をさせてくれないんだよな。特に誰でも出来る系のやつは。
まぁこの塾の塾長は俺だから(自称)後ろから見てやろう。
おっ。この子は…名前は忘れたが働いてくれる子だな!何何〜うん。合ってるな。
こいつは生意気そうな奴だな!俺はそういう奴の方が好きだぞ!
どれどれ〜うん。合ってるな。
そこは空気読んで全問不正解にしとけよ。キャラがブレてるぞ?
と、俺が後ろから覗いていると・・・
「セイさん。邪魔です」
「すみません…」
ミランに怒られてしまった。邪魔って……
俺は枕を濡らして昼寝をした。
「やべっ。寝過ぎた。まぁいつものことか」
俺が目を覚ますとすでに夕方だった。
「ミランが昼飯に起こしに来てもくれなくなった…」
俺は寝過ごしたことよりも何よりも、ミランが俺のことを忘れてしまったことに動揺してまた寝ようとしたら……
「起きてますか?」
ガバッ!
「起きてるぞ!どうした?事件か!?」
「いえ。子供達が帰ったのでそれを知らせに…先程はすみませんでした。セイさんも悪気があった訳じゃないのに」
ミランは謝るが、全面的に悪いのは俺だ!安心しろ!
「いや、子供達の集中を乱す事をしていたのは俺なんだから謝らないでくれ。ミランに嫌われていないなら俺はいいよ」
「っ!!嫌う訳ないじゃないですかっ!!」
ひぃっ!?怒鳴られた…反抗期かな?
「そ、そうか。安心したよ。子供達はどうだった?」
「もう…子供達は…まぁ私より年上もいましたが……
皆さん飲み込みが早いので、覚えるのもすぐだと思いますよ」
ちなみにミランに掛け算割り算を教えたのは俺と聖奈さんだ。この世界では商売に関わらないと使うことがないからな。
逆に商会で働くなら必須だ。
足し算や引き算と文字は、親が子に教えるのが普通だ。商会で働きたい子は知り合いの商会でほぼタダ働きの丁稚奉公をして掛け算割り算を学ぶ。
孤児院の子は出来が悪いイメージがあるらしく、中々丁稚奉公も受け入れられない。
親がいないから知り合いも限られるしな。
ミランは独学で掛け算割り算をある程度理解していた。なので教えたのは九九と筆算のやり方がメインだ。
ミランはホンモノの天才だ。
聖奈さんはエスカレートして因数分解とか教えていた。
もちろん俺は自分の学のなさが露見することを恐れて、教えるのはやめた!
自己防衛万歳!
ミランと聖奈さんはこの後、夜な夜な教科書を作っていくことになる。
俺がそれを知ったのは、それのコピーを頼まれた時だった。
「じゃあ、もう覚えたのか?みんな優秀だな」
算数の授業しかしていないとはいえ、あの4人は一週間で掛け算と割り算を覚えたようだ。
「うん!だからこれからは店の運営の練習だね!後、店の内装はよろしくね!」
「ああ。聞いていた通りにするよ」
聖奈さんから渡された図面を持ってバーンさんの工房へ行き、内装に使う棚などを頼んでいる。床には地球産の濡れても大丈夫な貼るだけタイルを必要な分だけ買ってきているし、中々豪華な内装になりそうだ。
外は普通だけど。
後一週間で店をオープンさせる。国王を始め、色々な知り合いに宣伝しているので止められない。
国王は行きたいと言っていたが、どう考えても無理だ。それに来るな。
俺は国王の側近であるいつもすぐに酔い潰れる爺さんへと、口を酸っぱくして止めるように伝えておいた。
元々の店はこぢんまりとしていたが、一階の生活スペース(ダイニング)とかを全て壊して、売り物を並べるスペースを広げた。
2階は物置兼従業員の休憩スペースだ。
業者(商会)との取引はしないから応接間とかもない。あくまで個人向けの店だ。
欲しいなら並んで定価で買えということだ。
「よし!大工のセイさんで頑張りますか!」
俺は工具を持って転移した。
近いんだから歩いて行けって?嫌だよ。工具が重いんだもの・・・
「ふう。こんなもんかな?」
まずは壁紙と床(タイル)の施工をした。
「この職種で食って行けそうだな…」
壁は白ではなく色とりどりの柄物の壁にした。この世界では今のところ見たことがないくらいには、レアだと思う。
他の店との差別化のようなものだ。
「次は棚を取り付けるか」
いらない壁はすでに壊してある。後はバーンさんに作ってもらった棚をビス留めする。
すでに取り付け位置や家具の配置は決まっているので、流れ作業のように進めていく。
最後にカウンターを設置したら完成だ。
クソ重たいので、身体強化魔法を使って設置した。
「なんでカウンターが削り出しで作ってあるんだよ…200キロくらいあるんじゃないか?」
作業が終わった後、俺は防犯の魔導具を起動させてクローズの札を出してから家に帰った。
「お疲れ様〜!遂にオープンだね!」
今日はオープン前最後の夜。聖奈さんが腕によりをかけた料理が所狭しと並ぶ。もちろんそんな量を俺たちだけで食べられるはずもなく、孤児院の関係者全てを招待した。
「お疲れ。明日は忙しくなるといいな」
「そうだね。一応声を掛けられるだけは掛けたから暇にはならない予定だけど、やっぱりいざしてみないとわかんないよね」
「私達も明日は頑張ります!」
「はい!お給金はデザートの大盛りでいいです!」
ミランは少し隠し気味だが、エリーは欲望がダダ漏れだな。
「セイさん。セーナさん。ありがとうございます。仕事ばかりか勉強まで…」
院長のお婆さんが感極まった表情でお礼を伝えてくる。
計算や文字が問題なければ、ウチ以外にも働き口はあるかもしれない。
聖奈さんはそれを考えて全員に授業をしているようだ。店員としての授業は働く子たちだけで、他の子には礼儀作法を教えている。
俺にも教えてほしい……
「院長。気にしないでください。聖奈はしたい様にしているだけですから」
「そうですよ。上手く行けば店の評判から孤児院の子の評価に繋がるかもしれませんね」
「そこまでお考えに…初めに疑ってしまって、恥ずかしい限りです」
それは仕方ないよな。子供達の為に孤児院を運営しているのに、どうしても冒険者しか職がなく先立つ子や、嫌々娼館で働かされて将来を絶望する子供達をたくさん見て、さらに騙されたら何を信用して良いのかわからんもんな。
後は店の評判が良くなれば、自ずと孤児院の子を雇う人達が増えるだろう。
それは俺たちじゃなく、これから働くこの子達次第だ。
頑張れよ。
ちなみにうちの子達はデザートを2人占めして、聖奈さんに怒られていた。
育て方間違えたか?
うん。バーンさんのせいだな。
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ミラン「良かったのですか?セイさんを除け者みたいにして」
エリー「そうです。何だか寂しそうにしていました」
聖奈「セイくんは優しいから余り子供達とふれあいさせたくないの。すぐに情が移って何でもしちゃうから子供達の為にもならないしね」
ミラン&エリー「わかります」
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聖「一番年上のあの子は普通に可愛かったなぁ」デュフフ
聖のゲスイところが見えるのは後書きだけです!本編では!一応!主人公ですから!!
次話冒頭にて、店内の挿絵(雰囲気)を添付しております。