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「いらっしゃいませ!ごゆっくり見ていってください!説明が必要でしたらお近くの従業員までお気軽にお声がけください」
元気な声が店内に響く。
一応、安いものは置いていない。だが、売り方は庶民的だ。
「本当に無料なのか?」
「はい!試飲はお一人様一杯限り無料です。明日まで無料なのでまた来てくださいね!」
女の子はメイド服を着ている。もちろん聖奈さんの趣味で地球産の物だ。
ちなみにミランとエリーも例外ではない。ご愁傷様。
男は執事服だが、俺は普段着だ。最初はどんな客が来るか分からないから、用心棒として店に立っている。
聖奈さんは客層と売上、売れた商品を細かにチェックしている。
聖奈さんは自らメイド服を着ている。もちろん写真を死ぬほど撮らされた。
開店前は店の前で、みんなで記念撮影をした。
もちろん孤児達は何をしているのかわかっていないが、聖奈さんの言葉にはイエスマンだった。
子供達は侮られることもなく、着々と接客をこなしていく。
良かった。絡まれることがなくて。
昼になり1人ずつ休憩してもらう。今日は6人も店員がいるけど普段は三人だ。だから一人ずつでの休憩に慣れてもらう。エリーとミランは最後に二人同時で休憩だ。
ちなみに売れ行きも上々だ。
一人の商人が他の街へ行商に行くから、大量に買いたいと申し入れがあった。別に量はいくらでも構わない。買い占めなど不可能だからだ。地球の生産力を舐めてもらっちゃ困るぜ。
その商人はガラス瓶を買おうとしていたらしいが値引きには応じない。子供達がそう伝えると上の人に紹介してほしいと言ってきた。しかし、それも無理だと伝えると肩を落とし10瓶程購入して出ていった。
流石商人。トラブルは起こさなかったな。これがただの金持ちや国のお偉いさんだとまた違ってくるかもしれない。
その為の予防に、入り口に王族御用達と看板を掲げている。これで変なことをする人が減ればいいが。
もちろんその看板は逆の効果も発揮する。
王族御用達なんて書かれていたら敷居が高いと感じる人が多いからだ。
まぁその内、口コミで広がるだろう。リーズナブルではないが、珍しく、そして、ちゃんとした商品だと。
「セイさんも休憩に入ってください。お弁当美味しかったですよ」
「そうか。それは楽しみだ。何かあればすぐに呼ぶんだぞ?」
俺はお言葉に甘えて、二階へと上がっていった。
「お疲れ様。愛情を込めて作ったからこれ食べてね!」
2階では聖奈さんが机に向かって何か書いていた。
「うん。ミラン達への愛情の味がする」
やっぱり聖奈さんの料理はメチャクチャ美味い。性格と味は比例しないのか?
そうだな。それなら俺が作ったら世界一美味くないといけないもんな。
「売上はどうだ?」
「初日の午前中にしては、売れた方じゃないかな?
これから口コミで広まれば、お金持ちが食器や小物を買ってくれるんじゃないかな。
どちらにしても一週間くらいが勝負だね」
それ以降は良くも悪くも安定すると言うことか。
さて、昼からも頑張りますか。
『ですから!委託販売などはしていないですっ!』
俺が昼からも頑張ろうかと思っていたら、下から大きな声が聞こえた。
この声は大人しい最年少の、シリーの声だな。
よし。助けに行くか。
「待って。まだ様子を見ようよ。私達がいつもいるわけじゃないから」
「そうだな。いざとなってから介入しよう」
俺たちは下の声に耳を傾けた。
sideシリー
「ですから、ウチは委託販売は行っていません。通常の販売でも個数制限は設けていませんので、いくらでもご購入ください」
このおじさんはしつこいですね。これまでの商人さんはすぐに引き下がってくれたのになぁ。
「子供じゃ話にならん。この店の責任者を出せ」
しかも高圧的。セーナさんが教えてくれた商人のしてはいけないことランキングのトップ5に入ることです。
子供と言われている私達でも守っていることが出来ないなんて、大した商人さんではないんでしょうね。
「責任者はここを任せられている私達です」
「言葉が通じんのか?俺は魔導士協会のお偉方にも顔が通るんだぞ?こんな店、すぐに潰してもいいところを話をしてやると言っているんだ!早く店主か会頭を出せ!」
言葉が通じないのはあなたの方です。
しかし、一応お客様。無碍には出来ません……
そう私が考えていると、騒ぎが大きくなっていたようで、私とは別の従業員がやってきました。
「すみませんが、トラブルを起こされる様でしたらお引き取り下さい」
ガイくんだ。大丈夫かな?
「なんだガキ?俺に楯突いたらこの街じゃ暮らせんぞ?」
「お引き取りを」
凄い。ガイくんは気丈に対応している。普段は私より子供っぽいのに……
ミランさん達は助けてくれる気配がないから、私達だけでどうにかしなきゃ。
「お帰りください」
私も頭を下げた。
「このガキどもが!」
その声に顔を上げると、顔を真っ赤にしたおじさんが私に向かって手を振り下ろそうとしていた……
バキッ
「うっ!!」
「ガイくん!!?」
なんで!?なんでガイくんが殴られるの!?
「ガキ!邪魔だ!」
おじさんはさらにガイくんに追い討ちをかけようとしている。
私は暴力に恐くなり目を瞑ってしまった。
「そこまでだ。よくも俺の可愛い従業員に手をあげてくれたな」
聞き慣れた声に顔を上げると・・・
そこにはおじさんの首を後ろから掴んで持ち上げているセイさんがいた。
セイさんは…見たことのない怖い顔をしていた。
side聖
「なんかヤバそうじゃね?」
ガイが割り込んでシリーを助けたのはいいが、あの手の奴はこっちが冷静に対応すると逆効果になることが多いんだよな。
むしろおだてればすぐに解決しそう……
まぁ、あんな客はウチにはいらんから、どうでもいいが。
「そうだね。手をあげたら介入しましょう」
「遅くないか?それだと子供達が怖がるんじゃ?」
PTSD的な?
「あんな奴は捕まえなきゃダメだよ。今のままだと衛兵に捕まってもすぐに解放されちゃうけど、暴力を振るったら…」
「おい…」
俺たちがそんな話をしていたら、案の定男は手をあげた。シリーに。
それは許さんぞ!
しかし、助けに行こうとした俺の目に飛び込んだのは、それを庇うガイだった。
バキッ!
『うっ!』
それを見た俺は聖奈さんにお伺いを立てる。
「もういいだろう」
「うん。やっつけてきて」
水◯黄門みたいだな。ここで動くのは水戸光圀だけど。
俺は男の首を後ろから掴み上げると、込み上げてくる怒りのままに言葉を発した。
「そこまでだ。よくも俺の可愛い従業員に手をあげてくれたな?」
「ぐ、ぐるじい…」
「ガイ!よくやった。女の子を守るとは、まるで御伽噺の騎士様だな!」
俺は驚きながらこちらを見ているガイを褒めておいた。俺の指導は褒めて伸ばすタイプだからな!
生徒はいないけど……
「セイさん!ありがとうございます。ですが、私は騎士ではなく商人になりたいです」
そこは嘘でも合わせておけよ。まぁそう言われて嬉しいけど?
「ガイくん!大丈夫!?ごめんね。私のせいで」
「シリーのせいじゃないよ。それにこういう時はありがとうだろ?」
おい。独身彼女無しの前でイチャイチャするな。俺が殴るぞ!
いや、泣くぞ!どうだ!?怖いだろ!?大人が泣いたら怖いんだぞ!
「俺はこの男を連れて行くから、店を頼むな」
「「「はいっ!」」」
三人の子供から元気の良い返事をもらって、ミランとエリーからは『なんでもっと早く助けなかったんですか!!』というくらいの冷たい視線をもらった。
さて。どこに連れて行こうかな。魔導士協会に知り合いがいるって言っていたからそこに苦情を言いに行ってもいいけど。
面倒だし知り合いのところにするか。
俺は身体強化魔法を使いながら、気絶してしまった男を引き摺り水都の道を歩く。
「ど、どうされました!?」
驚いた騎士が駆け寄ってくる。ここは城の入り口だ。
「すみません。本日からセイレーンで店を開いたのですが、この男がうちの従業員に暴力を振るったので捕まえて来ました」
「セイ殿は凄腕の冒険者だと聞いております。よもやその店で暴力を振るうとは…こいつは…」
うん?何やら男の顔に見覚えがあるようだ。
「私は店の護衛があるので、何かあれば店の方にお願いします」
「はっ!わかりました!身柄は確かに預かりました」
騎士の言葉に俺は背を向けて、店へと帰ることに。
良かった。騎士さん達が俺の事を覚えていてくれて。
側から見たら、不審者はどう考えても俺だもんな。
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聖(見たか子供達よ!ヒーローの参上だぞ!)
ガイ「うーん。商人の方がお金持ちになれそうだし、商人で!」
シリー「ガイくんありがとう!カッコよかったよ!」
聖「あれ?俺が助けたのに…?」
ミラン&エリー「セイさんから邪なオーラが出ています」
聖奈(2人のメイド服…)デュフフ…