営業時間終了後まだ従業員達は閉店作業をしている中、私は元自宅から持ってきた非常食てある牛飯の缶詰を食べていた。
(追手を欺いて私がいる場所を分からなくさせるために、幻惑で分身みたいなのも作っておきたいけど…私と炭酸水素ナトリウムの混合物なんてできるはずもないんだよな〜)
試しに髪の毛を1本引っこ抜いて超少量の重曹とマタールナと混ぜ、食べ終わって用済みの缶に塗る。
缶の外見は、1本の髪の毛になっただけであった。
(やっぱりそうなっちゃうか〜)
気を取り直して、売れ残って処分予定の商品をいくつかとる。
明日以降も販売する商品を盗むのは、さすがの私でも罪悪感があるためやっていない。
炭酸水素ナトリウムの成分が主に入っているベーキングパウダー、アルミニウムや銅の製品などマタールナの性質を引き出すために使えるものを手に入れられた。
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そろそろ、従業員が全員退勤しただろう。
イベントスペース付近のトイレへと、浮かばせたマタールナなどの所有物と共に移動する。
全ての照明が消灯してあって私の片目は失明しているせいで、視界が限られていて歩きにくい。
(暗くて怖……)
聞こえるのは、自分の足音とたまに壁に当たる所有物の音だけだ。
人が近くに来ればその足音でわかり、すぐに酸化銅とマタールナを化合させてレーザーで攻撃ができる。
無事にトイレに辿り着き、1番奥の個室に入る。
「床が硬い…毛布が欲しい〜」
(このままだとすぐに私がいる場所を特定されそうなんだよな〜。何か対策とかしておきたいけど……私の分身は無理でもマタールナの分身の幻惑ならできそうかも?)
液体状のマタールナと炭酸水素ナトリウムの混合物を、空き缶に塗ってみる。
空き缶の外見は、マタールナの液体になった。
「寝ると効果切れるから、朝起きた後にやっといた方がよかった…」
本格的に眠りにつきたいため、目を閉じて何も考えないようにする。
しかし床の材質が良くないのか、中々寝付けなかった。
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足音が聞こえて目が覚める。
(誰か来た?私がいることがバレているかもしれない…)
ベーキングパウダーとマタールナを触れさせて、幻惑で私とその荷物を窒素に見えるようにする。
さらにアルミニウムとマタールナで所有物を自在に操れるようにし、恐る恐るトイレから出る。
大型商業施設の出入口の方へ行ってみると、外は明るくなっていて従業員も出勤し始めていた。
(バレていなくてよかった〜…ん?)
軍服のような格好で紫色の髪の妙な男が、従業員と話している。
「この辺で不可解な現象を確認しやへんでしたか?例えば物が変な動き方をしたり、外見と実際のものが違ったりみたいなことやな。」
(エセ関西弁の男はマタールナの存在を知っているのか?マタールナを持ってる私の場所をこんなに早く探しに来るとは…)
「特にそういったことは見ていないですね。他の人にも聞いておきます。」
「調査に協力してくださっておおきにな。」
私がここにいることは気付いてはいないようだ。
(ここからは離れて遠くに逃げた方がいいか…?)
営業時間よりかなり前なためまだ自動ドアが作動していなく開きっぱなしの出入口から、緊張しつつも外へ出る。
「足音があっちの方からせんかった?」
紫髪の男が一瞬だけ私がいる方向を振り向いた。
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