「お疲れ様でした!」
金曜日で18時に帰れる事が奇跡だった。いつもなら残業してるもんね。ノー残業デー大好き!!
(久々に本買いに行こうかな〜。それとも、あっ散歩!!ここから家までとか楽しそう😊)
俺は新入社員でこの会社に入った。就活は早々に終わらせて、資格取ったり勉強したり最後の大学生活を満喫して、4月から入社したわけだが何だか思っていたのと違った。
(出る杭は打たれる)
まさにそのまんま。だから俺の実力は今温存中。先輩に諂いながら、虎視眈々と時期をみてる。
その中、凄く綺麗な人を見つけた。9年先輩の向井康二さん。俺とタメって言っても納得されそうな容姿をしている。
『おー新人さんやん。俺は向井康二。なかよーしてな。』
『村上真都ラウールです。よろしくお願いします!!(90度のお辞儀)』
『ハーフなんやな。俺もやで😆』
『そうなんですか!?』
『あ、それから俺のことは下の名前で呼んでな。俺のにーちゃんも勤めとんねん。』
『分かりました。えっと康二先輩。』
『自分背高いなぁ。』
『そうですか?』
『う、自覚なしなんやな。まぁええわ。これからよろしくな😁』
『よろしくお願い致します!!』
ってことがあったんだけど、康二先輩は俺よりも少し身長は低めで、でも一般男性の平均ぐらいの身長だと思う。ふわっと香ったシャンプーの匂いが俺のと一緒だな、なんて瞬時に分かるぐらい俺は康二先輩が気に入ってしまった。所謂、一目惚れ。理系の俺はそんな事あり得ないとずっと思っていた。
(数式や理論ではどうにもならない事ってあるんだな)
初めて知った感情。でも相手は男性で年上。かなり前途多難。
(康二先輩恋人いるのかな?)
いたら大人しくしておこうと思う。わざわざ入った会社を辞めたくないし。
(今度先輩と仲がいい渡辺先輩に聞いてみよ。)
恋人いないといいなー。
そんな事を考えながら歩いていたからか、急に誰かとぶつかった。
「す、すみません…グズッ。」
「いえこちらこそ、すみません!」
「グズッ…。」
すぐに相手に謝ったが何だが様子が変だ。
「あの、どうかされ…え?康二先輩!?」
「え…ラウール……グズッ。」
見上げてきた顔は紛れもなく康二先輩で、頬は涙で濡れていた。
「その格好はどうしたんですか!?」
先輩はどうにか隠そうとジャケットを前で握り締めていた。シャツは上のボタンが無くてスラックスから裾が出てるし、ネクタイはただ首に引っ掛けてるだけ。
「ヒック…、なんか…変な奴が、グズッ…襲ってきて無理矢理…っ。」
「何それ!?」
「待ちやがれーーっ!!」
「ヒッ!?」
先輩が来た方から男の野太い声が聞こえた。
「大丈夫俺が守ります。」
「え?」
俺のスプリングコートを先輩に着せて背中に隠す。
「おい!そいつを…ぐぁーーっっ!!」
俺は一歩踏み込んで、怒りを乗せて回し蹴りをした。
「俺の怒りはこんなもんじゃないけどね。これ以上やったら俺が捕まっちゃうから。」
「ぐっ…(バタッ)」
「ラウール…?」
「今から警察と救急車呼びますね。」
俺は自分のネクタイを引き抜いて、後ろ手に男を縛った。
「ヒック、ヒック…。」
「もう大丈夫ですよ。」
「ラウール…グズッ。」
「先輩顔色悪い。こっち座って下さい。」
低い石垣へと先輩を促す。
「あ、ありがとう…グズッ。」
その隣に座って俺は警察と消防に電話した。
「ーーーーーーー。よろしくお願いします。先輩すぐに来てくれるそうです。」
「すーすー。」
「……寝ちゃったか。よっと。」
先輩を俺に寄りかからせて腰を支えた。
(こんなに感情出したの初めてかも。回し蹴りも綺麗に決まったし本当に惚れちゃってるなこれ)
「絶対にこれからは俺が守るから。」
そう心に決めて警察と救急車が来るのを待った。
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