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裏話としては、その協定は天使たちの技術力を宇宙人に奪われないための防壁でもあり、
『地球人同士の争いに介入してはいけない』という決まり事も、この目的のために作られたものである。
その決まり事を破った場合、 協定違反の罪で、天界では最も重い罪の一つとされる堕天の刑が下される。
それは、他の種族への強制的転生及び肉体の完全なる抹消、及び記憶の永久封印、 更には存在自体がなかったことにされるというもの。
これを受けた者は二度とこの世に戻って来ることは出来ない。
「……あのさぁ、なんであたしだけそんな怖い目に遭うわけ?」
目の前に横たわる巨体の男に問う。その男はまるで動こうとはしなかった。
もう既に死んでいるのか、それともこの男はまだ生きているのか。
わからない。だからとりあえず声をかけてみる。
「ねぇ。あんた、まだ生きてる? 起きてる?死んじゃってる?」
真っ暗な部屋の中で、誰かの声が聞こえてきた。
声の主は女の子だった。少女と言ってもいいかもしれない。
「……ああ。なんとかね。まだ生きてるよ」
私はそれに答える。
正直、この暗闇の中では、自分の姿さえよく見えていない。でもわかる。今いる場所がどこかということ。そして、どうやらここにあるベッドに横たわっているらしいことも。
ああ、頭が重い。
私は、頭を押さえながらゆっくりと体を起こした。
部屋は、ぼんやりとした光で満たされている。私はその中へ踏み込んでいく。
部屋の中央で、何かが横たわっている。私の足音に気づいて、それが動き出した。ゆっくり起き上がる。
白い裸体が浮かび上がった。私の目は大きく見開かれる。
そこには、私が立っていた。鏡に映った私ではなく、実物の私だ。私は私自身を見つめている。私は私の姿に見入っている。私は私であり、この空間は私のものだった。この世界のすべてが私のものだ。何もかもが私の思うままなのだ。私の瞳が私のすべてを見透かしている。私の唇が私のすべてを語っている。私は、私だった。
そして、私は、私の中にいた。私の中にあった。私はこの瞬間まで、この私の存在を知らなかったのだ。この瞬間までは、私は存在しなかった。私はこの一瞬で誕生したのだ。私は、生まれたての子供のように、その肉体の感覚の一切が初々しく鋭かった。私の心臓はまだ、鼓動していない。でも、動いている。脈打っている。私の魂は、私の肉体の隅々にまで満ちている。この世界のありとあらゆるものを、私は、この肉体を通して感じられる。私の眼は、この世界を、この宇宙に存在するすべての物質を見通せる。私の耳は、この世界に響き渡る音を聞き分けられる。私の鼻は、嗅ぎ分けられぬものはない。私の舌は、どんな味でも識別しえる。私の手は、何物であろうと触れることができる。足で踏みしめることができる。私は歩くことができる。走ることもできる。跳ねることだってできそうだ。