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スパッと綺麗に切断された首がコロコロと転った。たまに、すぐに灰にならずに徐々に消えていく鬼がいるて、今回切った鬼はまさにそれだった。その鬼の言葉は優雨には聞き取れなかったが、口の動きから「ごめんなさい、ごめんなさい」と言っているのが読み取れた。


「任務完了……ですね。」

「………次は、貴方が鬼にならない事を祈ります」


ポロポロと泣きながら消えていく鬼を見つめながら、ポソッと呟く。鬼は嫌いだし、許せないが、この鬼は望んでなった訳ではない。鬼狩りは今日も鬼を憎しみ、ヒーローに後ろ指を指されながら生きていくしかないのだ。


「可哀想、等と思うのは喰われた人にも、鬼にも失礼ですよね」

「鬼に同情なんかしない。ただ淡々と悪鬼を滅する」

「それだけでいい。“前”も“今”も余計な感情は捨て任務をこなす。」


目をつぶり、思い出す。前世の自分はそうだった。親を失い、親友を失い、鬼に気に入られ印を付けられたその日から私を動かすものは鬼に対する憎しみや恨みだけだった。甘露寺やしのぶが私に話し掛けても愛想笑いをして話を合わせて居ただけだった。けれどある男と出会ってからというもの、私の世界は変わっていった。


「優雨さん」


両親の様に優しい眼差しをした人。親友の様にキラキラとした笑顔で笑う人。太陽の様に眩しい人。欲しい言葉をくれた人。皆に好かれ、その中心に居た人。初めて見た時、他の隊員とは何か違うな、と思った。すぐに興味を失って任務に行ったけど、その日からふと彼を探すようになって言った。何故だかはわからない、彼の持つ何かに惹かれていった。


「悲しい時は泣いたっていいんです。辛いことがあったら立ち止まっていいんですよ。」


皆「泣いている暇なんてない」と言って己を追い込んでいった。自分もそうあるべきではと当たり前を忘れ、感情を殺し、何も感じない日々が続いていた時に掛けられた言葉。この言葉を言われたとたん、灰色の世界が色鮮やかに輝いて見えた。


「って、こんなに事当たり前ですよね。なんだか、冩屋さん辛そうに見えたので…」


チカチカと光が視界に入る。眩しくて眩しくて、目をつぶりたくなるのに、何故か目が離せずにいた。


「……!俺、今の冩屋さんの笑顔好きです。そうやって笑ってる方が可愛いですよ!」

「…………」

「あ、いえ!普段が可愛くないとかそんなんじゃないですよ?いつも凛としてて綺麗で……ってすみません!深い意味はなくてですね…!」


幼い頃に両親に言われていた言葉。


『私、優雨の笑う顔好きよ。幸せだ〜って見てて分かるもの』

『優雨が笑うと、こっちも嬉しくなるんだよ』


いつも会う度くすぐってくる親友が言っていた言葉。


『優雨って綺麗だけど、笑うと可愛いよね!だからくすぐりたくなるの!』


忘れていた、忘れてはいけなかった記憶。思い出す度胸を締め付けて苦しくなるのに、同時に暖かくなる。


「…しも………」

「?」

「わ、私も……」

「炭治郎さんの、笑顔……その、好ましく思い、ます…」

「そ、そうなんですか…その、ありがとうございます!」

「えっと…禰豆子が心配なので俺行きますね。冩屋さんも気を付けてください!」

「………」

「?冩屋さん…?」

「……優雨」

「え?」

「優雨と呼んでください」

「ええっ!?その、いいんですか?」

「はい…そっちの方が呼び慣れてますので」

「それじゃあ…優雨さん?」

「はい、炭治郎。また、会いましょう。」


炭治郎の返事を待たずに逃げるようにその場を去る。閉じていた目を開け、頬に手を当てると、頬の熱が手に伝わるのがわかった。


「……この気持ちを伝えれたら、どんなにいいか。」

「今世もカナヲさんがいます。私なんかが炭治郎の隣に立つなんて、そんな事出来ませんよ……」


__恋に悩む乙女は輝いて見えると言うが、果たしてそれは本当なのだろうか。






*おまけ*

優雨が立ち去った後、突然の出来事にポカンと口を開けた炭治郎は少しの間の後、口を手で抑えてボソ、と呟いた


「……なんか、ドキドキする」


顔の火照りを覚ます為に夜風に当たる。脳裏に先程の光景が思い浮かぶ。


「……優雨さん、綺麗…だったな」


そう呟いた言葉は誰にも聞かれる事無く夜の闇に消えていった___







「は?炭治郎またタラシこんだの???しかもあの優雨さんを?????嘘でしょどんだけやれば気が済むの俺の気持ちも考えて????」

「何を言ってるんだ善逸」






炭治郎が天然タラシになってしまった……!あ、でも待てよ、炭治郎元から天然タラシじゃん。なら大丈夫だな

なんか両思いみたいになってるけど完全に優雨の片思いです。

鬼殺隊とヒーローは分かり合えない

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