テラーノベル
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翌日、私はいつもより早い時間に起床した。それは、母が言っていた兄が帰ってくるという言葉を確かめるためだ。
父も母も寝ているようで家の中はとても静かだ。
私は忍び足で兄の部屋に向かう。
静かに戸を開け部屋の中を覗く。明かりはついていない。政府に召集されたときに持っていった荷物が多かったため、部屋の中はがらんとしている。
まだ、帰ってきていないのだろうか。それとも母の言葉はウソだったのだろうか。
そんな不安が頭を巡る。
…お腹が空いた。
なれない時間に起きたからかいつもよりお腹の減りが早い気がする。
キッチンになにかないか見に行こうと階段を降りる。
リビングに、明かりがついている。もしかして。いや母や父が私と同じく早起きをしているだけかもしれない。
そんな期待を閉じ込めるように思考する。
そっとリビングの扉を開け、中を見回す。
かすかにテレビの音が聞こえる。
テレビの前のソファーに目をやると、兄が座っていた。
私は、複雑な気持ちでいっぱいだった。兄が帰ってきて嬉しい気持ち、戦争が始まるかもしれない恐怖、これからどうなってしまうかわからない不安。いろいろな気持ちが入り混じっていた。
兄と、一ヶ月と数日間の積もりに積もった話をする。
たった、一ヶ月されど一ヶ月。今まで仕事以外では毎日のように一緒にいた兄と離れていた期間。
スクールに通っていた頃の長期遠足ですら、絶望に等しいくらいさみしくて気が気じゃなかったのに、一ヶ月、更にあんな話をしたあとだったから、私は、今までにない気持ちにだった。
母の話、近所の宇宙猫の話、父の話、仕事の話、そして館長との話。
いろいろな話をした。
時間はあっという間で、父と母が起きてくる。私達は、食べることも忘れ話に花を咲かせていたようだった。家族みんなが休み、同じ日に、同じ時間に、食事じゃないときに、みんなが揃っている。こんなの子どものときが最後だったろう。そんなことを考えながらみんなと話す。時間は残酷だ。こんなにも早く過ぎ去ってしまう。そろそろ、時間だ。
みんなでソファーに座り、テレビを付ける。
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