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『降り注ぐ』
五年前のあの日、オレは致命的なミスをした。
相浦昌之介(さがうら しょうのすけ)に多額の借金を背負わせたところまではよかった。
だが、オレのミスによりその借金の発端が大西家であることがバレてしまった。
完璧だと思っていたのに、オレはいつもこうだ。
大事なところでミスをする。
社長である兄貴にも、死に損ないの親父にも罵倒される始末。
挙句の果てには、責任はすべてオレが背負えと言ってきた。
相浦家を潰す算段をしたのは、兄貴だというのに。何故、オレだけが責任を取らなきゃいけないんだ。
そんなことを言えば、「お前が出来損ないだからだ」という言葉が返ってきた。
ふざけるな。
オレは、オレはお前たちの命令を聞いて今まで生きてきたんだ。
何が出来損ないだ。オレにどれだけの汚れ仕事を押し付けてきた。オレがどれだけお前らのミスをもみ消してきたと思っているんだ。
オレが居なけりゃお前らは、その地位まで上り詰めることなんてできなかったはずなのに。
(警察さえクビにならなければ、こんな未来は来なかったのだろうか……)
そんなことを考えながら大雨が降りしきる中、相浦家を訪れた。
門前払いを食らうかと思ったが、幼いお嬢ちゃんがオレを嬉しそうに家にあげてくれた。
そうか。あの子はオレに初めて会ったから知らないんだな。オレが大西家の者だってことを。
「お母さん呼んでくるね」
その愛らしい喋り方がとても気に入って、あの子は最後に殺そうと誓った。
最初に現れたのは老いた家政婦だった。
そいつは嫌悪感を露わにする。
それもそうだ、家の中に敵が入ってきたのだから。
出ていけと言われる前に、その喉を掻き切った。
血が噴き出し、仰向けに倒れるとお嬢ちゃんが可愛らしい悲鳴を上げる。
ああ、良い声だ。
雨音さえ無ければ、もっとクリアに聞こえていただろうに、そこだけが残念だ。
悲鳴を聞いて長男がやってきたので、その足を切り落とし、可愛いお嬢ちゃんの手を取った。
恐怖、絶望、不安、怒り、悲しみがごちゃ混ぜになった彼女の顔を見て、オレは昂ぶった。
(ああ、そうだ。オレはずっと”また”この瞬間がくるのを待っていたんだ…)
彼女の目の前で長男を生きたまま細切れにする。
悲鳴と断末魔が混ざり合い、オレの興奮は最高潮に達する。
(あの時と一緒だ。オレの側で泣き崩れたあいつの顔を見て…オレは…)
母親が血相を変えてやってきた。
お嬢ちゃんは逃げてと叫んだ。
でも、遅かったね。
母親も、彼女の前でめちゃくちゃにした。
しょこ@愛雅色
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羽海汐遠
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お嬢ちゃんは自分も死にたいと言ってきた。
自分も殺してくれと泣きながら訴えてきた。
オレは優しいからその願いを叶えてあげようと思った。
でも、その前にやってほしいことがあったからオレはお嬢ちゃんにお願いした。
「お父さんに電話して、助けてって言うんだ。そしたら、殺してあげるよ」
お嬢ちゃんは泣きながら頷いて、父親の相浦昌之介に電話をしてくれた。
あの日の出来事を、オレは忘れない。
お嬢ちゃんが壊れていく姿は、何よりもオレの心を満たしてくれた。
くすんで見えたこのクソみたいな世界が、色鮮やかに満ちていく。
あとは、相浦家に繋がる道路の真ん中に立ち塞がり、相浦昌之介を待った。
怖かっただろう。
大雨の中、刃物を手にしたオレがいたのだから。
相浦は血相を変えて、車から降りてきた。
”俺の家族に何をした”
”警察に突き出してやる”
”お前は一族の恥だ、茂”
ごちゃごちゃとうるせぇ奴だ。
オレは相浦の首を切った。
そして、教えてやった。
妻も子も家政婦もバラバラにしてやったってな。
そしたら、あいつは死ぬまでうわ言のように「帰らなきゃ」と言って無様に地面を這いずっていた。
帰ってどうする。死体しかないっていうのに。
オレは相浦を借金を苦に、家族を惨殺し、車内で自殺したように見せかけて殺した。
オレがやったとすぐにバレると思った。
あれだけ派手にやったんだ。
だが、バカな警察は初動で一家心中と判断した。
何をどう見てそう判断したのか、犯人であるオレも理解できず腹を抱えて笑った。
その後、そうではないと気付くのに半年もかかった。
大雨のせいで、証拠が綺麗に流されていたとしても警察としてはこれ以上とない大失態だ。
奇しくも天はオレに味方したわけだ。
警察がのろのろ調査している間にオレは死に損ないの親父を処分し、兄貴を海に沈めた。
親父が一代で築き上げた会社は、従兄弟の相浦家が作った借金返済のためによく知らない奴に売り渡した。
ちなみに、従業員たちは兄貴たちが死んで喜んでいた。
日頃からパワハラなんかしていたから、こういうことになるんだと兄貴たちに教えてやりたくなった。
曰く付きの相浦家は、どうせ買い手がつかないだろうと思いオレが買い取っておいた。
相浦の親族どもがぎゃーぎゃー言ってきたが、借金を肩代わりしてやったんだから文句言うと言って黙らせた。
その借金もオレがわざと背負わせたものだったが。
相浦だの大西だのというしがらみから解放され、オレのやることにとやかく言う奴も、オレに尻拭いさせようとする奴もいなくなった。
これでオレは晴れて自由になったのだ。
オレは毎日公園に行って、オレと遊んでくれる子を探した。
子供は可愛い。
純粋だし、優しくすればすぐに懐いてくれた。
何より、オレの異常性に気付かない。
オレは、気に入った可愛い子とたくさん遊んだ。
あの相浦家に呼んで一緒に、ショーを楽しんだ。
家出してきた女を家に連れ込み、天井にぶら下げてバラバラにする。
”解体ショー”だ。
それを見て可愛い子たちの顔が歪む。
泣くことも喚くことも目を逸らすこともできず、感情が壊れていく様を見るのはとても楽しかった。
でも、結局また、オレはミスをした。
あいつの本性を見抜けなかった、致命的なミスだ。
オレの”右手”を切り落とすあいつの顔は、とても楽しそうに歪んでいた。
ああ、きっとオレも同じ顔をして───。
コメント
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寺島あおいです🤍 第14話、読み終えました。まず、大西茂の歪んだ視点で綴られる狂気の描写が生々しくて、読んでいる間ずっと息苦しかったです。特に「最後に♡♡♡うと誓った」という幼い娘への優しい口調の残酷さが恐ろしくて——彼にとっての“愛おしさ”が破壊と直結している哀しさと悍ましさが同時に襲ってきました。ラストの「同じ顔をして」という一文で、狂気の連鎖が示唆されゾッとしました。続きが気になります。