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年上の可愛いキミ

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年上の可愛いキミ

1 - あなたが好きです

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2025年01月16日

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年末のとある日。


今年の冬も比較的温暖だと思っていたが、外は少しずつ寒さが厳しくなってきていた。

気象予報士の資格を持つ阿部に言わせると、ここからはかなり冷え込む日々が続くらしい。



岩本と渡辺と目黒は、たった今、事務所に年末の挨拶を済ませてきたところだ。

岩本の車に同乗してこのままあらかじめ予約した店に向かう。



駐車場から目的の店へと歩く道すがら



💙さむ…



セーターに薄いジャンパーを羽織っただけの渡辺が思わず首をすくめる。



🖤しょっぴー、風邪引きそう。そんな薄着で来るから…笑


💙いや、ちょくちょく上着忘れて外に出るお前に言われたくないわ



言い合う二人を見ていた岩本がおもむろに自分が巻いていたマフラーを外した。



💛俺のマフラー巻いとけ


💙…さんきゅ



渡辺がうつむき加減にそれを受け取る。

気のせいだろうか、渡辺の顔が寒さで赤くなっているように岩本には見えた。



今日はSnowManメンバー全員のスケジュールが奇跡的に合い、都内の店でグループでの忘年会をする予定になっていた。

スタッフさんも抜きで9人だけ。


先に何人かのメンバーが店に入っていて、少し遅れるメンバーもいて。

時間ぴったりとはいかないが、こうして会えるのをみんなが楽しみにしている。





岩本が受付で会社名を伝えると、すぐに個室に案内された。



中には先に深澤、佐久間、向井、宮館が来ていた。



💜おお、お疲れ


🧡意外に早かったやないか



今日は正真正銘のプライベートなので、緊張感もなく、みんな楽しそうだ。

まあ、普段からグループ全員が言いたいことを言い合える関係だ。いつもだいたいリラックスしているのだが、カメラがないと雰囲気はやはり違う。



💛ほかの奴らは?


🩷ラウールは授業終わったら来るって。 あと、阿部ちゃんは打ち合わせが終わったら合流って言ってた。



岩本たちもテーブルに着く。



💙あ~、マジで腹減った。注文は?


❤️まだしてない。コースにする?


🧡でもみんな揃うまで待ちたいよな。



向井はそういうところは律儀だ。

自分がいない間に始められていたら寂しいと思うからだ。


ぱらぱらとメニューをめくる深澤。


結局全員が揃うまでは、少しだけおつまみを頼んで、軽く飲み始めようということになった。



💙俺、ビールにする


💜なべ、飲むのか?


💙せっかくの忘年会だし、この後何もないから今日は飲む!


🩷そうこなくっちゃ!今日は騒ごうぜ~~~


💛ほどほどにな



岩本がやんわりとたしなめる。

珍しいこともあるものだ。

渡辺は、普段滅多に酒を口にしない。

アルコールに弱い体質ですぐに酔っ払ってしまうからだといつか言っていた。


でも今夜はどうやら特別らしい。

岩本から見て今日の渡辺はなんだか少し落ち着かないように見えた。



🩷じゃあとりあえずビールのひとー???



岩本以外みんな手を挙げる。



💜照、飲まないの?


💛ああ、俺今日、車だから。


🖤そっか。残念。


💙せっかくの忘年会なのに…。運転なんて代行頼めばいいだろ。



渡辺が不満げに口をとがらせている。



💜まあまあ



深澤がみんなの注文をまとめる。

1回目の乾杯を済ませ、思い思いに喋っていると、大して時間も経たずにラウールや阿部もやって来た。



🤍お待たせー。そこで阿部ちゃんに会って一緒に来たよー


💚今年もお疲れさまでした~


🖤二人ともビールでいい?



メンバーが全員揃って一気にテーブルが騒がしくなる。

宮館がコースを始めてくれるよう店員にお願いしている。

みんな笑顔でとてもいい表情をしている。



いつまでもこうして仲良くやっていきたい。

一人のメンバーも欠けることなく、一緒に成長して、グループとして大きくなって。


岩本は自慢の仲間たちのことを誇らしく、頼もしく思っていた。





💜おーい、なべ、大丈夫かぁ?


💙うん……



案の定。

渡辺が飲みすぎてふらついている。

さっきから目黒の肩を借りないと立っているのもやっとの状態だ。

もちろん真っすぐ歩くことなんてできない。



🖤お前は変わらないな。


🤍うん、俺結構強いみたい。



成人したラウールは、胸を張って応える。

子供だったラウールとこうして一緒に飲めるようになったのも感慨深い。

メンバーに加わった時にはまだほんの子供だったのに。

親父が息子と飲める日を楽しみにしているというのはきっとこんな感じなんだろう。

他のメンバーもこの年の離れた弟を心から可愛がっている。



ーーこうして楽しい時間はあっという間に過ぎる。



明日は朝から仕事に行くメンバーもいるし、そろそろ解散することになった。



問題は渡辺だ。

タクシーに乗せたとしても、無事に家に帰り着くか怪しい。

運転手に住所を伝えることすら難しいのではないか。


いつも渡辺の世話を焼いている目黒は明日早いので送っていけないと言う。


💛いいよ、俺が乗せて帰る


💜ごめんな、俺に免許があれば…


💛一生言ってろ笑笑



二次会と称してカラオケに向かう他のメンバーたちと別れて、岩本は渡辺を車に乗せた。

自分も今日は家に帰って日課のトレーニングをこなしたかった。


岩本の車まで目黒が渡辺を運ぶのを手伝ってくれる。



🖤よいしょ、と。じゃあね、しょっぴー、また


💙ん…。めめ、おやすみ



助手席の渡辺の目はとろん、としている。

余程眠いのだろう、目をぱちぱちさせては、やっとのことで目黒に手を振っている。



💛じゃあな。撮影頑張れよ


🖤うん、しょっぴーをよろしく。


💛おう



ドアを閉める。



💛寝てていいぞ



ナビに渡辺の家の住所をセットする。

岩本の車には、こういうときのためにメンバー全員の住所が登録されていた。



💙ひかる…


💛ん?


渡辺は舌ったらずに言う。


💙ひかるのいえにいきたい


💛は?今から?



頷く。



このまま一人で帰るのが寂しくなったのだろうと岩本は時計を見た。

針は午後9時を指している。

まだそんなに遅くない。



💛明日の予定は?


💙なんもない


💛じゃあ、行くか



安心したように笑うと、渡辺はそのまま眠ってしまった。



やれやれ…。



岩本は少し迷ったが、ナビを変更し、車を自宅へと走らせた。






渡辺と岩本の付き合いは長い。

さすがに生まれた病院が一緒だという宮館には負けるが、ジュニアになった年もわずか一年違いだ。

そこから長い下積み期間にたまたま同じジュニアグループになり、縁あってそのまま一緒にデビューを目指すことになった。


岩本から見た渡辺の印象は、物静かで恥ずかしがり屋というイメージ。

バラエティ番組では率先して面白いことも言うが、本来は大人しい優しい男だ。

多少我儘なのはご愛敬である。


岩本は渡辺よりひとつ年下だが、渡辺の見た目と中身のギャップをいつも可愛いなと思って見ていた。



💙ん…


💛起きた?


💙……あれ?俺、寝てた?


💛うん



まだ夢の中のようなふわふわとした様子で、渡辺が岩本を見る。

頭がはっきりしないらしく、うまく状況が呑み込めていないようだ。



💛俺んち向かってる


💙!?なんで???



一気に目が覚めたらしい。

渡辺は驚いている。



💛行きたいって言ったのお前だろ


💙うそ、覚えてない…



明らかに慌てている様子の渡辺。

岩本は困惑した。



💛もう着くよ?


💙…


💛どうする?引き返す?


💙いや、いい


💛まあ、せっかくだし、俺んちで酔いを覚ましていけば?



渡辺は大きく息をして、神妙に頷いた。



💙てか、みんなは?


💛目黒とラウールは帰った。あとはカラオケに行った。


💙照は?


💛俺はまだやることあるし、翔太を送る役を買って出たから。


💙そっか…ありがとう


💛うん



なんとなく気まずい空気が車内に流れる。

無言のまま、運転中にかけていた音楽だけが鳴っている。

しっとりとしたバラードだ。

渡辺はそのまま窓の外を見て黙ってしまった。





渡辺が岩本の家に来るのはこれが初めてだった。


広いリビングの隅に、ジムで見慣れたダンベルを始め、数々のトレーニング器具が几帳面に整頓されて置いてある。

見上げれば懸垂できるようになっているバーもある。

壁面の一部分が姿見になっていて、ダンスの動きやトレーニングで仕上がった体をチェックできるようにもなっていた。



いかにも几帳面な岩本の性格らしい部屋だ。

飾り気はないが、機能性重視。

さっぱりしていて、住み心地が良さそうだなと渡辺は思った。



💙あ…



横の棚にシルバニアファミリーの家が飾ってある。 これだけが唯一インテリアとして浮いている。



💙これまだ飾ってるの?


💛うん、使うから



そういえばいつだったか、振り付けを考えるときに人形を使うと言っていたっけ。



💛適当に座って。何飲む?


💙水ください



渡辺は手近なソファに座る。


携帯が震えた。

目黒からのLINEだ。



🖤『ごゆっくり。良い夜を』



思わず頬が熱くなる。

また酒が飲みたくなる。

この状況、とてもしらふではいられないと渡辺は思った。





実は数か月前、渡辺は目黒に自分の気持ちを打ち明けていた。



どうやら自分は岩本照のことを恋愛対象として意識していると。



渡辺にとって岩本が「特別」になったのはいつ頃だったろう。

はっきりとした自覚があるわけではなかった。


渡辺自身も気がつかないうちに、渡辺は岩本を目で追うようになっていた。

そしてその変化にいち早く気づいたのが親友の目黒だった。



🖤しょっぴー岩本くんのこと好きでしょ



スタジオ収録の合間。

楽屋にはちょうど二人だけ。

他にこの話を聞いている者もいない。


渡辺は否定しなかった。



🖤…やっぱり


💙誰にも言うなよ


🖤言わないよ。いつから好きなの?


💙わからない。でも、照のことが気になる


🖤岩本くん、かっこいいもんね



目黒はこういう時、決してからかったりしない。

だから渡辺も安心して話すことができた。



💙ん、かっこいい


🖤かっこいいだけじゃなくて、可愛いところもあるしね



渡辺が恥ずかしそうに頷く。

目黒はそんな渡辺が可愛いと思う。

口に出すとからかってると怒られそうで黙ってはいるが。



🖤今年は忘年会があるね


💙うん、楽しみ


🖤その時に思ってること伝えたら?


💙気持ち悪がられるだろ



目黒は少し考えてから言った。



🖤うーん、岩本くんに限ってそれはなさそう


💙…そうかな?


🖤ちゃんと真剣に受け止めて考えてくれると思うよ



目黒のその言葉に背中を押されて、渡辺は今日、忘年会に臨んでいたのだった。

自らを勢いづけるために飲んだ苦手な酒のおかげで、幸か不幸か今こうして二人きりになれている。



そういえば目黒が最後まで協力してくれていた気もする。

他のメンバーにばれないように、うまくこの状況を作りだしてくれていたような?



ともかく渡辺にとっての忘年会は、ここからが本番だった。

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