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──やがて訪れた連休、彼の迎えの車に乗り込むと、山の上の高原にあるという別荘へ向かうことになった。
「別荘では、食事はどうするんですか?」
ふと気になって、車の中で尋ねてみると、
「管理人に食材の保管もお願いしているので、食事は私が作りますよ」
という答えが、彼の方から返された。
「そう…ですか…」
その返事に、確かに彼の作る料理は完璧で非の打ち所がないのだけれど、私には何もしてあげられることがないのかなと思うと、なんとなく少し寂しいような気持ちも湧いてくるようだった。
「どうかされたのですか? 浮かない顔をして」
運転をしながら訊いてくる彼に、
「いえ、何も……」
一向に晴れない気持ちのまま、一言だけを伝えた。
「本当に何でもなくて?」
無言で頷いて、不安定な気持ちにうなだれた顔が、
彼の片手に、つと仰向けられた。
「何でもない割には、顔色が良くなさそうですが」
道路脇に車が止められ、「気分でも、優れないのですか?」と、じっと目を覗き込まれる。
「そんなんじゃなくて……」
なんとなく寂しくてというだけで、自分でもどうしてこんなに気分が落ち込んでくるのかが、よくわからなかった。
「気分があまり良くはないようでしたら、行くのはやめておきましょうか?」
気遣って言葉をかけてくれる彼に、
首を横に振って、「……行きたいです。せっかく誘ってもらったから」と、返事を戻した。
どこかモヤモヤとしてはっきりとはしないような思いも変わらずにありはしたけれど、このまま帰りたくもなかった。
「いいのですか? 本当に…」
我知らず湧き上がる迷いを抱え、コクリと彼へ頷いた──。