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冷たい美女は端的に答える。
「ああ、シパイはアタシの弟子だよ、因みに元気で太り続けているよね…… 困る位に…… そんな事よりもアンタ、レイブだったよね? アンタこそ大丈夫なのかい? こんなに痩せこけちまってさぁ、可哀想にぃ…… 辛い思いをして来たんだよねぇ~、ゴメンよレイブ、アタシの師弟が馬鹿なばっかりにね、本当にあの弟、バストロは馬鹿だからね……」
「やった! シパイ兄ちゃんが生きてたんだ、良かった嬉しいよぉ! それとバストロ師匠との暮らしは楽しいから謝ってもらわなくても大丈夫だよ、ちょっと馬鹿だとは思うけど優しいし…… それに最近は飢える事も無くて毎日お腹一杯で幸せなんだよ♪」
フランチェスカはまだ無表情なままだ。
「良い子じゃないか、レイブ…… そうか! アンタがシパイが言っていた弟、バーミリオンの里のゴライアスか、特別な四人の子供、その内の一人、そうなんだね?」
この問いに対して、腰の糊袋を鞘代わりにしていたレイブは、タンバーキラーの粉で赤く着色されたゼムガレのナイフを見せつけながら答える。
「うん、これゼムガレのナイフって言うんだ、シパイ兄ちゃんのコサックのナイフに比べたら短いし細身だけどね、同じチッターン製のナイフだよ、ゴライアスの子だっていう証なんだ」
「ふーん、確かにシパイが後生大事に身に付けているナイフに酷似しているじゃない…… ところでこの膠(にかわ)、いや糊かな? 赤いのはタンバーキラー、モンスターの魔石を一旦空っぽにした後、獣奴(じゅうど)の回復スキルで再充填した物の粉末みたいだけどぉ…… 何でこんな物を塗布しているの? レイブ?」
ヴノが口を挟む。
『そうか、お嬢は知らなかったんじゃのう~、これは『鍛治王の里』製以外の刃物で『血抜き』をする為の方法じゃぞぃ、古いやり方の一つじゃてぇ』
この言葉を聞いたフランチェスカがヴノではなくレイブに視線を固定したままで聞いた、ずっと無表情なのだ、少しと言うか結構恐い。
「そうなの?」
答えるレイブの声は少し震えている。
「う、うん! こうすれば僕のナイフでも『血抜き』が出来るって師匠から聞いてぇ…… だから頑張って糊を作ったんだよ! 溜め込んでいたおやつや非常食をね、全部おじゃんにして作ったんだけどぉ…… もしかしていけない事だったのかな、お姉ちゃん?」
震え声のレイブに向けて一歩足を進めて近付いたフランチェスカは、ローブの中から右手を差し出してレイブの頭に掌を乗せ、優しく数度撫でたのである。