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コンソメパン
10,741
大広間のコタツの明かりが完全に消え、阿部と佐久間が廊下を渡ってそれぞれの部屋へ戻っていく気配が遠ざかる。時計の針は午前四時を迎えていた。もうすぐ夜が明ける、一番深い闇の時間だ。シェアハウスの一角にある、少し広めの和室。畳の上に敷かれた布団の上で、化け狸の向井康二は、喉が渇いてふと目を覚ました。
向井「ん……、ちょっと水飲みに行こ……」
人間のフリを解いている今の彼は、頭の上に茶色い丸い狸耳がぴょこんと立ち上がり、パジャマのズボンからは、ふさふさとした大きな狸の尻尾が覗いていた。康二が布団から抜け出そうと、そっと身体を動かした、その瞬間。背後から、ひんやりとした、だけど拒めないほど強固な「影」が伸びてきて、康二の身体をすっぽりと包み込んだ。
目黒「……康二。どこ行くの」
暗闇の中から響いたのは、低く、地を這うような心地よい声。八岐大蛇(ヤマタノオロチ)――目黒蓮だ。目黒は夜になるとその強大な執着心の本能が剥き出しになり、背後からは幻覚のように、巨大な大蛇の黒い影がゆらゆらと蠢いていた。目黒は布団の中から長い腕を伸ばし、康二の細い腰をガシッと抱きすくめて、自分の胸元へと引き戻す。
向井「うわっ!? めめ、起きてたん!? ちょっと水飲みに行きたいだけやって!」
目黒「ダメ。行かせない」
目黒の背後から伸びた大蛇の影(本能の独占欲)が、康二の手首や足首にシュルシュルと優しく巻き付き、マジックテープ並みの軽さで完全にホールドした。
康二「め、めめ、なんか影に捕まって動けへんねんけど! これ外してや!」
目黒「外さない。……俺、頭が8つあるじゃん? 夜になるとさ、康二が俺の体温(ぬくもり)から離れようとするだけで、8つの頭が全員同時に嫉妬して、お前を丸呑みにして閉じ込めたくなるんだよね」
目黒は真顔のまま、康二の首筋に顎を乗せ、さらに抱きしめる腕の力を強めた。大蛇は冷血な生き物だ。だからこそ、ぬくもりを持つ化け狸の康二に対して、異常なまでの独着と執着を示す。
向井「丸呑みって……例えが怖いわ、めめ! 逃げへんから、ちょっとだけホールド緩めて?」
目黒「やだ。康二は俺の隣以外、一歩も動かなくていい」
目黒の低い声に含まれた本気の独占欲に、康二の狸耳がぴょこんと跳ね、顔が一瞬で真っ赤になった。化け狸として人を化かすのが得意な康二も、この八岐大蛇の真っ直ぐで重い本能の前には、いつも完全に牙を抜かれてしまう。
向井「……もう、めめはすぐそうやって大蛇の檻に閉じ込めようとするんやから……」
康二は諦めてため息をつきつつも、ふさふさの狸の尻尾を、目黒の長い脚にそっと絡みつかせた。化け狸の持つ温かい妖気が、目黒のひんやりとした身体をじんわりと温めていく。
目黒「水は?」
向井「……もうええわ。めめが離してくれへんし、ここで大人しく寝とく」
目黒「ん。おやすみ、康二」
目黒は満足そうに大蛇の影の束縛を少しだけ緩め、康二を大きな身体で包み込むようにして目を閉じた。何百年もの孤独を生きてきた大蛇と、その寂しさを温もりで満たしてきた化け狸。夜の闇が明けるその時まで、二人は強く抱き合いながら、深く静かな眠りへと落ちていくのだった。
♡2000ありがとうございます!
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コメント
3件
尊いッッ! けど水は飲んでほしい(笑)
めかぶぷりんさん、深夜の大蛇×狸、尊すぎて鼻血出るかと思った…!🆘💕 水飲みに行こうとした康二を影で捕まえて「行かせない」って言う目黒、もう完全に執着の塊すぎて最高…。大蛇の8つの頭が全員嫉妬で丸呑みにしたくなるって台詞、重すぎて逆にエモい😭 康二の方が尻尾を絡めて温めてあげてるところも、めっちゃ優しくて好きです。夜が明けるまで抱き合って眠るラスト、尊死しました…!これからもめちゃくちゃ楽しみにしてます🔥