テラーノベル
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午前八時。カーテンの隙間から眩しい朝の太陽が差し込む大広間のリビングに、お馴染みのメンバーたちが次々と集まってきた。だが、今朝の空気はどこかおかしい。いつもなら完璧に「人間のフリ」をして、耳や角を隠して朝食を食べているはずの彼氏組の妖怪たちの姿が、明らかに変だった。
岩本「……あー、まじで引っ込まないんだけど」
食パンを咥えながら、頭を抱えているのは深澤……ではなく、その隣に座る酒呑童子の岩本照だ。岩本の額からは、いつもなら朝には消えているはずの立派な二本の角が、隠しきれずにピキピキと主張していた。
深澤「照、昨日の夜、俺に鬼の熱気ぶつけすぎなんだよ。ほら、角がトースターのコードに引っかかってるから」
岩本「だって、ふっかが冷たくするから……」
岩本は角を気にしながら、大人しく深澤にコードを外してもらっている。夜中に恋人を構いすぎたせいで、鬼の本能が朝になっても完全に「現役」のまま残ってしまっているのだ。さらに悲惨なのは、その斜め向かいの席だった。神獣・白沢の阿部亮平は、今朝はハーフパンツではなく、なぜか長いスラックスを穿いて、ガチガチにコタツ(電源オフ)の中に下半身を突っ込んでいた。
佐久間「阿部ちゃん、どうしたの? もう朝だよ? 早くコタツから出なよー」
猫又の佐久間大介が、元気よく二本の尻尾を揺らしながら阿部の顔を覗き込む。
阿部「無理だよ、佐久間……。昨日の夜、佐久間の脳内をハッキングしすぎたせいで、僕の白沢の『神獣の蹄(ひづめ)』が、人間の足に戻らなくなっちゃったんだ。……いま、僕の足、完全に馬の蹄だから、フローリングを歩くとカツカツ音がして恥ずかしいんだよ……」
佐久間「白沢の能力の代償が地味にダサいーー!! でも馬足の阿部ちゃんもレアで好きぃぃ!」
いつもは知的な阿部が、今朝は耳まで真っ赤にしてコタツ虫になっている。
向井「めめぇ……。俺、お味噌汁こぼしそうやから、その影どけてぇ……」
キッチンからお盆を運んできた化け狸の向井康二が、困ったように眉を下げている。その隣を歩く八岐大蛇の目黒蓮の背後からは、まだ眠気が残っているせいか、「手のひらサイズの小さな大蛇の影」が8つ、ゆらゆらと蠢いて康二の服の裾を小突いていた。
目黒「康二、おはよう。……ごめん、俺もまだ頭が8つとも起きてなくて、嫉妬の影が勝手に康二を追いかけちゃう」
向井「朝ごはん食べる時くらい、独占欲をスリープモードにしてや! 影が邪魔で席に座れんわ!」
目黒は真顔のまま、そのミニ大蛇の影たちを「しっ、静かに」と手で追い払おうとするが、影たちは嬉しそうに康二の周りを回っている。夜の執着の余韻が、朝になっても完全に漏れ出てしまっていた。
そして、このカオスな朝食の風景を、キッチンのカウンター越しにじっと見つめている男がいた。大天狗の宮舘涼太だ。彼は完璧にエプロンを着こなし、いつも通り凛とした佇まいでいる。大天狗の風格は1ミリも崩れていない。……が、彼の背中からは、漆黒の大きな翼がバサバサと広がったまま、全く引っ込む気配がなかった。
宮舘「涼太、お前も羽、思いっきり出っぱなしじゃねぇか。人間のフリはどうしたんだよ」
雪男の渡辺翔太が、冷気をちょっとだけ撒き散らしながら、宮舘の翼の羽を1枚ピッと引っ張った。宮舘は優雅に味噌汁の鍋の火を止めると、完璧なロイヤル……ではなく、少しだけ開き直ったような真面目な顔で渡辺を見つめた。
宮舘「翔太、おはよう。仕方がないだろう。昨日の夜、君の前髪を大天狗の風で浮かせることに全神経を集中させてしまったからね(※第2話参照)。今は翼の収納スイッチが完全にフリーズしているんだ」
渡辺「前髪に大天狗の神力使うからだろ! 涼太、朝からお前の羽がダイニングチェアに引っかかって邪魔なんだよ!」
宮舘「フッ、ならばこの翼で、朝のパンくずでも綺麗に掃除しよう」
宮舘は大きな漆黒の翼を器用にパタパタと動かし、食卓の上の小さなゴミを風で綺麗に吹き飛ばしてみせた。
渡辺「大天狗の翼をハタキ代わりに使うな!!」
と渡辺の鋭いツッコミが響き渡る。
ラウール「お兄ちゃんたち、朝から妖気の無駄遣いでお部屋を汚さないでよー!」
そこへ、部屋の隅から大きな掃除機をゴロゴロと引っ張ってきたのは、最年少の白龍のラウールだ。神聖な神獣である彼は、今朝は彼氏組の暴走に巻き込まれることなく、完全な人間の姿(ただし190センチの長身)で、呆れたように腰に手を当てていた。
ラウール「もう、夜中にみんなでイチャイチャしすぎるからだよ! ほら、阿部ちゃんも早くコタツから出て朝ごはん食べて。僕、これから部屋のフローリングのモップ掛けするんだから!」
阿部「ごめん、ラウール……。カツカツ音が鳴るけど許して」
と阿部が静かにコタツから這い出てくる。ラウールは文句を言いながらも、お兄ちゃんたちが散らかした鬼の火の粉や、大天狗の抜け羽を、掃除機で器用に吸い取っていく。人間の姿のまま、たまに白龍の小さな突風(妖力)を掃除機に上乗せして、リビングを一瞬でピカピカにしていった。
ラウール「よし、お掃除完了! ほら、ご飯冷めないうちにみんなで食べよ!」
ラウールの掛け声で、9人はようやく食卓を囲んだ。岩本の角は深澤の狐の尻尾に優しく包まれ、阿部の馬足は佐久間の猫の尻尾で隠され、目黒のミニ大蛇は康二の狸の尻尾とじゃれ合い、宮舘の大きな黒い翼は、渡辺の雪男の冷気で心地よく冷やされている。人間の姿に化けて現代社会の片隅で生きる、9人の大妖怪たち。夜に暴走した本能の余韻を朝まで引っ張りながら、彼らは今日も、賑やかで、底なしに甘く、そして何百年と続く愛おしい日常の一歩を踏み出すのだった。
これで妖怪パロ編終わりとなります!
今までで1番伸びが良かったのでめっちゃ嬉しかったです!
これからもよろしくお願いします。
コメント
1件
あー、最終回か! めっちゃ良かったわ…!! 朝のカオスがみんなの「夜の暴走」の後遺症って設定がもう愛おしすぎる。阿部ちゃんの馬足でカツカツとか、宮舘さんの翼をハタキ代わりにする翔太くんのツッコミ、全部が尊くて和んだ。完結おめでとうございます&めちゃくちゃ面白かったです! 続編も楽しみにしてる🔥
#ご本人様には関係ありません
コンソメパン
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