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#独占欲
#ワンナイトラブ
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なんだか色々手回しが👀
「お帰り、リリー。――キミの帰るべき場所は……ここだ」
柔らかなバリトンボイスとともに、すぐそばに、気配が寄る。
振り向かなくても分かる。
ランディリックだ。
それ以上は何も言わず、ただ隣に立った彼の距離の近さに、リリアンナの鼓動がわずかに乱れる。
ふわりと吹き込んできた風が、まるでリリアンナの心を映したみたいに一際大きくカーテンを揺らした。
この部屋からは、中庭に植えられたりんごの若木が見下ろせる。
早春。
庭に雪がまだらに残るなか、白い花びらが静かに舞っていた。
『今年はきっと、美味しいりんごがたくさん食べられますよ』
せっかちなナディエルが、そう言ってはしゃいでいたのを思い出す。
ミチュポムの白い花は、ほのかに甘い香りを帯びていて――その香りだけは、今でもはっきりと覚えている。
自分が初めて大人の身体になった日の記憶と、切り離せないまま残っているからだ。
王都へ旅立つ頃には、枝のあいだから小さな緑の実が顔をのぞかせていた。
(もう少しで、ナディエルの言葉も、現実になるかしら?)
そんなふうに思った。
それと同時、幼いころ口にした、あの甘酸っぱい味が胸の奥によみがえって――。
(もう一度、味わいたいな)
味覚なんて、とうに失ってしまったはずの感覚なのに……そう、願ってしまったことを覚えている。
そのミチュポムの木を見て、リリアンナは思わず「あ……っ」とつぶやいていた。
それは、ほんの僅かな色の差だった。
でも、そのことに気づいた瞬間、思わず息を飲んだ。
――赤。
枝先に、小さな実がいくつも揺れている。
「……うそ……」
思わず、声が漏れる。
あの血の色にも似た濃い赤は……間違いなく――ミチュポムの実だった。
まだ若く、あんなにたくさんの実をつけるはずのない木。
それなのに……確かに、そこに実っている。
胸の奥が、大きく揺れた。
王都エスパハレのウールウォード邸に母と植えた木は、叔母に伐り倒されてしまった。
ミチュポムはイスグラン帝国にはない、敵国マーロケリー国の特産品だったから、もう二度とその実を見ることは叶わないと諦めていた。
ランディリックが自分と同じようにあの日の種から木を育ててくれていると知った時の喜びは、今でも鮮明に覚えている。
その木が……とうとう実を結んだのだ。
王都へ旅立ってからこんな短期間で真っ赤になるものだろうか。
まるで魔法を見ているみたいで、リリアンナは眼下を見つめたまま固まってしまう。
「……どうして……?」
呟きは、かすかに震えていた。
「|庭師《ジャン》がな、色々と頑張ってくれたんだ」
その言葉だけで、十分だった。
胸の奥に、じわりと何かが広がる。
――偶然のはずがない。
それだけは、はっきりと分かる。
目の前にあるものすべてが、自分へと向けられているようで……息が、少しだけ浅くなる。
視界の端に、ランディリックの姿が映った。
何も言わない。
ただ、こちらを見ているだけ。
そして――。
「……今度は僕が、キミにあの実を贈るよ」
低く、静かな声だった。
それだけ。
それ以上は何も言わない。
けれど、その一言で十分だった。
胸の奥が、かすかにざわつく。
ここにあるものすべてが、自分を留めようとしているみたいで。
――帰らなきゃいけないのに。
その考えが、わずかに遠のく。
ウールウォード家の当主として。
王都へ戻るべき身として。
分かっているのに。
それでも……窓の向こうに揺れる赤から、目が離せなかった。
リリアンナは、そっと窓辺に手をつく。
指先に伝わる感触が、やけに現実味を帯びている。
胸の奥に広がるのは、温もりと、わずかな違和感。
それでも。
それでも――。
「……きれい……」
零れたのは、小さな肯定だった。
その言葉が、すべてを物語っていた。