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マスクの法則

11 - 第10話:精神汚染

2025年05月14日

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第10話:精神汚染

深夜の屋上。

雨が降りそうな空の下、ユイナはひとり、マスクホルダーを見つめていた。


すでに11枚。

マスクを回収するたび、力は増している――はずなのに、心の奥が妙に“ざわつく”。


最近、夢を見る。

知らない場所、知らない声。

誰かが泣いている。けれどそれが自分か、他人か、わからない。


(…私って、どんな声だったっけ?)


その問いを振り払うように、ユイナは歩き出す。


戦場は、地下構造跡に出現した《マスク領域》。

複数のマスク所持者がこのエリアに吸い寄せられ、強制的にバトルが発生する異常空間。


相手は二人組。

巨大な白仮面を盾にする重装型と、背中に羽根型スラスターを装着した機動型。


「回収者、ユイナ。2対1か。ラッキーだな」

「片方、あんたのマスクもらうね」


ユイナは表情を変えず、黒と赤の戦闘マスクを装着。人格“セカンド”へ移行。


「戦闘ユニット起動。目標:全破壊」


戦闘開始。


前方からの突進に対し、ユイナは低く滑り込み、盾型の重心を崩す。

回転からの膝蹴り、逆手での投げ――無駄のない動きが連続する。


そこへ背後から機動型のマスクが奇襲を仕掛けるが、

ユイナは身体をひねって、“サイトスラスト”を展開。

空間を歪め、敵のブーストをキャンセル。


一撃で片膝をつかせるが――そのとき。


意識がズレた。


目の前の景色が、別の場所に切り替わる。

過去の教室、知らない誰かの顔、泣いている自分。


(これは……いつの?私?誰……?)


脳が混乱し、動きが止まった。


重装型の一撃が胸部に直撃し、吹き飛ばされる。

壁に叩きつけられ、視界が暗転する。


そこで、声がした。


「……ユイナ!」


飛び込んできたのは、レオ。

ユイナと同年代の少年。短めの茶髪、フード付きジャケット。

表情は素朴だが、マスクは“共鳴型”と呼ばれる感覚共有スキルを持っていた。


彼は戦場に入ってきた瞬間、ユイナの“精神振動”を感知していた。


「今のお前じゃない。ちゃんと戻れ、ユイナ!」


彼の声が響いたとき、ユイナの戦闘人格が一瞬だけ揺らぎ、

本来の彼女の意識が戻ってくる。


胸の奥が熱くなり、ユイナは再起する。


「感情制御、再構成――私自身で、戦う」


赤のマスクが発光し、別の形態に変化する。

“セカンド”の中に、本来の“ユイナ”の意志が融合し始めていた。


反撃開始。


彼女は速度と精度を維持したまま、連撃で盾型を崩し、回収コードを発動。

機動型の背後に回り込み、共鳴スキルで連携したレオがブーストを封じる。


わずか10秒で決着がついた。


戦いのあと、ユイナはレオの前で仮面を外し、静かに言った。


「……ありがとう。少し、思い出せた気がする」


マスクを集めすぎれば、自分を失う。

それでも前に進むためには、“支えてくれる誰か”が必要だ――

そう、彼女は初めて思った。

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