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#狂気
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「確かにそうだわ」
「でしょ? それに、身綺麗にしたらテンション上がらない? 恵は今の髪型キープしてるけど、それでも美容室に行ったあとは『整ったわ~』って嬉しそうにしてるじゃん。ネイルはやらないみたいだけど、私が秘書になる前にシンプルだけどネイルをやってたら『綺麗だね』って褒めてくれたの、本当は憧れも混じっていたように思える。本当にどうでもいい人って、誰が何をしていても気にならないものだと思うから」
「んー……、かもね。爪の場合、何回かポリッシュネイルをした事があるけど、爪呼吸ができなくなりそうで、何となく苦手感があって。でも確かに、爪に色がついていると、思わず何回も見てしまって、嬉しくなったのは覚えてる。朱里の言う通り、憧れはあるんだと思う」
「うんうん。恵は着飾る事に興味がないって言ってるけど、本当はあるんだよ。でも子供の頃から周りの人に『男の子みたい』って言われ続けたから、それがある意味呪いになってしまっている。……でもね、あの時恵を『男みたい』って言っていた人たちは、もういないんだよ? お兄さんたちもデパコスリップとかプレゼントしてくれるって言ってたじゃない。〝今は〟綺麗でいてほしいって思ってるよ」
「うん……。涼さんにも似たような事を言われた。子供の頃、ワンピースを着た姿を兄貴たちに見られて嗤われたけど、そのあとお母さんがこっぴどく叱ってくれて、反省はしていたみたい。……今はもう『誰のせいでこうなった』とか、責任を押しつけたい気持ちはない。……ただ、痴漢の件もあって自己肯定感が低くなって、目立たず、実用的ならいいやって思ってる自分がいる。それが〝お似合い〟なんだって」
私は綺麗な親友の手を握り、顔を覗き込む。
「……でも、憧れはある? 恵って私の事を沢山褒めてくれるけど、スカートの件も然り、本当は女子らしくしてみたいって思ってるでしょ?」
彼女は赤面して決まり悪そうな顔をして、小さな声で「……うん」と頷く。
「んーっ! 可愛い!」
私はギュッと恵を抱き締める。
「気持ちが追い付いて、自然にお洒落を楽しむようになるまでは、時間がかかるかもしれない。でも、買った物は逃げないから、今回一旦自分が気に入るバッグを買ってもらって、〝その気〟になった時に使ってみない? 私もおそろを使うなら、外を歩くときも恐くないでしょ? 赤信号、みんなで渡れば恐くない、的な」
「ははっ、ブランドバッグを赤信号と一緒にしたら駄目だわ。しかも赤信号渡っちゃ駄目だって」
「たはー! 涼さーん、恵に座布団一枚あげて~!」
そう言った時、「はいはーい」と彼の返事があった。
丁度良く、二人がトレーに朝食を盛ってテーブルに戻ってきたところだ。
「恵ちゃんに座布団? ふっかふかの用意するよ! 何色がいい?」
「いや、いいっす」
二人のやり取りを見ていると、全力で頬ずりされる恵猫が物凄く嫌な顔をしている様子が思い浮かぶ。
ついでに、猫吸いをキメようとしたら、両手を突っ張らせて目に手を食い込ませるまでがセットだ。
「あー、やっぱり男子たち、女子力が高いですね……」
私は尊さんと涼さんのプレートを見て、広島に行った時の事を思い出す。
彼らは野菜も含めて色んな料理を彩りよくとっていて、まるでカフェのお洒落プレートだ。
恵もサラダ多めで、ちゃんと自分の事を考えている。
私は……、と、欲望まみれのプレートを見て落ち込んでしまう。
「だから気にすんなって」
尊さんにポンポンと肩を叩かれ、私は「あとでサラダ食べるもん……」とフォークを握る。
そのあと、作りたてのオムレツやベーコン、ソーセージなど、ビュッフェでお馴染みのラインナップを食べていく。
パンも色んな種類があったけれど、全員に共通しているのは甘い系のパンは選ばなかった事だ。
私は興味本位でシリアルも選び、牛乳を注いで子供の頃の事を思い出しつつ、懐かしい気持ちになってスプーンを動かした。
デザートはスイーツよりも、南国ならではのフルーツをここぞとばかりに食べておいた。
十時になってホテルの近くにあるヴィトンへ行き、私たちはスタッフさんに予算を伝え、バッグをメインで買い、四人でお揃いの記念になる小物、男性陣にも何か小物が欲しいと伝えた。
尊さんたちは、もし予算(カジノで儲けたお金)よりオーバーしてもOKと伝えていた。
※ 余談ですが、何時からオープンしているのか確認したら、ケアンズのヴィトンショップは2年ぐらい前に閉店していました。リサーチ不足だった事をお詫びいたします。