テラーノベル
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深夜26時。世間が夜の余韻に浸る中、Snow Manの仕事納めは深夜に及んだ。
「うぅ……さっむ……」
地下駐車場に響くのは、渡辺の不機嫌極まりない声だ。
ダウンコートの襟を立て、亀のように首をすくめている。
「翔太、歩くの遅い。置いてくぞ」
「うるせぇ、足の長さが違うんだよ……」
スタスタと先を行く岩本の背中を、渡辺が小走りで追いかける。
岩本は愛車のロックを解除すると、助手席のドアを開けて立ち止まった。
「ほら、乗って」
「……ん」
渡辺は当然のようにエスコートを受け入れ、乗り込むなりシートを限界まで倒した。
岩本が運転席に乗り込むと、すぐに暖房を最強にする。
「あったまるまで待ってて」
「……照、なんか食うものないの?」
「お前なぁ……コンビニ寄る元気もないくせに」
岩本は呆れたように笑いながらも、ダッシュボードから何かを取り出した。
高級なチョコレートの箱だ。
「これやるよ。糖分補給」
「え、いいの?これ照の楽しみにしてたやつじゃん」
「今日は特別。……お疲れ、翔太」
岩本が包み紙を剥いて、渡辺の口元に差し出す。
渡辺は迷わずその指ごとパクリとチョコを口に含んだ。
「んー、うま……生き返る……」
「指、噛むなよ」
「照の指が太いのが悪い」
憎まれ口を叩きながらも、渡辺の表情が緩んでいく。
車が走り出すと、心地よい揺れと暖房の温かさが襲ってくる。
渡辺は岩本の運転する横顔──街灯に照らされる、真剣で男らしい横顔──をぼんやりと見つめた。
「……なぁ」
「ん?」
「運転、ありがとな」
「今さらだろ」
「あと……今年も、ありがとな」
素直じゃない渡辺が、ボソリと呟いた感謝の言葉。
岩本はハンドルを握り直すと、口角をくいっと上げて笑った。
「翔太が俺に素直になるなんて、雪でも降るんじゃね?」
「うっせ、言わなきゃよかった!」
渡辺がプイと窓の方を向いて目を閉じる。
しばらくして、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
信号待ち。
岩本はそっと助手席に視線を落とす。
無防備に口を開けて眠る、グループ最年長(のひとり)。
昔から変わらない、手のかかる、けれど誰よりも歌声で背中を支えてくれる相棒。
「……こちらこそだろ」
岩本は誰にも聞こえない声で呟くと、信号が変わるまでの僅かな時間、自身の大きな手を、眠る渡辺の頭にポンと乗せた。
「……風邪ひくなよ」
髪を撫でる手つきは、筋肉質な見た目とは裏腹に、壊れ物を扱うように優しかった。
最強のリーダーが唯一、甘い顔を見せる時間。
ブラックコーヒーのような苦味の効いた夜に、角砂糖を落としたような甘いドライブは、渡辺の家に着くまで続くのだった。
コメント
2件
たべてすぐ寝るところがかわいい!! 続き待ってます
