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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第153話:VIP暴走。ドバイ王室の宝物庫行き決定
前話で畑のド真ん中に突如として出現した、シンデレラも裸足で逃げ出す『馬車サイズ』の巨大な黄金カボチャ。
その内部から溢れ出る圧倒的な神々しさと、周囲を埋め尽くすルビー色のサツマイモの輝きを前に、限界集落は完全にパニック状態に陥っていた。
村長やおばあちゃん達が地面にひれ伏して拝み倒す中、ジンバルに固定された俺のiPhone miniの画面は、一千万人を優に超えた世界中のリスナーたちの狂乱で処理落ち寸前になっていた。
だが、このカオスはまだ、これから始まる『世界規模の暴走』のほんの序章に過ぎなかったのだ。
ピコーン! ピコーン! ピコーン!
突如として、配信画面のチャット欄が、見たこともない速度で同じ極彩色のアイコンによって埋め尽くされた。
世界中の誰もが知る、あのドバイの超巨大富豪――石油王の降臨である。
『(ドバイの石油王からの¥50,000MeTubeギフト)×100連発』
画面が札束の嵐で完全に覆い尽くされかける中、石油王は翻訳機能が追いつかないほどの狂気的なテンションで、英語のチャットを弾幕のように叩き込み始めた。
『”Oh my God!!! Master! What on earth is that?! That is not a mere vegetable! That is a sacred artifact of gold!“(おお我が神よ!!! 主よ! 一体それは何なんだ?! それはただの野菜ではない! 黄金の聖遺物だ!)』
『”The brilliance! The majesty! It perfectly matches the glory of my royal palace! I must have it! No, I will have it right now!“(その輝き! その威風! 我が王宮の栄光に完璧にマッチしている! どうしても欲しい! いや、今すぐ私が手に入れる!)』
あまりの興奮ぶりに、ドバイの現地時間は深夜のはずだが、彼は完全に寝室で飛び起きて発狂している様子が画面越しに伝わってきた。
そして、石油王のタイピングは、ついに世界経済のバランスを木っ端微塵に吹き飛ばす領域へと突入する。
『”Master! I will offer 1,000,000,000 YEN for that single golden pumpkin! One billion yen! Do not sell it to anyone else! It belongs to the Dubai Royal Treasury!!“(主よ! その黄金カボチャ1個に【10億円】を提示する! 10億円だ! 他の誰にも売るな! それはドバイ王室の宝物庫に飾られるべきものだ!!)』
「じゅ、じゅう……じゅうおくえんんんんん!?」
小春ちゃんが、持っていた特大サツマイモを地面に落とし、裏返った悲鳴を上げて白目を剥いた。
「カ、カボチャ1個が、じゅうおく……? 意味がわからない、意味がわからないよお兄さん!!」
「ア、アキヤ君……ワシはもう、心臓が止まりそうじゃ……っ!」
村長にいたっては、あまりの金額のスケールに呼吸を忘れ、おばあちゃん達に背中を激しく叩かれながら文字通り泡を吹きかけていた。
それもそのはずだ。カボチャ1個の値段が、この限界集落の過去数十年の総予算を遥かに超越してしまったのだから。
だが、ドバイの石油王の行動力は、カネの力以上に規格外だった。
「お、お兄さん! 私のタブレットに、十勝帯広空港の管制塔から緊急の確認連絡が入ってます!!」
小春ちゃんが、ガタガタと震える手で画面を指差した。
「なんか……ドバイ発の超大型プライベート貨物輸送機が、大至急の着陸許可を求めて、今こっちに向かって飛行中だって……! 『国際的な超重要戦略物資(カボチャ)』を回収するため、空港の貨物ラインをすべて最優先で空けろって、オイルマネーの圧力でゴリ押しされたみたいです!」
「……強行着陸(エクスプレス・ロジスティクス)か。相変わらず、物資の調達スピードだけは一級品の部隊だな」
俺は持参した水筒のほうじ茶を啜り、この状況でも俺の膝の上で「ふにゃあ」と暢気に喉を鳴らしているシロ様の頭を撫でた。
彼女の放った豊穣バフが、ついに中東の国家予算をリアルタイムで動かしてしまったのだ。
さらに、ネット上ではこの「カボチャ1個に10億円」という超現実的な取引が瞬時に拡散され、世界の主要経済ニュースのヘッダーが文字通りジャックされた。
『【ブルームバーグ速報】日本の過疎地で発見された黄金の巨大植物、ドバイ王室が10億円での買収を電撃表明』
『【ロイター】カボチャ市場に歴史的インフレ。謎の配信者が所有する農作物を巡り、中東の資本が十勝へ集結』
世界経済のニュース速報がテレビやネットで激しく流れ、為替相場が一瞬だけカボチャを中心に乱高下するという、経済のバグが極限に達していた。
そんな、カボチャ1個で世界中の経済学者が頭を抱え、村長が限界突破して失神している大パニックのど真ん中で。
俺は一人、静かに軽トラックの荷台に正座し、いつものタッパーを開けていた。
中に入っているのは、完璧な水加減で炊き上げられた『冷やし玄米』と、自家製の『大豆ミートとレンコンの秋風きんぴら』である。
「……よし。国際的なサプライチェーンの急激なアクティベーションを確認。これより指揮官は、これからの大型空輸作戦(出荷作業)を完遂するため、定時エネルギー補給を遂行する」
俺は、黄金の光を放つ馬車カボチャの超現実的な影の中で、一切の表情を崩すことなく、ストイックに大豆ミートを咀嚼し始めた。
「お、お兄さぁぁぁん!!! カボチャ1個が10億円でドバイ王室に買収されて、今まさに十勝の空をジャンボジェット機がこっちに向かって飛んできてる世界崩壊レベルの有事に、なんで一人だけ秋の青空の下で真顔で『レンコン大豆ミート』をストイックにシャキシャキ咀嚼できるんですか!?」
小春ちゃんが完全に理性を失い、軽トラの荷台に転がっていた、カボチャの収穫に使うための『頑丈なプラスチック製の特大コンテナ(空箱・重量約三キロ)』を両手でラグビーボールのように抱え、凄まじいジト目でツッコミを入れてくる。
だが、俺は玄米の咀嚼を止めない。
「小春ちゃん、取り乱すな。どれほど中東の資本がロジスティクスに介入してこようとも、元・陸上自衛隊需品科たるもの、エネルギー補給という基本兵站を怠れば、完璧な荷役作業(積み込み)は行えない。いかなる経済の変動の前でも、己の代謝サイクルを一定に保つ。これが鉄則だ」
俺は熱いほうじ茶で喉を潤すと、二千万人へ向けて限界突破し続けるカメラにキリッとした真顔を向け、いつもの『限界言い訳タイム』を発動した。
「世界中の皆さま。画面の向こうで、カボチャ1個に10億円の値がつき、中東の大富豪との感動的な国際取引が成立したと興奮されているかもしれませんが、冷静になってください」
『出たァァァァァ!!!』
『世界経済のニュース速報が流れてるのに、まだ言い訳する気か!!!』
『主の限界言い訳タイム・VIP暴走編ww』
『さあ、この10億円のカボチャをどうやって現実的な事務処理のせいにする気だww』
俺は淀みない口調で、極めてフラットに言い放った。
「これは、国際的な資産価値を持つ奇跡の農作物の売買などではありません。これは、我が陣地(畑)において発生した『巨大植物性有機廃棄物(過剰肥大化したカボチャ)』の処分に困っていたところ、海外の特殊な『有機物研究財団(ドバイの石油王)』が、そのサンプルの廃棄・運搬コストを全額負担(デポジット)してくれると申し出てくれただけの、単なる『産業廃棄物の国際的アウトソーシング』です。10億円という数字も、国際的な危険物輸送における『保険金』と『為替ヘッジの預け金』が一時的に口座に反映されているだけの、会計上の数字のバグに過ぎません。ええ、すべてはただの『合理的な産廃処分』と『国際輸送に伴う過剰なデポジットの着金』ですね」
「んなわけあるかあああ!!!」
バコォォォォォンッ!!!!
小春ちゃんが、持っていた特大のプラスチックコンテナを全力で振りかぶり、俺の背中に向かってパーフェクトな満塁ホームラン級・コンテナスマッシュを見舞った。
頑丈なプラスチックが肉体に激突した、鈍くも凄まじい大爆音が、十勝の秋の広大な空へと虚しく響き渡る。
「産業廃棄物を王室の宝物庫に飾る大富豪がどこにいるんですか!! 保険金じゃなくて、お兄さんの配信とシロちゃんの豊穣バフが凄すぎて、石油王さんがカネの力に物を言わせて大暴走しちゃってるだけでしょ!! 自分の家の猫が、一晩で10億円を稼ぎ出す本物の招き猫だって素直に認めなさいよ!!」
『小春ちゃんのコンテナスマッシュ炸裂www(いい音)』
『巨大植物性有機廃棄物(ただの黄金の馬車カボチャ)』
『産業廃棄物の国際的アウトソーシング(10億円のロイヤル取引)』
『適応力バグおじさん、ついに中東の国家予算レベルの奇跡まで産廃処分と言い張るww』
『経済ニュースの速報と小春ちゃんのスマッシュの温度差で腹痛いわww』
俺の理不尽極まりない会計学的な限界言い訳と、小春ちゃんのキレキレのコンテナツッコミに、パニックになっていた村長やおばあちゃん達は「アッハッハ! アキヤ君の屁理屈は今日も世界一じゃのう!」と涙を流して大笑いし、二千万人を超えるチャット欄のリスナーたちも、腹がよじれるほどの大爆笑の渦へと叩き落とされた。
『ミャウ(ふふっ、私の寝顔の価値は、10億円でも安いくらいよ)』
俺の膝の上で、シロ様が満足げに神秘的な『オッドアイ』の瞳を細め、フンスと鼻を鳴らして再び優雅に丸くなった。
キツネ兄弟も、防風林の影から見ていた巨大ヒグマも、黄金の光に包まれながら、これから始まる大がかりな「出荷作戦」を予感して、楽しそうに尾を揺らしていた。
「……まぁ、理由はどうあれ。廃棄コストがかかるどころか、村の公金口座がさらに天文学的に潤い、秋の防衛予算(冬支度)が完璧に確保されたなら、ロジスティクスとしては完全勝利だ」
俺は背中のプラスチックの衝撃をさすりながら苦笑し、シロ様の純白の背中を撫で、熱いほうじ茶をゆっくりと飲み干した。
激務に潰されて逃げ込んできた、この限界集落。
最初は一人で静かに暮らすつもりだったが、今では世界一尊いモフモフたちと、騒がしい女子高生、そして世界中を巻き込んで大暴走する富豪たちに囲まれた、世界一バグった『絶対の聖域』になってしまった。
石油王の放つ資本の暴力と、元需品科のブレない大豆ミート咀嚼。
限界集落の黄金の秋は、国際ニュースの大騒ぎを背に受けながら、ジャンボジェット機を迎え撃つための最強の出荷オペレーションへと、どこまでも力強く加速していくのだった。
コメント
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あーもう、今回も息つく暇なかった…!石油王が深夜のドバイから本気で10億円ポンと出してきて、しかも貨物機飛ばすって資本の暴力すぎるよ(笑)でもその横でアキヤさんが真顔でレンコン大豆ミートシャキシャキしてる温度差が最高すぎて、小春ちゃんのコンテナスマッシュと合わせてお腹痛くなるまで笑った。シロちゃん、寝てるだけで豊穣バフで村の財政を救うとか、もう本物の神様だよ。限界言い訳タイムVIP暴走編、頭おかしすぎて大好きです。続き楽しみにしてる〜!