TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

「すいませんでしたぁーーっ!!」


いきなりソファの前で、お母さんに向かって土下座をする健二。


「え?ちょっと、待って、ね。綾菜は?」


お母さんは、いきなりのことで困ってる。

私は知らないフリで、健二がお母さんに、どんな言い訳をするか聞き耳をたてている。


「ほんの出来心で、一度だけの遊びなんです!酔った勢いでつい…」

「酔った勢いでやっちゃったの?寝言で名前言うくらいなんだから、一度だけって嘘じゃないの?」

「いいえ、誓ってそんなことはありません!僕は綾菜と翔太を愛しています、だから!」


土下座したまま、話し続ける健二を観察する、嘘をついてるか本心か見極めるために。


「もう絶対しません、だから許してください!」


まだ頭を上げない。


「謝る相手が違うでしょ?綾菜が許すかどうか?なんだから」

「おとうちゃん、ごめんしたの?」


翔太がお母さんの腕をつかんで聞いている。

翔太には、ばあばがおとうちゃんを怒ってるように見えるんだろうな。


「ちょっといい加減に頭を上げて。翔太も見てるんだから、もうそんなことやめて」

「えっ、じゃあ…許してくれるんですか?」


顔を上げてうれしそうに言う。


「あのね、さっきから言ってるでしょ?私じゃないでしょ!夫婦の問題なんだから夫婦で解決しなさい。綾菜はどうなの?これからどうするの?」


健二が私を見る。


「まだ許せない、信じられない。だからしばらくここにいさせて」


あっちを向いたまま、低い声でこたえる。


「おかぁちゃん、おこってるの?」


翔太が、泣きそうな声を出した。


「大丈夫だよ、翔太、おかぁちゃんは怒ってないよ、少し元気がないだけだからね。今日はばぁばのおうちでねんねしようね」


お母さんが翔太を抱っこした。


「そういうことだから、健二君、今日は帰ってくれる?綾菜と翔太はうちに泊めるから」

「は…はい、わかりました。じゃあ今夜は帰ります。また明日、迎えに来ますから」


すくっと立ち上がると、そそくさと帰って行った。


玄関のドアがバタンと閉まる音がして、健二が帰って行ったことを確認して、お母さんに聞く。


「どうだった?お母さん、健二の言ったこと、信じられる?さっきも昔酔った勢いで、一度だけ、とか言ってたけど、あのLINEのやりとりだと、続いてるのは確実だし。そもそも昔って言うのが嘘だから。なんであんな見えすいた嘘つくんだろ?」


「多分だけど…」


よっこらしょと翔太をおろした。


「多分?」

「浮気がいつかとか、きっかけとかそんなことはでまかせの嘘で一回だけも嘘。でも多分、綾菜と翔太を愛してるというか、大事だから失いたくないというのは本当だと思う。あんた達のことをどうでもいいと思ってるなら、あんなに慌てないような気もする」

「でも、あんな適当な言い訳でごまかされたくない!」


「じゃ、離婚する?」

「それは……」


「離婚するとなると、色々問題があるし。健二君は、父親としては文句ないんでしょ?」

「うん、翔太もおとうちゃん大好きだし」

「お金を女に貢いだりとかは?」

「してないはず、お金の管理は私だし」

「それなら、今回は執行猶予をつけたら?」

「え?どういうこと?」


「このことが許せなくていつかは離婚するかもしれない、でもそれは今じゃない。いつかその時がきても慌てないように準備しておく、それが執行猶予」

「まぁね、翔太のことを考えると、私の感情だけでは結論は出せない」

「いくら昔よりはよくなったと言っても、シングルは大変だからね」


「ばぁば、カレーだよ、カレーたべよ」

「はいはい、ご飯にしようね」


急いでカレーを並べた。


「いただきまーす」

「いただきまーす」


この子には、あの寂しい思いはさせたくない、私が子どものころ感じたあの思いは。


「…でもなぁ、このままじゃ気が済まない、明らかに嘘ついてるのに」

「だよね?それはお母さんもわかる。だから、ちょっと仕返ししてやれば?健二君にバレないように」

「どうやって?」

「お母さんだったらこうする…」


ニヤリと笑って、お母さんが考えた健二への仕返しをおしえてくれた。


「そんなうまくいくかな?」

「きっと、うまくいく、そのマリって女のコメントを見てたらそう思った。だから、明日、健二君が迎えに来たら、おりをみてやってみて」


自信はないけど、何もしないのも許せないから、お母さんのアイディアをやってみることにした。



「でもさぁ…」


ポツリとお母さん。


「他の女のことでそんなに腹が立つって、やっぱりそれだけ健二君のことが好きってことだよね?」

「は?お母さんだって、もしもお父さんにそんな人がいたら、怒るでしょ?」

「あっ!」

「え?」

「綾菜、いま、お父さんって言った!」

「あー、そこじゃないよ、反応するとこ!」



この会話をしてから少し後に、お母さんはあの人…お父さんと離婚することにしたと報告があった。

仲良しに見えてたんだけどなぁ。



次の日の夕方。

健二は、オレンジの薔薇の花束を持って私を迎えにきた。

オレンジの薔薇は、プロポーズの時にプレゼントしてくれた花だ。

なんとなく、それさえもマリの入れ知恵のような気がしたけど、そこは気づかないふりをしておく。

執行猶予だと呟きながら。


帰りの車の中。


「ホントに一回だけなのね?」

「うん、神に誓って!」

「嘘ついてたら私は翔太を連れて離婚するから」

「そんな離婚とか言わないで、ね、俺を信じて」

「嘘ついてなきゃ、信じてとか言わないもんだけどね」

「だからぁ!もうどうすればわかってくれるの?」

「……しばらく様子を見させてもらうから」


健二のことを信じたいけど、信じられない。

一度崩れた信用は簡単には戻らない、それが夫婦ならよけいに。

けれど、苛立ちと悔しさは心の中にしまっておく、翔太のためにも、こんなことで家庭を壊したりしない。

自分の感情を抑えて、普通に生活をする。

でもね、健二、このままにはしないからね。


私はさっきお母さんが言ってたアイデアを思い返していた。



離婚します 第二部

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

12

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚