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#素人作品
YAMATO
824
#ほのぼの
#大人の恋
E―さん
29
「世間的には千紗さん、兄さんの許嫁ってことになってるし……全員がそろってから順序立てて説明する予定だったんだけど……。良介のせいでなんか驚かせちゃったね」
晴留が瑠璃香たちに向かって肩をすくめるなり、良介へ追い打ちをかけるみたいに、
「良介ってば、これでよく勤め人出来てるって思うでしょ?」
千紗が吐息交じりに付け加えた。
そんな二人からの容赦ない言葉にも、当の本人はさして気にした風もなくヘラリと笑って、
「二人とも手厳しいなぁ」
と頭をかく。
なんとも穏やかな空気感に、瑠璃香はふっと肩の力を抜くことが出来た。
この店に入るまでの間、ずっと緊張していたから、この雰囲気はすごくありがたかった。
そんな瑠璃香の横で、晴永が複雑そうな心境を必死で抑えているような、どこか難しい顔をしているのも、瑠璃香の心をほぐしてくれる。
きっと晴永の中では、まだ状況が完全には整理しきれていないのだろう。
突然呼び出されて、店へ来てみれば、許嫁とその恋人と弟がいて……。
挙句の果てに、恋人は弟を自分と勘違いし、許嫁とコソコソしている浮気者だと誤解していたと分かったのだから、当然だ。
(……冷静に考えたら大混乱だよね……)
ついさっきまで絶望のど真ん中にいたはずなのに、今はそんなことまで思える。
その変化が、自分でもなんだか不思議だった。
「とりあえず、いつまでもみんなして突っ立ってるのもおかしいし、一旦席へ着こっか」
場を仕切り直すように晴留が言う。
「賛成」
その提案に良介が諸手を上げて頷いて、千紗が良介の言葉を受けるみたいに続ける。
「今夜は、はーくんが腕によりをかけて料理、振るまってくれるって」
「わーい、本当? 僕、晴留の作るご飯、大好き!」
「私も! なんでも今日は私たちにエールを送るための決起集会だから、食事は全部、はーくんからの奢りらしいよ?」
「ちょっ、千紗さん!」
「え? 違うの?」
「ち、違わないけど……そこ強調されるとなんか恥ずかしいんだけど……」
「ふふっ。わざと」
「千紗さん!」
千紗に翻弄されるみたいに晴留の慌てる姿が、見ていて微笑ましい。
この感じは、どう見ても昨日今日知り合った間柄の三人には見えなかった。
晴永も瑠璃香と同じように思ったらしい。
「なぁ、晴留。お前たち三人って……」
晴永が探るように問い掛ける。
その問いに、晴留は「あー……」と頭をかいた。
「とりあえず座って? 料理作りながら話すから」
再度促されて、瑠璃香と晴永は千紗たちの後を追うように席へ向かった。
選んだのは、料理中の晴留とも話しやすいカウンター席だった。
入り口から見て一番奥に良介。その隣へ千紗。
何となく瑠璃香を入り口側へ座らせたくなかった晴永は、瑠璃香を千紗の隣へ座らせて、自分は端の席へ腰を下ろした。
「で?」
晴永が改めて晴留を見る。
「そろそろ説明しろ」
「はいはい」
晴留は苦笑しながらエプロンを身に着けると、手洗いを済ませて調理台へ向かった。
「まず、良介とは高校時代からの付き合い。まぁ、腐れ縁みたいなもん」
「晴留ぅ~、腐れ縁ってひどくない?」
「事実じゃん」
良介の抗議を軽く流しながら、晴留は続ける。
「で、千紗さんとは……良介経由で知り合った」
「え?」
瑠璃香が目を瞬かせる。
すると千紗が小さく肩をすくめた。
コメント
2件
ちささん、かわいいな。
おおっ、誤解が解けてホッとした空気感がじんわり染みるわ~。晴留の天然っぷりと千紗のツッコミ、良介のヘラり方が“三人の家族感”を出してて、読んでて自然と頬が緩んだ。瑠璃香が“冷静に考えたら大混乱”って切り替えられてるのも、ちゃんと成長してて好きだな。カウンター席の配置とか、晴永が無意識に瑠璃香を守ってるのも熱い🔥