※甚だしい捏造
※非日常な日常話
※実在の人物、団体とは一切関係ありません。
※軍パロです。
※以上をふまえて大丈夫な方のみおすすめください。
ゆっくりしていってね
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「エ、エミさんッ!?」
「エーミールッ!! しっかりせぇッ!」
非力なエーミールから信じられないほどの力で、押さえつけていた幹部が吹き飛ばされた。
ゆらりと立ち上がるエーミールの左目は、何の光も放っていない。意識があるのかも、わからない。
「エーミールッ!!」
「エミさんッ!!」
「しっかりせんかぁ、このハゲェッ!!」
皆の叫び声で、エーミールの左目にぼんやりと光が戻った。
「あ……」
「だ、大丈夫か、エミさんッ」
恐る恐るではあるが、コネシマがゆっくりとエーミールのそばに足を進める。
なだめるように、落ち着かせるため、コネシマはあえて声を落としてゆっくりとエーミールに語りかける。
コネシマの目配せで、他の幹部達もゆっくりとだが確実にエーミールを囲むために動く。
「落ち着け。ええな、エミさん」
「コネシマ…さん…」
「近付いたら…アカン…」
「大丈夫や、大丈夫やから……」
「私は…もう、助かりません…」
「ア、アホな事言うな。大丈夫や。今、グルッペン達が、何とかしてくれとるから…」
普段はうるさいほどやかましいコネシマが、ゆっくりと落ち着いた声でエーミールを制する。
だが、エーミールは右目を押さえ、首を左右に振ってみせた。
「先ほどの…異常な力を見ても…わかる、でしょう?」
「乗っ取られ…はじめてます」
「せやからそれは今……ッ」
「分析しましたッ! 乗っ取られそうになりましたけど、逆に『彼女』にアクセスしてみて……」
「この花に近づいてはいけませんッ!!」
「花が咲いたら、蔓を伸ばし、近くにいるものを取り込みますッ!」
「何やてッ!?」
コネシマの叫び声と同時に、エーミールを包囲する輪も止まる。
エーミールは皆を近づけさせまいと、己の状況を叫んだ。
「もう手遅れなんですッ! だから……今すぐ始末してくださいッ!!」
「……ッ! で、できるわけないやろッ、そんなん!!」
「今、特急で調べておるッ! だから、変なこと考えるなッ!」
コネシマとしんぺい神が、憔悴しながらも短絡的とも取れるエーミールの言葉を制し、必死で説得を続ける。
それでもエーミールは、頑なに首を左右に振り続ける。
「ダメです! 侵食されとるから…わかるんですッ! 花が咲いてもうたら…全てを侵食し始め……るッ?!」
エーミールの言葉が終わるかどうかというその時、エーミールの右目から高速で蔓のようなモノが伸び、コネシマに向かって一直線に襲いかかった。
「コネシマさん逃げてッ!!」
「間に合わへんッ」
ロボロが叫ぶと同時にナイフを抜き、チーノと共に襲いかかる蔓を切り刻んだ。
切り刻んだにも拘らず、細切れにされた蔓は打ち上げられた魚のようにビチビチとのたうち回る。
「焼いてくださいッ! 一片でも残ると、再生する!」
右目を押さえながら、エーミールが大声で指示を出す。
蔓に攻撃したロボロとチーノの間に、ショッピとシャオロンが割って入った。
「大先生! ライターオイルは!?」
「そんなん、持ち歩くワケないやろッ」
「使えん」
ショッピは舌打ちしてそう吐き捨てると、鬱は「なんでやッ」と不満を漏らす。
「行くで、ショッピくんッ」
不満たらたらな鬱には目もくれず、ショッピとシャオロンは消毒用アルコールを手に取ると、細切れの蔓に向かって噴射する。
そこへ鬱が、口に咥えていた火のついたタバコを投げ入れると、蔓はあっという間に火だるまになった。
「よっしゃ!!」
蔓の標的となっていて迂闊に動けずにいたコネシマが、歓喜の声をあげる。
同時に、窓ガラスが割れる音が、医務室に響き渡り、その場にいた全員は喜びから一転絶望の顔になる。
エーミールがいない。
今の騒ぎ合間に、隙をついて窓ガラスを割って外へと飛び出していた。
生物兵器に乗っ取られ、超人的な動きをさせられているエーミールに追いつく術はない。
だが、人一倍精神力のあるエーミールだ。そう簡単に、わけわからんバケモンに乗っ取られるハズはない。
一縷の望みを賭け、コネシマとロボロが叫ぶ。
「エミさん、絶対に無茶すんなよッ!!」
「必ず…必ず、助けたるからッ!!」
すでに姿が見えなくなってしまったエーミールに、声が聞こえたのだろうか。
いや、聞こえている。
仲間内で、誰よりも声が大きくやかましい二人が放った、精一杯の叫び声だ。
続く
コメント
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あー!emさn...! ut先との掛け合いシーンで笑ってしまいましたw でも咄嗟に煙草を投げたut先の判断有能✨👏✨