コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
光貴と結婚し、アウトラインで結婚式を送ってから一年半の時が経った。月日が流れるのはあっという間。私は三十一歳になり、光貴は三十歳を迎えた。アラサーだと思っていたら気が付けばアラフォーになっていそうだ。光陰矢の如し。
そんな私たちに今、マイホーム建設の計画が立っている。
というのも、彼の実家が持っている駐車場地に利用していた土地の賃貸をやめることになったため、私たちの新居建築に是非使ってくれとの申し出があった。お義父さんやお義母さんとの仲は良好で特段断る理由も無かった。将来のためのマイホーム建設を考えていた所だったから、有難く使わせてもらうことになった。土地代が浮くのは願ってもない話。
というわけで最近の日課は、光貴と私でハウスメーカーのホームページ見回りとチラシ請求と化した。
色々なメーカーを見ていると中でも群を抜いて高額な坪単価のメーカーがあった。三友林業という会社、桁外れにすごすぎる。オール日本産の素晴らしい木材を使って建てる家の値段は、全く手が出るものではない。坪単価百万円以上なんて、どんなお金持ちが家を建てるんだろう!
私たちには逆立ちしても無縁だ。三友林業のカタログに載っている写真は、大豪邸ばかりだった。
とりあえず土地が用意できるため、建売ではなく注文住宅になる。そのためしっかりとした家を建ててくれるハウスメーカーを探しているのだ。割高なのは仕方ないけれど、最低三千万円くらいまでの価格に押さえないといけない。
色々な事を考えて想定したローン分配は、二千万円くらいが妥当かと思えた。頭金は二人で必死に貯めたお金と、両親達の祝儀を少しずつ足したものを用意する。残り二千万円超をローンで組めば、今の賃貸と変わらない支出の、八万五千円くらいが毎月のローン額になる。これ以上は予算オーバーなので、多少の前後はあっても家の代金は三千万円くらいで押さえたい。
マイホーム建設が決まったら後は定年まで必死に働くだけ。マイホームは憧れだったから、折角建てるなら妥協せずに拘って建てたいと思っている。
「光貴、どこかいいハウスメーカーあった?」
「ううん、めっちゃ探しているけど……ない」
光貴がスマートフォンの画面に顔を落としたままで答えた。
声のトーンから疲れが読み取れた。理想の家を割安で建ててくれるハウスメーカーなど、そう簡単には見つからない。毎日これの繰り返しだから、私も疲れてきた。
現在、私の一人暮らしをしているマンションにそのまま光貴が転がりこむ形で一緒に住んでいる。そろそろどうにかしたいと思っていたところだから、マイホーム建設は渡りに船。
結婚したらどこかの新築建売か分譲マンションを買うつもりだったので、頭金をもう少し貯めるため、一、二年の辛抱だと思って、二人で仲良く二LDKの部屋に住んでいる。
少し狭いけれど、どのみち引っ越して新居を構えるのだから、無駄な引越し代を浮かすために一緒に住みたいと言ったら、両親たちもその点についてはオーケーしてくれた。
このマンションから光貴の実家が近いので、よく二人で顔を見せに通っている。家族ぐるみで仲が良く、私を実の娘のように可愛がって下さる光貴のご両親には感謝しかない。
私が光貴のご両親との仲がいいものだから、実の両親も喜んでいる。光貴は私の両親も大切にしてくれるから、家庭円満で嫁姑問題でもめることはない。
しかし最近、ひとつだけ悩みの種ができた。
最近はどちらの両親から『この現状を変えなさい』という催促が増えた。家をどうこうするというよりも、早く孫を作れという攻撃が絶えない。
光貴も私も一人っ子なので、お互い初孫になるから気持ちはわかるけど。
でも、正直言ってそういう攻撃は止めて欲しい。彼らに会う度に責めるように言われても、エッチの回数少ないから仕方ないとは説明できず、苦笑いするのが関の山。これが辛い。だから新居を建てればこの攻撃が軽減されるのではないかと、打算的な思惑もあった。
孫攻撃の件を友達に相談したら、そんなものだと諭された。結婚しなければ、いつ結婚するのだとうるさく言われ、結婚したら孫はまだかと催促。孫ができたら、男なら女を産め、女なら男を産め、一人っ子ならきょうだいをつくれ――彼らの欲は留まることを知らないそうだ。義理両親や実の両親でさえ、この件が原因で疎遠になる辛いケースもあるみたいだから、私も気をしっかり持っておかないといけない。
でも、この話を聞いて思った。私は娘や息子、縁あって家族になってくれたひとに『早孫攻撃』はもちろんのこと、欲望の押し付けは絶対にしないと誓う!
「ホームページがダメなのかなぁ。ここって思うメーカーが全然載ってない」
「確かに」
「そうや。今度の土日、休み一緒やん? 一緒に住宅展示場を回ってみようか」
「それいいね。うん、そうしよう!」
光貴のナイス提案に私は笑った。百聞は一見に如かずだ。
「喜んでくれて良かった」
ははは、と二人で顔を見合わせて笑った。あ、光貴の顔が近づいてきた。キスされる――