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この物語はキャラクターの死や心の揺れを含む描写があります。読む際はご自身の心の状態にご配慮ください。
夜。
風呂上がり、タオルで濡れた髪をわしゃわしゃしながら、俺はある人に折り返し電話をかけようとしていた。
重い空気の自室。窓の外には、真っ二つに切られたような形をした月が遠くにある。
ドライヤーも使わずにいるせいで、頭がひんやりしていた。
肩に雫が落ちる度、真夏とはいえ寒さが背中を伝う。
それでも後回しにして、俺はスマホを耳に当てる。
俺になんの用があったんだろう。
でも、この人からの電話って、なんか変な予感しかないな。
ワンコール……ツーコール。
相手が電話に出たのは、フォーコールの途中だった。
聞こえてきたのは、妙に明るい若い女性の声。
『あ、レンタロー?どーも、マーちゃんことマシロでーす!』
「……知ってるよ。」
ほーら、こうなるだろ。
俺は予測通りの展開に、呆れてため息をついた。
マーちゃんーー白世羅マシロとは、出会ったのは二週間前。
危ないところを、助けてくれた命の恩人なんだけど、定期的に意味の無い電話をかけてきては、二時間は余裕で喋る。
ハイテンションで、デカすぎる彼女の声には、毎度驚かされる。
俺は、いくつかマーちゃんの言葉を予測しながらわざと尋ねた。
「で?なーに?」
バイト先の店長の愚痴、最近助けた人の話、俺とイロハの関係性。
このうちのどれかについてベラベラ喋っては、別の話題に飛んだり戻ったりする。
特に俺とイロハの関係なんて、深堀して来るもんだからストレスがやばい。
でも今日は、声のトーンは変わらないものの、少し妙なことを聞いてくるのだった。
『レンタローは大丈夫?』
「え?」
『友達が敵だったり、母親との関係とかあるじゃん?
特に友達。んー、コードネーム、アネモネだっけ?本名がタヨリの男の子!』
なんで、俺の友達の名前知ってるんだ。
まぁ、今更びっくりするのもいいや。
この人は、人を見透かしているみたいだ。
大丈夫じゃないな。
この前、会った時は別人のようだったし、喧嘩別れした日が最後にちゃんと話した日。
タヨリは、完全悪でもないはず。わかっているはずなのに、どうしても恐怖を抱いてしまう。
なんて、そんなこと言ったって、マーちゃんはどうにもできないだろ。
俺は、ささやかな嘘をついた。
「大丈夫……でもマーちゃんに関係ある?母さんとのこと話してねぇし。」
あんまりプライベートのこと話した記憶ないんだけど。
マーちゃんは、考えるように数秒黙り込んだ後に、ゆっくり言った。
『知りたくなくても、分かるんだよねぇ。
あ、ハーちゃんもあれから命の方は?』
話題とっ散らかりすぎだろ。
と思いつつ、ちゃんと問いには答える。
「大丈夫、最近狙われることは無いな。虚霊が一般人襲ってることはあるけど。」
『それもはや、日常茶飯事じゃない?』
さらりと、言葉を発した後、
マーちゃんは、苦笑しているようだった。
「確かに。」
俺は、電話越しで頷いた。
『それで、そろそろお誘いが来るんじゃない?』
「お誘いって何?」
『戦闘のお誘い。』
「!」
戦闘のお誘い?
どういうこと?
マーちゃんは「アハハハハ……」と不気味に笑うと、続けた。
『いやぁ、おそらくリアスは、ワタシとハーちゃんを殺したくて仕方がない。世界も支配したい。
なら、さっさと行動に移そう的な考えで、自分から戦闘に挑んできそうよねぇ……って。』
「だから、気をつけろって?」
マーちゃんの次なる言葉を先行してやると、
「そーそー。」と、だるそうに笑った。
「そうするかもしれないっていうだけなら、電話しないよな?」
少し言葉を強調すると、マーちゃんは籠った声で、「ふっ」と息を吐いた。
小さく、自信なさげに。
『ワタシなら、そうする。』
ああ……うん。
「そうか。」
そう言うしかない。
気持ちの籠っていない返事をするしか方法がないだろう。
マーちゃんが、イロハのクローンであり、リアスのクローンであることはわかっている。
つまり、それは、少なからずマーちゃんの内面とリアスの内面には、似た節があるってこと。
本人がそれを、一番わかっているんだ。
だからって、自分が火傷するようなことを、平然と言うなんて。
電話の向こうからは、微かにテレビの音が聞こえる。
多分、お笑い番組。笑い声が少し聞こえた。
マーちゃんの沈黙を、埋めるように。
咄嗟に俺は、話題を降った。
「あ、あのさ。」
『んー?』
「マーちゃんは、その、命狙われたりしてないのか?」
『あー……実はねぇ?』
と、笑いを堪えるようにして、マーちゃんはつい最近の出来事を、淡々と語り始めた。
『レンタローさ』
少し間を置いて、マーちゃんが言った。
声のトーンは、いつもと変わらない。
だからこそ、嫌な予感がした。
『もしさ、ワタシが先に死んだら――どうする?』
「……は?」
思わず、間の抜けた声が出る。
「なにそれ。冗談にしても笑えねぇって」
『ハハッ、ゴメンよ。』
軽く笑う声。
でも、すぐには次の言葉が続かなかった。
『昨日ね』
一拍。
『ちょっとだけ、本当に首、飛びかけた』
「……!」
『後ろから来たの、フタリ。
ヒトリは囮で、もうヒトリが本命』
まるで、コンビニで買った物の話でもするみたいに、
淡々と。
『でも、反射で避けたから、めっちゃピンピンしてるんよね!』
「なんで、そんな軽いんだよ。」
まるで、ダブルピースでもしてそうなテンション。
呆れて、大きくため息をついてしまった。
それを、彼女は無視する。
『だからね』
マーちゃんは、少しだけ笑って、言った。
『フタリがどうなのか、気になったんだ。
多分、能天気に生きてけないよ、もう。』
わかってる。ずっと前から、死にかけてんだから。
特に、イロハがね……。
毒に浸され、刺され、精神的にもズタボロで。
よく平然と生きられるよなぁ。
そこまで考えた時、イロハとマーちゃん、二人とも「やばいことを平然とした顔で過ごす」という共通点を見つけてしまって、これ以上考えるのはやめた。
それより、気になったのが。
「じゃあそもそも、敵に本名晒さなきゃ良かったじゃん。
そうすればバレなかったし、死ぬ確率も減るだろ。」
ストレートに聞いてみた。
ずっと疑問に思ったことだ、そもそも言わなければいいことを、なぜ言うんだ。
すると、マーちゃんは頭のネジが数本外れた回答をした。
『だって、命の危機っていうものを、味わいたいもの。
あばよくば、それで身体と魂を離れ離れにしてみたいなぁ、なんてね!』
「はぁ!?」
お前命をなんだとーーと、言いかけたところで、留まった。
『ワタシ、不老不死?不死身?
まぁどっちでもいいけど、寿命が存在しないのよ。永久に生きなきゃいけないってこと。
大量出血とかしたら死ぬんだけどねぇ、なかなかそんな機会ないもんで、周りの人はバタバタ死んでいくの。だから、死んだら、また会えるかなって。 』
言葉を失った。
じゃあ君は、何年生きてきたの?
そんな問いが頭を埋めつくした。
また沈黙が落ちる。
髪の水滴も同時に落ちる。
その「また会える」が、
誰を指しているのか、俺には聞けなかった。
それを肯定と判断したのか、マーちゃんは「うん」と漏らして、
『明日も約束あるんでしょ?今日はもう切るよ。明日、また電話する。』
そう言って、プツリと電話を切った。
俺は、うんともスンとも言う暇なく、勝手に切られたことに頭の虫が少しだけ動いた。
まだ、聞こうと思ったことあったのに。
ここ数日、聞けてないじゃないか。
マーちゃんの持つ観測者としての能力。
人の過去や秘密を知っていたりするその情報網は、一体どこから?
「勝手に、切るなよ」
タオルとスマホをベッドに投げ捨てると、勢いよく顔からダイブした。
布団の冷たい感覚。
肌に触れる布。
自分の体温で、布団の表面が熱くなっていく。
水滴が染み渡る。
今日はめんどくさいから、ドライヤーはいいや。
寝返りをうって天井を見た。
明日、なぁ。
明日やるべき……イロハとの約束。
約束って言ったって、イロハの母親のこととか、イロハの記憶を消した観測者のことを調べるだけ。
危険はないはず。
一応、気をつけてはおくけど。
「はは、まさか自分が狙われるとか……」
天井に嘲笑を向けた。
本当におかしな話だ。
俺の力に特別なものがある?
戯言を言ってんじゃねぇよ、って言いたいけど、
ずっと追ってくるんだから、嘘じゃないんだろう。
でも、何があるってんだ?
未だに力が使いこなせないってのに……。
いいや、考えすぎだ。
きっとあいつらが、何か勘違いしてるんだ。
そう言い聞かせて、目を閉じた。
翌日。
俺は今、犯罪を犯している気分だ。
だって、敵の旧本拠地に勝手に侵入しているんだから。
しかも、人の情報が混線した書架にいる。
組織の秘密もわかる場所で、一般人は来るのを止しておいた方がいい。
部屋中で、本がシャラシャラと紙をめくらせて、蝶のように飛ぶ。
空間を、自由自在に浮いている。
ここに来たことが、 バレたらイロハの首が吹っ飛び、俺は捕まる。
その状況はわかっている。
でも、誘ってきた当の本人であるイロハは、命の危機をまだ理解していないみたいだ。
理解しないまま、ここに来ている。
彼女は片っ端から、とある名前の記録を探しているらしかった。
今日は、イロハのお母さんと、彼女の記憶を消したやつについて、調べに来た。
イロハのお母さんーー月見の森の女王様の名字の
「桜月」って、珍しいからすぐ見つかりそうだな。
……と、思ったけど、見つからない。
「なぁ、お母さんの名前、覚えてないの?」
イロハは、本を読んでは無造作に投げて、読んでは投げての繰り返し。
「違う」とぶつぶつ続けながら、真剣に探している。
そして、首を傾げる。
「お母様の、名前……わからないのよ。」
「あぁ……困った……。」
「ほんとに。」
思わず、頭を掻く。
名前もわかってないのに行動に出るとか、大胆だなーー。
「ねぇ、レン。あなたのスマホに本を探す能力とかないのかしら?」
「ないね。」
「ケチ。」
「ケチじゃない。」
「ケチケチケチ……。」
なにがケチだ。この野郎。
不貞腐れながら、イロハは捜索を続ける。
口をとんがらせているのが、なんとも言えない幼さを感じる。
俺も、手伝わないとな。
空中に飛んでいる本に、手をかけた。
そこからは、長い道のりだった。
漁っても見つからない。
「お母様出てきて」と頼み込んでも出てきてくれない。
ただ一刻一刻、時が過ぎる。
見たくも無い記録が、代わりに精神を傷つける。
子供を使った実験。
利用される子供、試作体。
意味もなく殺される一般人。
そんな空気感に、イロハは耐えられないみたいで、「からかわないでよ。どうして出てこないの?」と怒り始める。
俺も、吐き気を感じた。
人の感情が感じられない記録たちに、めまいがする。
見たくない
見たくない
見たくない
そんなものばかり。
早く見つけないと、気が狂いそう、これ。
途中、イロハは、お母さんのことは諦めた。
代わりに、イロハの記憶を消した人について調べることにした。
その人については、俺も見当がついている。
以前、この書架に来た時に見た、フユリさんの記録の中にいた人物だ。
名は、アクトだったか。
本名ではない、コードネームで、刑罰で不老不死になっているという。
フユリさんを唯一、人間として扱った人物。
その人こそが、イロハの記憶を消した張本人だと、勝手に思った。
イロハも、同じことを思っていたらしい。
だからそれを確かめるためにも、今日はここに来た。
「レン。」
思考中に、イロハの声が混じった。
見ると、振り返って俺のことを見ていた。
エメラルドの、透き通った瞳が、俺を捉える。
「ん?」
「おかしくないかしら。リアスは自分が道具扱いされたことに怒っているくせに、試作体実験はやめないなんて。」
冷たい正論。
そうだ。そもそも、失敗作と呼ばれて、消耗品のように扱われたことにリアスは怒っているらしいのに、自分は人をゴミのように扱っている。
矛盾、している。
いや、歪んでる。
俺は、頷いた。
「……変な人ね、リアスって。
自分は自分、他人に価値を決められて落ち込むものではないのに。」
「うん、でもさ。
他人に役立たずとか、そういうふうに言われるのって辛いもんだよ。 」
「それは、そうね。」
静かに落ちた会話は、波紋のように響いた。
そこで会話は途切れたけれど、代わりに本たちが、パラパラとめくれている。
そして、イロハの周りをくるりと舞った。
「?」
そよ風で髪がなびき、前髪が崩れる。
その光景を見て何かを思い出したのか、イロハは俺に尋ねた。
「ねぇ、マーちゃんってどんな能力を持っていたのかしら。」
俺は迷いながら、答える。
「えぇ……よくわかんないよなぁ。聞いてないし。」
「今、聞きましょ」
「え?」
つい、動きが止まった。
今聞くって……どうやって?
その問いを口に出す前に、彼女は俺を指さした。
「レンの持っているスマホで、マーちゃんに電話したらいいと思うの。」
俺は、ポケットに入ったスマホを手に取ろうとしたが、寸前で止めた。
いや、マーちゃん大人だし、仕事かもしれないのに。
イロハにもそれを説明したが、「出なかったら後日連絡するから。」と言って聞かない。
聞いて、何になるんだ?
結果、押しに負けて、通話を開始した。
耳に当てて、コールを聞く。
ワンコール、ツーコール。
出たのは、ちょっと早めのスリーコール。
途切れた瞬間、陽気で無邪気な声が耳を痛くさせた。
『わぁ?何〜!?
珍しい、レンタローから電話なんて!!』
「うっわ、うるせ!」
耳からスマホを遠ざける。
かき氷を一気食いした時の、こめかみの痛さ。
すると、イロハが俺の手から、有無を言わさずスマホを奪い取り、耳に当てた。
「失礼、マーちゃん。あなたの観測者としての能力は?」
『え?ハーちゃん!?なになに、急に。』
俺は焦って、「ちょっと!せめてスピーカーにしてくれ!」と叫んだが、聞く耳持たず。
「解答によっては、手伝って。」
『んえー?それ、ヒトに頼む態度?』
俺は無理やりイロハの手首を掴んで奪い返すと、急いでスピーカーモードに切り替えた。
「あ、ちょっと……」
イロハが目を細めてこっちを見るけど、ちょっとって言いたいのはこっちだ。
マーちゃんは、戸惑っているように声を漏らしていた。
それを無視して、俺も「教えて欲しい」と頼んだ。
言うと、マーちゃんは「え?なに、なんで?」とオドオドしながら、何とか答えようとしてくれた。
『えっと……能力は三つあってね?鞭を生成する能力。これは戦闘時によく使う。
もう一個は、姿を消す能力。でも攻撃を無効化とかできないから、傷を負ったら解除されちゃう。
最後は……情報読み取り。
相手を見ただけで、名前も過去も、全部わかる。
……これでいい?』
腑に落ちた。
なるほど、だから初めて会った時に、急に現れて、人の名前を知っていたのか。
「理解したわ、じゃあ、次。」
『え、待って。どういう目的。』
イロハは、自分の問いだけを発す。
マーちゃんのことは、一旦無視。
「魂だけ見ても、情報を読み取ることは可能?」
その時、俺は何となく察した。
無意識に、イロハの腰にある剣の方を見た。
イロハの剣は特殊なもので、母親の魂がこもっているとか。
……さすがに、無理じゃないか?
『んー、無理……かな。
魂って言ったって、肉体……特に脳があるから魂って機能するの。
機能していない、つまり生きていないって判断されて、能力は使えないね。
ーーあ!わかった、ハーちゃん。
ハーちゃんの持ってる剣の中の魂……お母さんのことを知りたいの?』
瞬間、イロハは唾を呑み込んで、数秒黙った。
でも、すぐに口元に弧を描いた。
「ご明答よ。でも、今はそれはいいわ。
ありがとう、教えてくれて。」
『いーやいや。大丈夫よ!』
本がめくれる音が、響く。
——が、その音が、ふっと止んだ。
代わりに、マーちゃんの声が落ちてくる。
少し低めの、真剣な声。
『ねぇ……今、どこにいるの?』
どうやら、俺たちが危険な場所に足を運んでいることに、気がついたらしい。
間髪入れず、問い詰めてくる。
『まさか……アンタたち……命知らずなことしてるんじゃないでしょうね?』
「あ、はは……。」
背中に、嫌な汗が滲む。
電話越しに、ため息が聞こえた。
そして、説教垂れる母親のように、グチグチ始めた。
『アンタたち、アホ?
いや、アホだ。前に殺されそうになったくせに、懲りずにそんなことばっかりして。
もう、助けてあげないよー?』
わざとらしい口調。
こういうこと言う人は、大体何かあったら助けてくれる。
……そう思って甘えるのは、ダメだけども。
そんな時に、ふと、空気が重くなった気がした。
浮いているはずの本が、なにかに怯えるように床にどさどさ落ちる。
まるで、「ここから逃げろ」と言われたみたいに。
その衝撃で、ほこりが舞う。
その音に、マーちゃんが反応した。
『ねぇ、他にヒト、いる?』
「いや……二人きりだけど?」
『そ?じゃあ振り返ってみて。
ーー絶対、電話切らないで。』
その言葉を聞いた時、全身に嫌な予感が漂った。
未来予測でも、直感でもない。
もっと原始的なものだ。
振り向きたくない。
でも、振り向かないという選択肢も、もうなかった。
「ここにいるはずの何か」が、
いつの間にか、増えている。
視界の端が、わずかに歪んだ。
心臓が、一拍遅れて鳴る。
理由なんて、どうでもよかった。
俺は、確信に近い嫌悪感に突き動かされて、
後ろを振り向いた。
書架の隙間。
人影が、立っていた。
いや、
さっきまで、そこに「何もなかった」はずなのに。
綺麗に編まれた黒髪の三つ編み、血の池のように紅い瞳。
真っ黒なワンピース、フリフリの裾。
優雅なご令嬢を思い浮かべる立ち振る舞い。
背丈は小さく、俺たちを見上げているはずなのに、こっちが見下されている気分。
なんで、こいつが来たのに、未来予測が発動しなかったんだろう。
俺の人生を壊した人物。
もう一人のイロハ。
イロハは、「え……?」と心底驚いている様子だった。
歯を食いしばって、眉を八の字にすると、剣の柄に手をかけた。
俺は電話を繋いだまま、少女の名前を呼んだ。
「リアス……」
彼女の名前を呼ぶと、不気味に微笑んだ。
小悪魔的な、全身の毛穴が開きそうなくらいに怖い笑顔。
リアスは胸元に手を当てて自信満々に姿勢を正すと、右手をイロハと俺に差し伸べた。
電話越しで、マーちゃんが「こうなる可能性があるから、忠告したのに……このアホたち!」
と小さく叫んだ。
リアスは、くすくす笑い声を漏らすと、まるで当たり前のことのように、こう言い放ったのだった。
「あなたたち、少し踊らない?」
第二十四の月夜「籠の中の小鳥たち」へ続く。