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「いーくん、おはよう」
その声の持ち主ウェールズがそう言って手を握る。しかし言われた本人イギリスは応答しなかった。
唇は青く変わり手足は冷えていた。目もぼんやりとだけしているようである。
「いい天気だよ。カーテンと窓開けるから太陽の光を浴びよっか」
「,,,,,」
「明日から会議があるらしいから、俺行ってくるからね。何かあったらすぐにベルを鳴らして。フランスか誰かがくるだろうから」
そして頭を撫でていた手で前髪をガッとあげておでこに軽くキスをする。
「大好きだよ兄弟」
そして出ていった。
屋敷はまるで住人がいないかのように静かであった。いるはずの主人はもう気配すらなくなっていたのだ。
やがてときは夜を迎えようとしていた。
冬がきたイギリスでは雪が降り一日中曇っていた。その冷気はイギリスの部屋の中にある大きな窓に湿気を張りポツポツと床に雨粒を落としていっていた。
「,,,あ、そういや、今日は,,,,,会議の準備で,,,アルフレッドが,,,」
アルフレッド
そう口にした途端何かが自分の中で動いた気がしてベッドからすぐ様に動きたいと思ってしまっていた。案の定、やせ細った体だ。動けるはずもなく床に倒れ込む。たった35センチほどしかない床との距離すら今のイギリスにとっては高所なのだ。そして冷たい床を感じながら目を閉じようとしたときだった。
「イギリス」
アメリカだった
「,,,,,,ア 」
「そうだよ、俺。なんでベッドにいないんだい。体調、悪いんだろ?連れて行ってあげるよ」
「な、んで,,,今,,,ここに」
「,,,ウェールズとスコットが一気に会議を終わらしてったよ。そのあと北アイルが来たから聞いたけど、今日あの人たちは忙しいんだってねその」
「引き継ぎで」
「,,,あぁそうなんだ」
いつになく静かなアメリカを見て少しだけイギリスは微笑んだ。
「何がおかしいんだい」
「いや?いつも元気なお前が、こんなにもしゅんとしてるだなんてな」
「失礼だな!,,,疲れたんだよ」
ふと、アメリカの目元を見ればクマの色は染み付いていた。きっと、この日のために仕事を急速に終わらせてきたのだろう。
「そうかなら寝てればいい」
「え?」
「ほらこっちこい」
「うわっ」
ポスンとアメリカの後頭部に手をおき、イギリス自身の胸元に引き寄せた。
「ほらこうすりゃ寝れるだろ」
「ちょ、ちょっと。俺は」
「お前の恋人の胸だろ。いつも通りの」
「,,,」
「まだ俺は寝ないから。お前が起きるまでまだ起きててやるから」
「,,,絶対だよ」
「分かってる」
「イギリス!」
「アメリカ、お前まだ授業が,,,」
「もう帰っちゃうの,,,?」
「,,,ごめんな。本国で問題があったらしい。少し早めになったが帰らなくちゃな」
「ねぇ!そしたら俺も、連れてってよ!」
「,,,うーん」
「俺たくさん勉強したよ!船乗りのジェームズにも教わった!だから、イギリスの足手まといなんかにもならないから。ね?,,,ね、だから」
「また来るから」
「,,,ねぇ」
「お前がもう100回太陽を見た時、それか100回目を閉じて起きた時にまた俺はいるから。」
「,,,アーサー」
「分かってる。お前も頑張ってるんだもんなぁ。俺が1番近くで見てきたんだから、当たり前に知ってるよ。だからさ」
「お前はまだこっちに来たらダメなんだ」
「アーサー!!」
飛び起きたアメリカはすぐに右斜め下を見た。そこには穏やかな顔をしている恋人がいる。
「なんだよ、悪夢でも見たのか」
「,,,,,,いいや」
「じゃあ驚かすなよ。せっかく本を見てたんだからな」
「俺はもう起きたからそのメガネ返して」
「えぇ?まだ寝てろよ。そんなに時間も,,,」
「,,,,,,もう5時間も経ってるじゃないか。しかも明朝の3時。もうすぐ朝日が登ってしまうよ」
そしてイギリスの額にかかっているメガネをとってつけた。そしてそれをまた愛しそうに見る。
「やっぱりお前はメガネが似合ってるよ」
「そりゃどーも」
「,,,なぁ暖炉のほう、連れてってくれないか」
パチパチと音を立てる暖炉に指を向けた。もう力がないために布団に手を置いたまま示した方角だったがアメリカはうんとうなづいて抱えた。
「,,,ほんとうに君はいつも手が冷たい」
「寒いからな」
「尚更あっちに行かないとダメだね」
そして大層な椅子に座らせる。フカフカでも固くもあるその椅子にゆっくりゆっくりと下ろしてブランケットを膝にかけた。そしてアメリカはその横にあるまた同じような椅子に座る。
その部屋にはその2つの大層な椅子と窓に向かって置いてある椅子の3つしかない。
2人はただ黙って暖炉を見つめていた
パチパチという音が弱まり、少し部屋の明るさが落ちたことでアメリカは薪を手に取り入れる。そして再び火は燃え上がりその火はメガネに反射していた。用事を終え、椅子に座った瞬間にイギリスは口を開いた。
「もう時間だ」
ポツリと呟いたがアメリカは何も反応を示さない。まだ暖炉を見つめていた。だがイギリスもアメリカが反応することを期待に含めていない。
「俺が消えたら、悲しんでくれるか?」
「,,,分かんないね」
「それでこそ、お前だ。,,,,,,なぁこっちに来いよ」
「うん」
イギリスの座る椅子付近に膝をつきそしてアメリカはイギリスの顔を見た。そしてそれを感じ取ったイギリスもアメリカの顔を見る。そのアメリカの顔には暖炉の火ではなく朝日が照っていた。
「朝が来る」
「うん」
「やっと、眠れそうだ」
「そうかい」
「アメリカ」
「うん」
「アルフレッド」
「なんだいアーサー」
アルフレッドの頬に手を添える。そして満足そうに頬を緩ませたかと思えばゆっくり、ゆっくりとアーサーは目を閉じた。
アルフレッドの頬から崩れ落ちそうになったアーサーの手をしっかりと握る。そして立ち上がり少しだけ屈んでアルフレッドはアーサーの顔に近づく。
もう、冷たかった。
そしてまたゆっくりと床に座り込んでアーサーの手を両手で握り返す。
「Good night.Please have a kind dream.」
屋敷には誰もいない。降り積もる雪に誰かの足音がしていた。