鋼谷と五条の激闘が続く中、空気が重く淀み始めた。戦場に不気味な波動が広がり、空間そのものが歪むような感覚に包まれる。
「……この感じ、まさか。」
五条が表情を引き締め、視線を遠くへ向ける。
すると、裂けるように空間が割れ、その中心から一人の男が現れる。肌には呪符のような文様が刻まれ、両目には狂気と知性が交錯した光が宿っていた。
「久しいな、五条悟。」
現れたのは、呪いの王・両面宿儺。その存在感はただそこにいるだけで鋼谷を圧倒し、五条でさえも僅かな警戒を露わにする。
「……なんだこいつは。」
鋼谷は宿儺の姿を見つめながら、その威圧感に息を飲む。異能の力を駆使してきた彼でさえ、この存在には手が届かないことを直感的に悟った。
「宿儺だよ、異能使い。呪術界では最強の術師として知られている存在だ。」
五条が短く説明するが、その声には普段の余裕が欠けていた。
宿儺は不敵な笑みを浮かべながら、二人を見回した。
「人間たちよ。お前たちの力比べには飽きた。俺が少し、場を盛り上げてやろう。」
その言葉と共に、宿儺は軽く指を動かす。すると、その場の空気が切り裂かれるような音を立て、地面が深く抉れた。
「遊び半分の一撃でこれかよ…!」
鋼谷は歯を食いしばりながら後退する。
「宿儺、ここに現れた目的はなんだ?」
五条が冷静に問いかける。
「目的?そんなものはない。ただ、お前たちの戦いを見ていたら、久しぶりに腕を振るいたくなっただけだ。」
宿儺は淡々と言い放つ。その気まぐれな態度に五条は僅かに眉をひそめた。
「俺とやるつもりか?それとも、こいつを狙うのか?」
五条は鋼谷を指差す。
「どっちでもいいさ。お前たち二人をまとめて相手にしてやってもいい。」
宿儺の言葉に、場の緊張がさらに高まる。
次の瞬間、宿儺が両手を広げると、周囲の空間が黒と赤に染まり始めた。
「領域展開――『伏魔御厨子』!」
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