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「ねぇ、ジュース買ってきていい?」
「いいよー」
夕方。
シェアハウスでのんびりしていた空気の中、ゆあんくんが立ち上がる。
「俺も行く」
うりがついていく。
「じゃあ俺も」
もふくんも静かに立ち上がった。
「いってらっしゃい」
のあさんが手を振る。
外に出ると、少しひんやりした風が吹いていた。
「夜ってちょっと涼しいな」
「だな」
うりとゆあんくんが軽く話す。
その横で、もふくんは静かに歩いていた。
コンビニはすぐそこ。
——のはずだった。
「おい」
低い声が、後ろからかかる。
「……?」
振り向くと、数人の男が立っていた。
どこか、嫌な雰囲気。
「こんな時間にガキがうろついてんじゃねぇよ」
絡んできているのは明らかだった。
「え、なに……」
ゆあんくんが戸惑う。
「別にいいだろ」
うりが一歩前に出る。
その瞬間。
「やめとけ」
もふくんの声。
静かで、低い。
「……もふ?」
うりが振り返る。
でも。
「関わらない方がいい」
はっきりとした言い方。
「でも——」
「いいから」
短い一言。
その声には、逆らえない何かがあった。
「……ちっ」
うりは小さく舌打ちして、引く。
「は?なんだよ逃げんのか?」
男が笑う。
その瞬間。
「……」
もふくんが、前に出た。
「帰ろ」
ただ、それだけ。
声を荒げるわけでもない。
睨むわけでもない。
なのに——
「……あ?」
男たちの動きが止まる。
「……」
もふくんの目。
感情がない。
冷たくて、静かで。
ただ、そこにあるだけなのに。
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「……なんだよ」
さっきまでの威圧が、少し揺らぐ。
「行こ」
振り返らずに、もふくんは言う。
そのまま歩き出す。
「……あ、うん」
ゆあんくんが慌ててついていく。
うりも無言で続く。
後ろから、何も言われなかった。
——いや。
言えなかった、のかもしれない。
―――
少し離れたところで。
「……なんだったんだよ、今の」
うりが小さく呟く。
「……」
もふくんは何も答えない。
「もふくん……」
ゆあんくんが不安そうに見る。
「大丈夫?」
「うん」
すぐに返ってくる、いつもの声。
優しい笑顔。
「何もないよ」
でも。
「……」
さっきの光景が、頭から離れない。
何もしてないのに。
ただ立っていただけなのに。
「(なんであんなに……)」
「帰ろっか」
もふくんがそう言って歩き出す。
その背中を見ながら。
「……」
うりが、少しだけ目を細めた。
「(やっぱり……)」
小さく、息を吐く。
「変わってねぇな、もふ」
その呟きは。
誰にも、聞こえなかった。