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「ただいまー」
玄関のドアが開く。
「おかえりなさい」
のあさんが顔を出す。
「遅かったね」
ヒロくんも時計を見ながら言った。
「ちょっとな」
うりが軽く答える。
「……なんかあった?」
ゆあんくんの表情を見て、のあさんが少し心配そうに聞く。
「いや、その……」
言いかけて、止まる。
ちらっと、もふくんを見る。
「……」
もふくんは、いつも通りの顔で靴を揃えていた。
「なんでもないよ」
にこっと笑う。
それを見て。
「……うん」
ゆあんくんも、それ以上は言わなかった。
―――
リビング。
みんなが集まって、のんびり過ごしている時間。
テレビの音と、ゆるい会話。
「ねぇ、さっきの話だけど」
ヒロくんが静かに口を開く。
「外で、何かあったんですか?」
「……!」
ゆあんくんが一瞬だけ反応する。
「いや、別に」
うりが軽く答える。
「ただ、ちょっと絡まれただけ」
「え、それ大丈夫なの?」
のあさんが驚く。
「平気平気」
うりは笑う。
「な?」
もふくんに視線を向ける。
「うん。何もなかったよ」
即答。
迷いのない声。
「……」
ヒロくんが、少しだけ目を細める。
「でも」
静かに続ける。
「ゆあんくんは、少し違う反応でしたよね」
「え、いや……」
言葉に詰まる。
「……」
視線が、自然ともふくんに向く。
でも。
「大丈夫だよ」
また同じ言葉。
「もう終わったことだから」
優しい声。
安心させるような笑顔。
それ以上、何も言わせない空気。
「……そう、ですね」
ヒロくんはそれ以上は追及しなかった。
でも。
(隠してる……?)
その考えが、頭をよぎる。
―――
その夜。
リビングの電気が少し落ち着いた頃。
「……なぁ」
うりが小さく声をかけた。
「ん?」
もふくんが振り向く。
「さっきのさ」
少しだけ、真剣な目。
「完全に抑えてたよな」
「……」
一瞬の沈黙。
「……何のこと?」
もふくんは、とぼける。
でも。
「俺にはわかる」
うりは笑わない。
「お前、ああいうの慣れてるだろ」
「……」
もふくんは、何も答えない。
ただ。
「……もうやらないって決めたでしょ」
静かな声。
それは——
自分に言い聞かせているようでもあった。
「……あぁ」
うりが小さく息を吐く。
「分かってるよ」
軽く笑う。
「でもさ」
少しだけ、目を細めて。
「完全には消えてねぇよ」
その一言。
「……」
もふくんは、何も言わなかった。
ただ少しだけ。
目を逸らした。
―――
その様子を。
廊下の影から。
「……」
ヒロくんが、静かに見ていた。
(やっぱり……)
確信に近いものが、胸に残る。
「(この2人、何かある)」
その“何か”は、まだ分からない。
でも。
確実に——
普通じゃない。