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最近、俺の恋人の様子がおかしい。やたらと俺のスケジュールを気にしてきたり、柄にもなく落ち着かない様子を見せたりする。
詳しく思い出すと―――
❤)「ねぇ、明日のスケジュールってどんな感じなの」
💙)「明日は……朝からバラエティの収録だから7時には家出る」
❤)「……朝からね。わかった」
こんな感じの会話が多かったり、
💙)「そういえば、涼太宛の荷物届いてたけど」
❤)「えっ? ねえ、それどこ? まさか開けてないよね……?」
💙)「開けてない、部屋にそのまま置いといたけど」
❤)「そう、ならよかった。ありがとう」
こんな態度を取られたり、
💙)「今日なんかゆるくね?」
❤)「……自分で準備したから」
みたいなことがあったり。とにかく、普段とは様子が違いすぎる。
本人に聞けば済む話なのかもしれないけれど、俺は一抹の不安が頭によぎって涼太に問うことができずにいる。
その不安の正体とは、浮気だ。
違う、涼太のことを信じていないわけでも疑いたいわけでもない。ただ、世間一般的に、異質な恋人の行動や言動を考えた時に当てはまるのが、浮気というだけで。
それに、俺の恋人は多分、堕そうと思えばどんな相手だって簡単に堕とすことができる。それだけ魅力的で、高嶺の花のような男なのだ。まぁ俺が一番涼太を幸せにできる自信はあるけど。
そんなこんなで俺の中では浮気の可能性がもくもくと膨らんでいくばかりなのだ。
このことについて悩み始めてもう二週間が経っている。
そろそろ俺も決心がつき、明日、この疑いを確かめようと思う。
時刻は午後7時を回った頃。数時間前に帰ってきた涼太とともに夕飯を食べている。正直、味覚は俺から確実に遠のいている。なぜなら今から聞かれるであろう質問から、仕掛けが始まるというのだから。
普段通りに手が動かせているのか自分自身でもわからないままに咀嚼を続けると、例に漏れず今日も涼太は俺に問いかけた。
❤)「ねぇ翔太、明日の予定って」
💙)「明日は9時頃に出る予定。夜まで予定入ってるから、帰り遅くなるかも」
❤)「収録?」
💙)「そう、番宣でいろいろあって」
嘘を吐いた。今日と明日、俺は完全オフだ。こう言っておいて一度家を出たあとに静かに戻ってきて、涼太が何を隠してるのかを確認する予定。
幸い上手く嘘がつけたようで、涼太が疑っている様子は全くなかった。
「明日はオフだから、俺はもう少し起きてる」と言う涼太をリビングに残して、俺は布団へ潜り込んだ。
時間が経つにつれて、心は確実に落ち着きを欠いていく。もし本当に浮気だったらどうしよう。そんな考えがほんの少しだけ脳裏に潜んでいるからだ。
大丈夫だ。俺の涼太は浮気なんてする男じゃない。それは幼馴染で恋人の俺が一番よく分かってる。そう自分自身に言い聞かせるように反芻しながら、俺は眠りについた。
💙)「それじゃ、行ってくる」
❤)「行ってらっしゃい、頑張って」
いつも通りに目覚め、朝食を取り、ウソの身支度を終え、今、家を出たところだ。
家へ戻ってくるのは数十分後くらいがちょうどいいだろう。そう思い、一旦俺はこの場を離れることにした。……浮気相手と出くわしても、困るし。
時間を潰すために最寄りではなく、一つ遠くのコンビニで適当に買い物をした。
かごを手にして一番脇の通路を進んでいく。ふとゴムが目に入り、もう残りが少なくなっていたことを思い出した。最近、身体を重ねる頻度の割にゴムの減りが早い。……違う。きっと気の所為だ。
気を紛らわせるようにそのまま置くへと進むと缶ビールや酒類が目に入り、酒好きの恋人のために数本をかごへ入れた。
ちゃんと稼げるようになって、高い酒が飲めるようになっても、俺達は普通に缶ビールを飲む。案外そういうもんだ。
会計を済ませて適当に寄り道をしながら帰路につき、エレベーターに乗りながら時計を確認した。ちょうど四十分が経過していた。よし、作戦通りだ。
もし普通に何も起こってなんてなくて、全て俺の気の所為だったとしたら「撮影は延期になった」と言って、涼太と心地よくオフの日を過ごせばいいだけ。それだけだ。
静かに鍵を差し込み慎重に回して解錠しドアを開ける。よかった、いない。玄関先で涼太に出くわす、という最悪なパターンはとりあえず回避することができた。
玄関に並べられた靴はさきほど家を出たときのまんまで、知らない男の靴があるなんてことはなかった。それに気がついた途端、高まりすぎていた心拍数が落ち着いていくのを感じた。
ほら、涼太は浮気なんてしてない。自分自身を咎めるようにそう心のなかで言いながらも、同時に一つの疑問が浮かび上がった。
『じゃあ、なんであんなに様子がおかしかったの?』
自分の中に答えは持ち合わせておらず、ただ足音を出さないように静かに、その理由を確かめることしかできなかった。
リビングに到着したものの、ここにも涼太の姿はなかった。え、もしかしていない? いや、さっき玄関に涼太の靴があったから……いやあの人、普段使いする靴が何足もあるんだった。
一人で出かけている可能性なんて脳内には微塵もなく、「なんだ」と気が抜けかけたその瞬間、なにやら物音のような人の声のようなものが微かに耳を掠めた 。
そして聴覚はそれを捉えて離さなかった。なぜならその音は、寝室の方向から聞こえてきたから。
寝室へと近づくにつれて、浮かぶ疑問に答えが返ってくる。
聞こえてきたのは確実に人の声。声のもとはこの家の寝室。声の主は紛れもない俺の恋人。
とくとくと、静まっていたはずの心拍数が再び急上昇していく。やけに乾いた喉に挑発されるように唾を飲み込んだ。
ここに、涼太がいる。疑いから確信に変わったその事実に僅かな緊張を抱えながら、俺はバレないように僅かに扉を開けた。
❤)「ん、ん゛ぅっ、ぁ、っふ、ぅ゛、あっ゛」
💙)「(……え???)」
寝室には電気がついておらず、窓から差し込むはずの陽の光もカーテンで遮断されていた。暗所に慣れた視界が次々と状況を捉えていく。
床に散乱しているのは今朝纏っていた洋服たち。
ベッドから追いやられるように落ちかけている布団の類。
ぐしゃぐしゃに乱れたシーツ。
その上には、後孔に手を伸ばし熱を孕んだ声を漏らしながら身体を震わせている恋人。
あ、え、これ、見ちゃいけないやつだ。
普段から何度も身体を重ね、互いを求め合っているというのに咄嗟にそう思ってしまった。
聞こえてくるのは欲にまみれた扇情的な吐息と、我慢しかねて漏れ出てるであろう上ずったような情けない声。
へこへこと荒ぶる身体によってマットレスの軋む音。そして、バイブのような機械音。
冷静なのか熱っぽいのか分からない俺の頭は、なぜか冴えていた。
💙)「(浮気でもなんでもなく、玩具で一人遊びねぇ……?)」
異様すぎる状況に目眩がするほど混乱しながらも、身体は確実に熱をもっていった。
かわいい。はやく触れたい。そう思いながらも、今の光景をまだ味わっていたくもあった。
俺とするときは「表情を見られるのが恥ずかしいから、やだ」と言ってバックでしかやらせてくれないのに、今は仰向けになって快楽に溺れている。
いつも手の甲で塞いでしまう嬌声も、相変わらず控えめではあるもののダダ漏れになってて、なんというか……エロい。
どうせ涼太のことだから一人で何かしら考えた結果のこれなんだろう。昔からそういうところがあるから。そんな少し不器用なところが、愛おしくて仕方がない。
思考にふけりながらも、目が乾くことを気にもせず瞬くことなく凝視していると、限界に近くなったのか突然、涼太は幾分か大きな声を出した。
そしてその言葉に目を見張り、誘われるように部屋の中へと踏み入れた。
あー、もう無理。俺もう限界。
❤)「ん゛、んぁ゛っっあ゛、しょっ、た……」
💙)「なぁに、涼太」
❤)「……ぇ」
動揺のままに目を見開き半開きの口のまま急いで電動ディルドのスイッチを止めた涼太の表情には分かりやすく絶望が浮かんでいた。
あーマジでかわいい。大人になってからはポーカーフェイスしてばっかりだけど、出そうと思えば全部顔に出るもんな、涼太。
もともと色白な肌からより一層血色が抜けていく様を俺はまじまじと見つめた。
わなわなと震える口からはなんの言葉も出てこず、綺麗な瞳は右往左往と泳いでいる。
💙)「ねぇ、涼太。ひとりで何してたの」
❤)「し、しょうた……ちが、」
💙)「あぁ、別に怒ってないから。ただ、涼太なりに色々考えてのことなんだろうと思って聞いただけ」
怖がらせないように優しい声を意識しながら俺は涼太に近づき、挿れたままのディルドを焦らすようにゆっくりと抜き取った。ん? なんか、既視感があるような……まぁいいか。
いつも通りの位置にきた涼太の手によって、聞こえてきた甘い声はくぐもっていた。懸命に顔を背けて、目線を合わせないようにしている。……可愛すぎんだろ。
❤)「……た、翔太、最近忙しそうだったから、したくても、その、っできなくて、寂し、くて」
語尾に近づくにつれて落ちていく声量すらも愛おしい。
ほら、やっぱりそういうこと。玩具なんて持ってもいなかったものに手を出して、俺には迷惑をかけまいと自分の欲を一人で満たす。
好きで仕方がない恋人にそんな健気なことをされて、理性を保てる男がどこにいるというのか。
💙)「涼太、寂しくさせてごめんね」
❤)「……引いた、?」
💙)「何言ってんだよ」
起き上がっていた涼太の身体を押し倒してベッドへと沈ませながら、何かに急かされるようにして唇を重ねた。いつもなら固く閉ざされてる涼太の口内に今日はすんなりと入れてもらえた。
それだけではなく、こわばった身体をほどかすように巡らせていると向こうから舌を絡めてきた。
💙)「(こいつ……)」
💙)「りょーた、かわいいよ」
❤)「ん、ふっ、、ん、んっ゛っんぁ」
閉じていた目を開くと目蓋はぎゅっと閉ざされていて、血色が抜けていた肌には暖色が灯され始めていた。
ゆっくりと唇を離すと名残惜しそうに絡み合っていた舌が解けて、体温と欲が体内で静かに増していった。
露わになった涼太の瞳を逃さないように見つめて、俺は意地悪するように問いかけた。
💙)「涼太、こんなただの玩具と、俺の、どっちがほしい?」
❤)「っ、言いたくない……」
💙)「んじゃ、これでいいわけ? 別に俺はそれでm……」
言葉を言い終えるよりも前に、突然胸ぐらを掴まれたように引き寄せられ、気がついた頃には再び唇が重なっていた。
そして微かに眉間に皺を寄せながら、潤んだ瞳で言われた。
❤)「っ翔太のがいいに決まってんだろ、、ばか」