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偉猫伝~Shooting Star

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偉猫伝~Shooting Star

14 - 第14話 過ぎ行く日々は溢輝が如く⑤

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2025年06月02日

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――貴公等に一つ、真実を言っておく。勘違いしている輩も多いが、猫とは非常に慈悲深い生き物なのだ。



すました態度は仮の姿。母猫が良い例だろう。



我が子を護る為なら、あらゆる己が犠牲も惜しまない。



人間の痛々しいニュースを見る度に、常々遺憾に思う。我等の母性本能が人間にも在れば(無いとは言わない、欠けている感がするだけだ)、少なくとも反論理的な事件は減るだろう。



オレとてそうだ。雄だがな……。誰かの為に悲しむ事が出来る。母性(何度も言うが雄だ)とは素晴らしい事じゃないか?



つまり、猫最高――














――済まんな、所々話が脱線して。オレも辛いのだ、この先の事を語るのは……な。



単にこの事実を“無かった事”にしようと、都合良く思い込みたいだけなのかもしれないな。



ただ、これは紛れもない事実であって、オレの猫生に於いて、ターニングポイントになったのもまた確か。



『あれ? 確か、取るに足らない出来事って言ってなかったっけ?』



……中々鋭い指摘だ。間違ってはいない。



だがよく覚えておけ。猫の気持ちは常に“鏡”なのだ。



表裏一体で在りながら、真実は常に心の中。表に出す事は無い。



……酔うたな。これもマタタビの効果か?



今宵はやけに口が軽い。貴公等にとっては、正に思う壺であろうが――

















ならもう少しだけ……オレの話を聞いてはくれぬか?



************



さて、どこまで話したかな。そう、シロとの最期の時の事だった――



『ちょっとシロ!?』



黄昏時に響き渡る“オレ達以外”の声。



そうなのだ。どうしようもなく立ち竦んでいた時に聴こえたその声は、紛れもない女神のもの。



振り返ると、青ざめた表情で駆け寄って来る女神の姿があった。その傍らには、アイドリング状態にある翡翠色の軽自動車。女神の愛車だ。



その瞬間、オレは全てが氷解した。カラスが撤退した本当の理由を。



奴はオレに気圧された訳ではなかった。女神の御帰還に身を退いたのだ。



つまりはタイミングが一瞬でもずれていたら、オレも今頃はこの世に居ないという事に。



女神御帰還に気付かなかったのは、何もオーヴァーレブ状態のせいだけでは無い。



目の前の事実、それ程迄にオレは気が動転していたのだ。



そして――



『シロ? シロ!?』



オレ等の下に駆け寄った女神は、既に動かないシロの小さな亡骸を抱き上げる。



よりにもよって、一番知られたくない人に……。



『いやあぁぁぁぁぁ!!』



これまで聞いた事のない、悲痛な絶叫が響き渡る。空の茜色がまた、無常なまでに哀愁を漂わせていた。


彼女の受けた衝撃が、どれ程のものだったか。そしてそれを目の当たりにして尚、何も出来ぬ自分が。



この時のオレの心境は、誰にも分かるまい。



大切な二つのものが、同時に失われた瞬間だったと――あの時、そう思った。



************



シロの葬儀は、その日の内に執り行われた。



最初に旅立った兄弟の隣へ、シロは永遠に眠る事となった。



最も可愛がられていたシロの突然の死は、女神以下全員の感情を揺り動かしていた。



それだけ一緒に過ごした期間が濃密だったのだ。これ以上の哀しみは、もう無いだろうな。



最期を見送るのを目の当たりにして、オレは改めて思ったものだ。命の儚さに……。



オレ達兄弟の中で、最も長生きすると思われたシロ。



オレの猫生は太く短く。雄はそれでいいのだ。



こんな時代だ。雄の命は短い。



だがシロは違う。雌には子を産み、次世代へと引き継ぐ役目が在る。猫達の命の物語を――



無常の世を憂いながら、沸々とオレの中に生まれいずる感情。



それは行き場の無い“怒り”だった。



オレが……オレだけが生き残ってしまった。



ぶつけようのない怒りは、声無き声となって満天の夜空へと消えていく。



だがこれで絶望してしまっては意味が無い。報われないのだ。



限り在る命を、心半ばに散った兄弟達の分まで生き抜く事が、オレへの使命。そして唯一の弔い。



だから天国なんて信じないが、天国から見ていてくれ兄弟達よ。














――そう。オレが最後の最後迄、生き抜く事を決意した日の事だった。

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