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電話を切ったあの日から、ないこは変わった。
いや──もしかしたら、ずっと変わるきっかけを探していたのかもしれない。
連絡をしても返事は返ってこない。
仕事に現れても、最低限の指示だけ出して、すぐに姿を消す。
笑顔を見せなくなった。
メンバーと目を合わせなくなった。
──あの時の叫びは、嘘じゃなかったんだ。
みんな、痛いほどにそれを思い知らされた。
赤
「……ないくんに、ずっと甘えてたんだ」
リーダーだから、強いから、大丈夫だろうって。
でも、ほんとは一番無理してたのに。
あの電話の声が、ずっと耳から離れない。
泣きながら「羨ましい」「憎い」って吐き出したないくんの声が。
謝りたい。
でも、目を合わせてもくれないんだ。
水
「僕……最低だ」
ないちゃんのこと、心配するより先に責めた。
いふくんのことばっかりで、ないちゃんが熱出してるのに……
「なんで来ないの」なんて言葉、どうして言っちゃったんだろう。
今さら「ごめん」なんて言っても、届かない。
届かない顔をしてる。
僕のことなんて、もう信じてない顔をしてる。
紫
「……僕、ホンマにアホや」
ないちゃんがどんだけ背負ってきたか、知ってたはずやのに。
見て見ぬふりして、まろちゃんばっかり庇って、ないちゃんを突き放した。
電話口で叫んどったやろ……「俺だって無理してきた」って。
あん時の声、夢にも出てくる。
あんなに泣き叫ぶリーダーを、なんで見過ごしたんや。
青
「ないこ……」
俺のせいや。
俺が倒れたから、ないこが壊れた。
いや、もっと前から壊れてたんやろうけど……
俺が一番、トドメを刺したんや。
ずっと守られてたんは俺の方やった。
ないこは俺を守りながら、自分を壊してたんや。
今さら気づいても遅い。
どんだけ呼んでも、もう笑ってはくれへん。
黄
「……ないこ」
お前はもう、俺らから離れていこうとしてるんやろ。
あの日の電話で、全部終わったんやな。
リーダーに甘えて、押しつけて、気づいたら大事なもんを失っとった。
俺らのせいで、お前の心を閉ざさせてしもうたんや。
悔やんでも、悔やんでも……もう戻らん。
ないこは笑わない。
近くにいても、どこか遠くにいるようで。
触れようとしても、氷のように冷たい壁がそこにある。
残されたメンバーの胸に残るのは、
「気づくのが遅すぎた」
という後悔だけだった。