テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
くるみ_226
231
第15話 休日の約束
「いただきます。」
テーブルには、焼き鮭、肉じゃが、ほうれん草のおひたし、それから豆腐とわかめの味噌汁が並んでいた。
仁人が手際よく作った夕飯。
勇斗は焼き鮭をひと口食べると、思わず顔がほころぶ。
「おいしい。」
「よかった。」
仁人もほっとしたように箸を動かす。
「肉じゃがも最高。」
「……ありがと。」
「やっぱり仁人の料理が一番落ち着くな。」
「また褒める。」
「本当だから。」
仁人は照れ隠しに味噌汁を飲む。
その様子を見た勇斗は、くすっと笑った。
◇◇◇
食後。
2人はソファでのんびりしていた。
雨はいつの間にか止み、窓の外には夜景が広がっている。
「明日、土曜日だね。」
勇斗がカレンダーを見ながら言った。
「休み。」
「うん。」
「久しぶりに予定ない。」
仁人はクッションを抱えながら答える。
すると勇斗が思いついたように言った。
「買い物行かない?」
「買い物?」
「冷蔵庫の中、だいぶ減ってきたし。」
仁人は少し考える。
「……行く。」
「ほんと?」
「うん。」
「じゃあスーパー寄って、そのあと何か甘いものでも食べようか。」
「甘いもの。」
仁人の目が少しだけ輝く。
「パンケーキ。」
「いいね。」
「……食べたい。」
勇斗はその反応がうれしくて笑った。
「決まり。」
◇◇◇
翌朝。
目覚ましが鳴る前に、仁人は目を覚ました。
時計を見る。
午前7時。
「早い……。」
休日なのに、仕事の日と同じ時間に起きてしまった。
隣を見ると、勇斗はまだ眠っている。
穏やかな寝息。
「……。」
仁人は少しだけ笑う。
「今日は休みなのに。」
起こさないようにベッドを抜け出し、キッチンへ向かった。
◇◇◇
冷蔵庫を開ける。
「朝ご飯……。」
食パンと卵、ベーコンがある。
「これでいいか。」
フライパンにベーコンを並べ、こんがり焼く。
スクランブルエッグを作り、トーストを焼く。
サラダも添えて、コーヒーとオレンジジュースを準備した。
ちょうど最後のお皿を置いたとき。
「……いい匂い。」
勇斗が眠そうな顔でリビングへやって来た。
「おはよう。」
「おはよ。」
「また朝ご飯作ってくれたの?」
「早く起きたから。」
勇斗はテーブルを見て、優しく笑う。
「ありがとう。」
「いただきます。」
2人は向かい合って座る。
休日の朝は、いつもよりゆっくり流れていた。
「今日は何時に出る?」
勇斗がトーストをかじりながら聞く。
「10時くらい?」
「ちょうどいいね。」
「その前に洗濯。」
「じゃあ俺が干す。」
「俺もやる。」
「半分ずつ?」
「うん。」
2人は顔を見合わせて笑った。
忙しい平日にはできない、ゆっくりとした朝。
そんな何気ない時間も、2人にとっては大切な思い出になっていく。
そして今日は、2人で過ごす久しぶりの休日。
どんな1日になるのか、まだ誰も知らなかった。
コメント
1件
第15話、じんわり温かい気持ちになりました。仁人が早起きして朝ごはんを作るシーンが特に好きです。勇斗が「いい匂い」で起きてくるあたり、お互いを思いやる空気がにじみ出ていて「この2人、いい関係だなあ」とほっこり。買い物とパンケーキの約束も、地味だけど特別な休日感が出ていて素敵でした。休日の朝のゆっくりした時間の描き方、とても丁寧で好きです。