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「はぁ……疲れた…」
薔薇園から帰り、食事とお風呂を終わらせて部屋に戻ると、僕は椅子に座る。
薔薇園ではサンドイッチを食べ終えた後、色んな場所に案内された。いや、正確には連れて行かれた、かな。
「好きなお料理はありますの?」
「卵料理」
「では好きな色は?」
「特に無いか」
「動物では何が1番好きですか?」
「全部好きだ」
「じ、じゃあ、す、好きな…タイプはありますか?」
「無い」
「んもう!アーロン様ってば冷たいですわ!」
「さっさと諦めて欲しいからね」
「でも…話しかけると一言でもちゃんとお返事してくれるの…う、嬉しいですわ…お優しいんですね///」
「じゃあもう返事はしないでおこう」
「もう!酷(ひど)いですわ!」
という感じで何故か少し。いや、かなり惚れられている。
どうしたら諦めてもらえるだろうか?
というか、質問が多い。
さっきの以外にも家族構成とか誕生日、趣味、特技苦手なこと、年齢等色々聞かれた。
多い過ぎて途中から面倒くさくなって適当に流していた。
「レーヌ、大丈夫?」
「大丈夫じゃない……」
「あはは…」
きっとあのやりとりを何処からか見ていたのだろうか、アモンが苦笑いする。
と思ったら何かを思いついたように手をポンッと打つ。
「レーヌ、お出かけしよう」
「もう遅い時間だけど」
外はすっかり紺色に染っている。
時計は10時を指しているため、夕食とお風呂を済ませ、着替えたのでもうすぐベットに、入ろうと思っていた。
この時間帯はよっぽどの理由がないと外出許可を得られないから面倒くさい。
アモンを無視して仰向(あおむ)けにゴロンとベットに倒れる。
うーんふかふかで気持ちいい……
いつも侍女達に洗ってもらっているので有難い…。
ベットのもふもふを堪能(たんのう)していると、不意(ふい)に僕の体がふわりと浮く。
「_っ!?」
気付くとすぐそこにアモンの顔(お面があるけど)があり混乱したが遅れて理解する。
アモンの腕で持ち上げられ横抱き__いわゆるお姫様抱っこをされていた。
「ア、モン!?」
アモンは僕を抱き、ベランダに向かい扉をすり抜ける。(空間魔法の1つを使うと、壁等の障害物を通り抜けて外の空間へ出入り出来る)
ベランダに出るとふわっとアモンが宙に浮き空を飛ぶ。
「!?」
え、え!?
突然のことにびっくりして思わずアモンの首にしがみつく。
「た、高い高い!!怖い怖い!!」
「大丈夫だよ僕がついてるしね。しっかり掴まってて」
初めてお姫様抱っこをされて恥ずかしいというのと、いのちずながないのに高い所に居る恐怖心で心臓がドキドキしている。
いや、ドクドクしてるな。震えか止まらない(怯)
「……もしかしてレーヌ、高い所ダメだった?」
「い、いや…僕高い所は山の頂上ぐらいにしか行ったことなくて…地面に足が着いていないから少し怖い……というか慣れてないから…」
「ふふ」
「…どうしたの?」
「ううん、普段は男としての君を見てるからこういう女の子っぽい所があって可愛いなぁって思って」
「か、かわ……?」
そう言われて頬に熱が集まるのを感じる。
お、女の子っぽいなんて初めて見た言われた。
生まれた瞬間から男として扱われたからな……なんだか少しくすぐったくて気恥ずかしい。
「可愛いよレーヌは、格好良くて可愛い素敵な女の子だよ」
「…あ、りがとう……」
なんて言えばいいのか分からず言葉を詰まらせてしまい、曖昧に返す。
今僕の顔タコになってそう……//
あまり見られたくなくて俯(うつむ)いていると声をかけられる。
「レーヌほら、星が綺麗だよ」
「え?」
そう言われて顔を上げると、周りには数え切れないぐらいにキラキラと輝く星々が、群青色に染まった大空に散らばっており、とても幻想的で美しい景色が広がっていた。
「綺麗……」
「ふふ、この景色を見て少しでも疲れが取れたらいいなと思ったんだ」
「あ、ありがとう…凄く綺麗で…嬉しい」
いつの間にか心配をかけてしまったようで申し訳ない。
でも、わざわざこうしてこの素晴らしい景色を見せてくれたことにとても温かい気持ちになり、笑みが溢れる。
「ねぇ、アモン」
「ん?」
「また、この景色を一緒に見れるかな?」
「うん。レーヌが望むならいつでも見せるよ」
「ふふ、ありがとう」
きっと今日見たこの星空は一生忘れないだろう。
始めは死神と聞いて上手くやっていけるか少しだけ不安だったが、それは杞憂(きゆう)に終わったようだ。
だってこんなにも優しい死神だもの。
部屋に戻り「お休み」と互いに言った僕はベッドへアモンは空間へそれぞれ入り、眠った。
その夜は今までで一番深く、気持ちの良い睡眠が出来た。
___そう、とても、とても深い。
深ーーーい眠りだった。