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顔に何か細いものが何度も当たる感触と、角を引っ張られる感覚。何が起きてる?


〈朝よノア様!起きて頂戴!外はすっかり明るいわ!〉〈”死者の実”が食べたいのよノア様!もう取ってきてあるから切て欲しいのよ!〉


今までに感じたことのない感触と感覚に意識が目覚めると、姦しい二羽のカラス達、レイブランとヤタールが私に朝を告げていた。

彼女達を撫でながら瞼を開けて身体を起こす。私よりも早く起きて採取してきたであろう、いつもの果実が目に入る。


「おはよう。レイブラン、ヤタール。少し待っていて。…はい、どうぞ」


彼女達が採取してきた果実の中でも、私が美味いと感じられるエネルギー量と密度のものを選んで取り寄せ、切り分ける。

私の評価に満たないものは、私が食べてしまおう。


〈美味しいわ!昨日たくさん食べたのに、とっても美味しいわ!!〉〈幸せなのよ!これが毎日食べられるだなんて夢みたいなのよ!!〉

「あまり食べすぎると、昨日のように動けなくなってしまうから、食べすぎないようにね?」


昨日と同じく、一心不乱に果肉を啄ばむ彼女達に昨日みたいにならないように注意を促す。

まぁ、私は彼女達が動けなくなったとしても、抱きかかえる理由ができるので、一向に構わないのだが。


〈大丈夫よ!ノア様が切らなければ私たち食べられないもの!〉〈こんなに美味しいのよ!?食べ過ぎて動けなくなっても構わないのよ!〉


彼女達にとって私の食べている果実の味は衝撃的だったのだろう。動けなくなっても構わないらしい。


君達、私が果実を切らなければ良いというが、君達が望んだら私は嬉々として切り分けるぞ?

初めて一緒に暮らしたいと言ってきてくれたんだ。盛大に甘やかし尽くす自信がある。



昨日と同じく、好きなだけ果実を食べたことで、二羽とも寝床でひれ伏している。


〈お腹が苦しいわノア様!動けないわ!〉〈幸せなのよ!動けないけど幸せなのよ!〉


そら見たことか。体を動かせないほどに腹が満たされれば苦しいだろうに、彼女達の表情は実に幸せそうだ。

多分、この光景は、これからも見ていくことになる気がする。果実はまだ大量に残っているのだ。

この娘達には、今度魚も食べさせてあげようと思う。食べられればの話だが。



少し時間が経過し、多少は動けるようになったレイブランとヤタールが私に質問して来る。


〈ノア様はみんなと仲良くしたいのよね?〉〈ノア様はみんなと触れ合いたいのよね?〉

「そうだね。君達のようなふわふわとした羽毛だけでなく、艶々だったり、サラサラだったり、モコモコした毛皮。弾力のある肉球なんかも堪能したいね」


私はそういった類の生き物が、生まれながらにして好きなのだろう。自覚していないだけで他にもあるかもしれないが。


〈配下が増えるのはいいことよ!おしゃべりの相手が増えるわ!〉〈でもノア様の力に頼り切る様な奴は良くないのよ!ノア様の役に立てるヤツじゃないとダメなのよ!〉


レイブランは、自分達以外にも私に仕える者がいた方が良いと言う。そしてヤタールは私の威を借るような者を配下にすべきではないと言う。


〈ノア様の配下に相応しいヤツがいるわ!〉〈アイツ等ならノア様の配下に相応しいのよ!〉


どうやら、彼女達には私と一緒に暮らしてくれる者達に心当たりがあるようだ。


「それは嬉しい情報だね。教えてもらって良い?」


二羽が同時に、に私と一緒に暮らしてくれそうな者の説明をしだす。


〈ウサギよ!足がとっても固いモノに覆われてるの!真面目な男の子よ!〉〈猪なのよ!ノア様より大きいのよ!沢山の古傷があるのよ!〉〈熊よ!すごく大きくて頭に角が生えてるわ!戦うのが大好きな奴よ!〉〈狼なのよ!透明になって急にいなくなったり出てきたりするのよ!アイツきっと怖がりなのよ!〉


2羽揃って口早に候補者達の特徴を語っていく。

そういえば、レイブランとヤタールはいつも同時にしゃべり出しているが、彼女達の言葉が聞き取れなかったことは不思議なことに今のところ一度もないな。

2羽とも同じようなタイミングで話しているのに私の頭はしっかりと処理できているのだ。空気振動による音声ではなく、思念を送られてきているからだろうか?


それはそうと、彼女達が挙げてくれた者達。ウサギ以外は心当たりがありすぎる。そのうちの2者はかなり怯えさせてしまったのだが。


猪は”老猪”、熊は”角熊”くん、狼は”蜃気狼”ちゃんのことを言っているのだろう。


“角熊”くん、戦うことが好きなのか。

私が会った時はそんな気配などまるで見えなかったことを考えると、戦いが好きな”角熊”くんが戦う気をなくすほど私が規格外、ということなのだろうな。


そしてヤタール。”蜃気狼”ちゃんが怖がりなのは多分合ってるけど、そういう言い方、私はどうかと思うぞ?


“老猪”は、あれからどうしているだろうか?

彼は私に対して恐怖を感じていなかったように見える。それどころか、別れ際には明確にこちらを敬っていた。

もし、彼をレイブランとヤタールが勧誘したならば、ここに来てくれるのだろうか?それとも、私が直接誘うべきか。


………後者だな。私が直接誘おう。


“老猪”に限った話ではない。私が一緒に暮らしたいと願いを伝えるのならば、一緒に暮らさないかと誘うのならば、誰かに代わりに伝えてもらうわけにはいかない。


その旨は、2羽に伝えておこう。


〈分かったわ!ノア様がどうしても配下にしたい奴だけ誘うのね!〉〈ノア様からは私達を誘わなかったのよ!ノア様は森のみんなに優しすぎなのよ!〉


彼女達から彼等を勧誘をしないようにしてもらった。


〈ノア様は、最初に誘いたい奴がいるのね!?〉〈ノア様にとって特別なのね!?どんな奴なの!?〉


彼女達も私の気持ちを察してくれたようだ。どんな子なのか気になっているみたいだ。伝えておこう。

もしかしたら、2羽も知っているかもしれない。


「真っ白い体毛に覆われた大きな蜘蛛だよ。背中側の腹部に青緑に輝く模様があるんだ。私の初めての友達だよ。多分、私以外で初めて果実を食べた動物じゃないかな?初めて会った時に、切り分けた果実を一緒に食べたんだ」


私が”毛蜘蛛”ちゃんの特徴を伝えると、レイブランもヤタールも何やら動揺したそぶりを見せた。

この反応は、彼女のことを知ってはいたけれど、あまりいい関係ではないのかな?


〈天敵よ!私達の天敵!〉〈糸が切れないのよ!糸を飛ばして当ててくるのよ!〉


敵対関係ということだろうか?彼女達はまだしゃべる。


〈怒られちゃったわ!糸で縛られてしまったわ!〉〈アイツの巣に引っかかってた虫を食べようとしたのよ!美味しそうだったのよ!?〉

「君達、よく無事だったね?」


怒られて当たり前だろう。美味しそうだからって当人が食べようとしたものを横から掻っ攫ってしまったら、怒るのは普通の反応だ。

むしろ良く殺されなかったな、と素直に思ったことを伝える。

“毛蜘蛛”ちゃんなら、やろうと思えば2羽を食べてしまうこともできただろうに。


〈無事じゃなかったわよ!いっぱい怒られたもの!〉〈枝から逆さに吊るされたのよ!?そのまま叱られたのよ!〉


私から見れば、十分無事だよ。ヤタールは私が優しいと言ってくれたが、”毛蜘蛛”ちゃんの方が優しいのではないだろうか?


〈ノア様はアイツを誘いたいのね?誘いましょうよ!アイツも待ってるわ!〉〈アイツもここで暮らすべきなのよ!誘うべきなのよ!絶対アイツ喜ぶのよ!〉


2羽は、私に”毛蜘蛛”ちゃんを誘うべきだと言ってきた。彼女も喜ぶから、と。


本当に喜んでくれるだろうか?

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