テラーノベル
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橘靖竜
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歩夢は、”Dシェア”の画面を見つめたまま数秒だけ迷い、そのまま夢の内容を簡単に打ち込んだ。
細かい描写は省いた。
家族のこと。
東京タワーのこと。
母の声。
読み返すこともせず、投稿する。
画面が切り替わり、
〈共有しました〉の文字が表示された。
ベッドに背中を預け、息を吐いた。
その直後、スマートフォンが震える。
通知。
Dシェアのリプライ。
表示された名前を見て、歩夢は小さく眉をひそめた。
妹だった。
「東京着いたら連絡してって言ったのに!」
歩夢は一瞬、画面を閉じかけて、やめた。
夢を見たことも、
眠ってしまったことも、
ここでは言う必要がない気がした。
代わりに、別のアプリを開く。
着いたことを知らせる文を短く打って、送信する。
スマートフォンを伏せると、部屋はまた静かになった。
それから、二日ほどがあっという間に過ぎた。
引っ越しの段ボールを片付け、
足りないものを買い足し、
街を少しずつ歩いて覚える。
そして、入学式を終え、大学生活2日目を迎えていた。
最寄り駅から電車に乗り、
構内を抜け、キャンパスへ向かう。
思っていたよりも広い敷地。
まだ同じように少し緊張した面持ちの学生たち。
歩夢は、案内板を見上げ、
スマートフォンで時間と教室を確認した。
胸の奥にあるのは、不安よりも、期待の方だった。
この場所で、何かが変わる。
理由は分からないが、そんな予感だけがあった。