💚side
🧡「それで?どうして女の子のふりしとんの?渡辺くんは」
康二が淹れたてのコーヒーを目の前に置いた。康二の部屋で二人で話している。
俺は首を振った。
💚「さあ?」
夜遅くまで小テストの採点やら、授業の準備やら、理事長への報告書の作成やら…人使いの荒いこの学園の仕事に追われた後は、俺は気が向いたらここへ泊まる。給料が破格なのだけが頑張れる理由だ。
俺たちの今朝の話題は何かと目立つ転校生の話。渡辺翔子と宮舘涼太のことだ。特に渡辺は性別を偽ってこの学校に潜入してきた。何か目的があるんだろうか?
掛けていた眼鏡を外して目頭を軽く揉む。
視界がぼやける。日頃オーバーワーク気味の目は今も悲鳴を上げていた。自慢ではないが、俺はかなり目が悪く、コンタクトレンズか眼鏡が欠かせない。子供の頃からの勉強のしすぎのせいで、超の付くど近眼だ。
🧡「ホットタオル作ったろか?」
💚「ああ。悪いな」
康二との付き合いはもう2年ほどになる。
前任の養護教諭が無計画に子供を孕んで産休を取り、引き継ぎもしないで辞めていった。これだから女という生き物は責任感がなくていけない。
そんな時に、ちょうど職を探していた康二を後任として理事長に推薦したのだった。
康二は若い美しい男の子が大好きだから二つ返事でOKしてきた。
昔から佐久間プロダクション…通称『サクプロ』の年末カウントダウンコンサートで盛り上がる俺たちは実は親友兼セフレだ。推し活で盛り上がった夜になんとなく関係を持ってしまい、ずるずるとその関係を続けているが、決して恋愛関係ではない。
しかし、渡辺を一目見た時は久しぶりに心が震えた。
初対面は女子として見ていたから、惜しいなあ、これが男の子だったらなあと単純に残念がっていたが、男の子だとわかってからは俄然彼が気になって仕方がない。
俺のことを好きな佐久間が牽制のつもりで渡辺を男だと教えてくれた時には、心の中で万歳三唱した。佐久間は俺がストレートだと思って密かに可愛い胸を痛めている。
佐久間には悪いけど、渡辺はドンピシャに俺の好みなんだよね。
色の白さといい、肌のきめ細やかさといい、跳ねっ返りな性格といい、見た目の美しさにそぐわない頭の悪さといい…俺にとってツボしかない。
🧡「ほい。熱いから気を付けてな」
康二に渡されたホットタオルを目にあてると、じんわりと目の奥の疲労が取れていくようで、心地よかった。康二は本当に気が利いている。
💚「あー。気持ちいい」
🧡「せやろ」
そう言って、康二は話の流れとは無関係なタイミングで俺に軽くキスを落とした。
🧡「でも阿部ちゃん先生、高校生に手ぇ出したらあかんで?せめて在学中は俺にしとき」
💚「当たり前だろ。唾つけるだけ。人のこと言ってないでお前もな」
🧡「岩本くんも目黒くんも捨てがたいねんなぁ〜。どの子も可愛いから迷うわ」
💚「わかる。若紫のように俺好みに大切に育てたい」
康二がキョトンとした顔をした。
💚「源氏物語だよ。教養ないなお前」
🧡「まあ、でも、俺がもし渡辺くんに決めたらどうするん?」
💚「はっ。お前なんか相手になるかよ」
そう言いながら、俺は康二の腰を引き寄せた。
コメント
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ちょっと悪い子ちゃんな口調の阿部ちゃん、好き🥺