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💙「はぁ……っ、…はぁ…」
ひとまず最寄駅まで戻ってみた。
汗はヤバいし、足が痛い。
完全に運動不足だ。
肩で息をしてる俺を見て周りが白い目を向けてる気がするが仕方ない。
息を整え歩きながら周りを見る。
それらしい人は見当たらない。
スマホは変わらず音沙汰なし。
既読にすらなってない。
💙「……はぁ、…どこに、いるんだ……?」
人通りから外れて駅の壁に寄りかかり、人の流れを目で追ってみる。
「部長」
誰かから話しかけられた。
目を向けると、その相手は目黒だった。
もしかしたら涼子さんのことを知ってるかもしれない。
俺はすぐに目黒に駆け寄る。
🖤「探しましたよ」
俺を…?
いや、そんなことよりも…!
💙「涼子さん、見なかったか!?」
🖤「見ましたよ。………さっきまで一緒でしたから」
💙「…! どこにいるんだ…!?」
目黒の肩を掴んで尋ねると「うーん」と考える仕草をした。
🖤「実は涼子さんと賭けをしてて。だから部長に連絡したんですけど、既読もつかなくて困ってました」
そういえば連絡来てたな…。
後回しにしてた。
💙「賭けって何だ?」
🖤「内容は秘密ですけど、涼子さんがいる場所のヒント出しますね」
💙「ヒント?……わかった」
🖤「【カラス】です」
カラス…?
カラスと聞いてパッと思いついたのは二つ。
一つは二人で飲んだ帰りに誂った道。
でも、もう一つは……
🖤「制限時間は一時間」
💙「はぁ!?」
🖤「俺が涼子さんに連絡したらスタートで、時間を過ぎたら帰ってもらいます」
💙「ちょ、ちょっと…まt!」
🖤「はい、スタート♪」
目黒の笑顔が妙に腹が立つ!
くそっ!
本当に生意気な部下だ!
俺は再び走り出す。
目黒のやる気のない「頑張って下さいね〜」の声が耳に残った。
🖤「………見つけないでほしいなぁ」
目黒の低い呟きは誰にも聞こえず、その場に消えた。
***
一つ目は駅の近くだから、その道をゆっくり歩きながら探してたけど見つからなかった。
今はもう一つの場所に向かってる。
俺は期待と不安で胸がいっぱいだった。
.
.
.
漸く辿り着いた。
時間を確認すると50分が経過してる。
俺が思いついたのは公園。
ここが違ったら、もうわからない。
公園に足を踏み入れると誰かがブランコに座ってるのが見えた。
ズサッと靴で土を擦る音で、その人は俺に気付き目線を向ける。
目が合って、その場から動けなくなった。
キリッとした眉、鋭い目元。
綺麗な鼻筋、程よい厚みの唇。
少しパーマのかかった艶のある黒髪。
「……部長」
首筋にある二つ並んだホクロは髪が【短くなった】ことでより見えるようになった。
「……って呼ぶの、やっぱ違和感しかないや。そう思わない?………【翔太】」
💙「………………りょう、た?」
そこには上品なスーツを着こなした【宮舘涼太】がいた。
❤️「久しぶり」
💙「は、……え?……記憶、戻ったのか?」
❤️「…………戻った。……記憶を失くした時と同じように頭を打って、ね」
涼太の以前の職場は二階にあった。
雨天の日、外階段を上ってる最中に足を滑らせ転がり落ち頭を打って気絶。
次に目覚めた時には病院で記憶喪失。
そして今度は会社で階段から突き落とされ記憶が戻ったと説明された。
どうやら涼子さんだった頃の記憶も一緒になったようだ。
💙「どうして病院で言わなかった?」
❤️「…………だって、翔太に【宮舘涼太】で会いたくなかった」
💙「なんで?」
❤️「…………怒るでしょ?」
💙「は?」
❤️「何も伝えなかったから。……海外に行ったことも、戻って来たことも」
背中を向けながら徐々に小さくなる声。
確かに俺は涼太に怒ってた。
でもそれ以上に寂しかったんだ。
💙「……そうだな」
❤️「…………ごめん、翔太」
💙「……謝るんじゃねぇ。……涼太」
❤️「何?」
俺は涼太に近付き、後ろから抱きしめた。
❤️「翔太…?」
涼太の戸惑う声を聞いて更にギュッと腕に力を込める。
俺だって戸惑ってるんだよ、バカ。
💙「……っ、……おかえり…!」
❤️「……ただいま」
聞きたいことは…まだある。
でも、何よりも先に伝えたかったのは、
【おかえり】だった。
俺が離れるまで涼太はジッとしていた。
今度は俺が背中を向ける。
❤️「俺…翔太のこと沢山、泣かせてるね」
💙「……泣いてねぇ、汗だ。目黒に一時間って言われて、めっちゃ走ったから」
❤️「……大変だったね」
本当だよ。
今年一年分の運動した気分だわ。
💙「………当分、走りたくねぇ」
❤️「まぁまぁ。………そういえばさ、賭けの内容って聞いた?」
💙「……いや、聞いてないけど」
❤️「…………そっかぁ」
💙「涼太、何賭けたんだよ」
俺が質問すると涼太は、この公園にある一番大きな木の下に移動した。
俺も少し距離を空けて一緒に移動する。
木の幹に触れながら微笑む。
❤️「ここの公園、懐かしいよね」
💙「そうだな。俺達が良く遊んだ公園だ。
……でも涼太が【カラス】に襲われて以来、遊んでない」
❤️「泣きじゃくる俺の手を翔太が繋いで家まで送ってくれた。……嫌なこともあったけど、俺の大切な【思い出の場所】なんだ」
木の幹から手を離した。
❤️「目黒との賭けはね。翔太が時間内に、ここに来たら、………………………こと」
一番重要な部分の声が小さくて聞こえない。
聞き返そうとしたけど涼太の真剣な表情をして声にならなかった。
❤️「翔太」
❤️「好きだよ」
❤️「子供の頃から翔太が好き」
❤️「幼馴染から言われて困るのはわかってる。でも、伝えたことを後悔してない」
❤️「最後に翔太に会えてよかった」
言いたいことを終えたのか俺の横を通り過ぎようとした涼太の腕を掴む。
❤️「離して」
💙「嫌だ」
❤️「翔太!」
💙「また俺の前からいなくなるのか!」
俺の言葉に涼太は膝から座り込んだ。
項垂れる涼太の正面に回り同じ目線になるようにしゃがむ。
💙「一度しか言わない」
💙「ちゃんと聞け」
目線が合う。
高鳴る鼓動を抑え口を開く。
💙「俺も涼太が好きだ」
💙「俺の隣にいてくれ」
💙「二度と離れるな」
地面にポタポタと水滴が落ちる。
涙の溢れる涼太の腕が俺の首に回った。
❤️「……うんっ…」
❤️「……もぅ、……絶対、離れないっ!」
今度は涼太が落ち着くまで俺達はお互いの体温を感じながら抱き合っていた。
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❤️「また仕事探さないとなぁ…」
二人でブランコに乗りながら今後の話をしてると涼太が呟いた。
💙「何言ってんだ。会社に行くんだよ」
❤️「辞めちゃったよ?」
💙「辞めてない。社長、受理してないって。俺も謝るから、一緒に行こう」
❤️「うん。……ありがと」
ブランコから降りて自然と手を繋ぐ。
瞬く星が俺達のこれからを祝福してくれてる、そんな気がした。
***
それから二ヶ月が経った。
あの出来事の次の日、涼太と社長室に行くと退職願は受け取ってないと社長に言われた。
社員達はすぐに涼太を受け入れて清掃員として普段通りに働いている。
【舘様】と呼ばれ人気になったけど【涼子さん】を熱望する声も多かった。
結果、隔週でウィッグを被り涼子さんとして清掃員も続けている。
そういえば涼太が涼子さんになったキッカケだけど。
記憶喪失になった涼太が前職の喫茶店のイベントで女装した時に、めちゃくちゃ褒められたのが嬉しくてハマったんだって。
そしたら女装するのが普通になったんだって常連だった目黒から聞いた。笑
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今日はトラブルで家に帰るのが遅い。
疲れたけど今は帰るのも楽しみの一つだ。
❤️「おかえり、翔太」
だって家に帰ってドアを開けば大事な人が待っているから。
💙「ただいま、涼太」
💙部長の憂鬱。本編はこれで完結ですが、番外編もあります!
まだ解明されてない部分を回収したいと思います。
……自業自得(´;ω;`)ウッ…
もう少しお付き合いください!
p.s.
ところで皆さん、気付きましたか?
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コメント
3件
なに?気づいてないんだけどぉ😭
わあ、完結おめでとうございます…! いやもう、第1話から追いかけてきた身としては、このラストにたどり着けて本当に嬉しいです。 「おかえり」と「ただいま」が交わされる場面、じんわり来ました。記憶が戻った涼太が「涼子さん」ではなく「宮舘涼太」として会いたくなかった、という心情の裏にある寂しさや罪悪感が、このエピソードで全部報われた感覚があります。それに「カラス」というキーワードが、単なるヒントではなく、子供の頃のトラウマでありながらも二人の絆の起点だった――という構造の巧みさに、思わず唸りました。 隔週でウィッグを被って涼子さんとしても働くというオチも、ちゃんと日常に戻った証拠でほっこりします。番外編で解明されていない部分を回収するとのこと、楽しみにしています! お疲れ様でした、zetsu.さん。