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「うっまぁぁ?!」
そう言って、湯気の立つ味噌汁を飲みながら目を輝かせていたのはぺいんとさんだった。叫んではいないが、しにがみさんも美味しそうに自分の手料理を食べてくれていた。
ちなみに用意したのはザ・日本食という感じで鮭と白ごはん、そして味噌汁だった。…というか、冷蔵庫には特に豪華なものが入っていなかったためこれらしか出せなかった。
そうすると、ふとぺいんとさんが真剣な眼差しで俺を見つめて味噌汁の入った皿をコトッと置いた。
「───俺たちのこと、知ってるんすか?」
「えっ。」
不意にされた質問に、俺は驚く。いや、そりゃ急にそんな質問されても───・・・っあ”!!そういや、確かカップラーメンを食べる前にここら辺に新聞紙を置いたまんまな気が───・・・
そうして辺りを探すと、俺の予想通り、ちょうどぺいんとさん側の方の机の下に新聞紙が広げられていた。
…これは、言い逃れができない。
「………ま、まぁ…知らないとは言えませんね。」
俺が気まずそうに答えると、相手は机の下に広がった新聞紙を持ち上げ、急に盛大に笑い始めた。
いや、何。怖いんだけど…。そう思っていると、相手は新聞紙を少し下げてからしにがみさんの方向を向いて───
「───お前、ぶっさ!(笑)」
満面の笑みでいうぺいんとさんに、なぜか俺は目が離せなかった。…何というか、盗賊団って感じがしなかった。彼らはすごく…”高校生”のように見える。高校生がやるようなおふざけだったり、遊びだったり、しょーもない会話だったり…。
ひどく、盗賊団には見えない人相だった。
「だって、ぺいんとさんが監視カメラに気を引かせるために変顔しとけって言ったんじゃないですか!!」
笑いながらも怒るしにがみさんに、ぺいんとさんは大爆笑していた。
(───この人たちは、すごい賑やかだな。)
鮭を一口パクりと食べながら、心の中でそう呟いた。いつも独りだった俺には程遠いうるささだ。
……あれ、でも待てよ。この盗賊団にはもう1人メンバーがいるはず。確か名前は───・・・
「トラゾーさんもお腹空かせてるんですから、持って帰りますよ。」
「そうだな!じゃあしにがみは米と味噌汁な!俺は鮭とお茶!!」
そうだ。もう1人のメンバーはトラゾーという名前の人だ。それでもこの2人よりかは新聞に載った回数はだいぶ少なくて、あまり知られていないメンバーでもある。載っていたとしても大抵は見切れている。そんな彼は情報が少なく、人相も性別も不明だ。
そんなメンバーのために、彼ら2人は自分のご飯を3分の1ほど残して包んでいく。
「…お金ないの?」
ふとした俺の質問に、相手は言いにくそうに答える。
「これが誰かさんのせいでなくなっちゃって…。」
あはは、と苦笑いする相手に、相手も苦労してるんだな、と少し同調したくなった。
───それでも、事件を起こしているからと言ってこの人たちが完全な悪というわけではない。というか、正義でもあるのではないだろうか。この人たちは悪事を暴くという目的で働いており、ついでに金目のものを盗んでそれを証拠とする。少し平和に寄り添ういい人たちだ。
…まぁ、なんでそんないい人たちがこんなことをするのかはわからないが。
「…あれ、てか俺たちまだ名前聞いてませんでしたよね?」
「あっ!確かにそうですね!!」
「えっ?」
ふと話を振られ、俺は少しびっくりする。…いや、と言っても名前なんて知ったって意味ないのに…。
それでも相手が待っている。俺は不可抗力だ、と諦め名前を言った。
「ない…です。」
ふと、沈黙が流れた。