テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ソファ。
エリオットはクッションに沈んでいる。
その上からチャンスが静かに覗き込んでいた。
距離は近い。
かなり近い。
エリオットの指には、まだネクタイが巻かれている。
けれど。
さっきより少しだけ力が弱い。
チャンスはそれを見ていた。
サングラスの奥で、わずかに口元が動く。
「エリオット」
低い声。
エリオットは視線を少し逸らす。
「なに」
チャンスはゆっくり言う。
「さっきより弱い」
エリオットが眉を寄せる。
「弱くない」
そう言いながら、ネクタイを引く。
くい。
でも。
前より少しだけ弱い。
チャンスは小さく笑う。
「そうか」
そして少しだけ距離を詰める。
顔がかなり近い。
エリオットの呼吸が少し乱れる。
チャンスが静かに言う。
「離すなら」
ほんの少し間を置く。
「今だぞ」
エリオットが固まる。
ネクタイを握る指が、ほんの少し迷う。
チャンスは続ける。
「このままだと」
少しだけ顔を寄せる。
声が低く落ちる。
「俺は止まらない」
沈黙。
数秒。
エリオットの耳が少し赤い。
それでも。
指はまだネクタイを握っている。
チャンスが言う。
「どうする」
エリオットはゆっくり息を吐く。
それから。
少しだけ笑う。
「……チャンス」
「何だ」
エリオットはネクタイを指に巻き直す。
さっきよりしっかり。
そして。
くい。
また引く。
チャンスの体が少し前に傾く。
エリオットが言う。
「離さない」
小さく笑う。
「やれるもんならやってみて」
チャンスは数秒黙る。
それから。
静かに笑った。
「……言ったな」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!