テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ゆゆゆゆ
#Paycheck
ゆゆゆゆ
#Paycheck
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ソファ。
エリオットはクッションに沈んでいる。
その上からチャンスが静かに覗き込んでいた。
距離は近い。
かなり近い。
エリオットの指には、まだネクタイが巻かれている。
けれど。
さっきより少しだけ力が弱い。
チャンスはそれを見ていた。
サングラスの奥で、わずかに口元が動く。
「エリオット」
低い声。
エリオットは視線を少し逸らす。
「なに」
チャンスはゆっくり言う。
「さっきより弱い」
エリオットが眉を寄せる。
「弱くない」
そう言いながら、ネクタイを引く。
くい。
でも。
前より少しだけ弱い。
チャンスは小さく笑う。
「そうか」
そして少しだけ距離を詰める。
顔がかなり近い。
エリオットの呼吸が少し乱れる。
チャンスが静かに言う。
「離すなら」
ほんの少し間を置く。
「今だぞ」
エリオットが固まる。
ネクタイを握る指が、ほんの少し迷う。
チャンスは続ける。
「このままだと」
少しだけ顔を寄せる。
声が低く落ちる。
「俺は止まらない」
沈黙。
数秒。
エリオットの耳が少し赤い。
それでも。
指はまだネクタイを握っている。
チャンスが言う。
「どうする」
エリオットはゆっくり息を吐く。
それから。
少しだけ笑う。
「……チャンス」
「何だ」
エリオットはネクタイを指に巻き直す。
さっきよりしっかり。
そして。
くい。
また引く。
チャンスの体が少し前に傾く。
エリオットが言う。
「離さない」
小さく笑う。
「やれるもんならやってみて」
チャンスは数秒黙る。
それから。
静かに笑った。
「……言ったな」