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「お、おい、そんなに慌てなくても……どこまで案内するんだ?」
「もうすぐ、もうすぐですよぉ~!」
未開の地に向けた話し合いをするということで、ひとまず何か食べることになった。どこか適当な所で軽く食べながらでも。と思っていたのだが。
何やらルティが張り切っているようで、ぐいぐいとおれの手を引っ張りまくりだ。この光景にミルシェは微笑んでいるし、シーニャはおれの後ろをついて歩いているだけ。
シーニャは次への旅にサンフィアも連れて行くのかと聞いてきた。ミルシェが行かないのであれば候補にもなるが、そこは彼女次第といったところ。
「ルティ。まだなのか? この辺りはまだ廃墟が……」
「アックさま、ご心配には及びませんわ。廃墟の苔はそぎ落としていますし、魔物は一掃しましたわよ。廃墟をお気になさることはありませんわ!」
「ミルシェさんの言うとおりなんですよ~! すぐです、すぐすぐ!」
「そういうことじゃなくて、気分の問題なんだが……」
そして案内された所に着いた。まだこじんまりとしたものだが、どうやら食事を提供する店のようなテーブルやイスが配置されている。居住区の奥まった所に作ったということは、ここで店を始めるつもりなのか。
そんなことを思っていると、ルティが立ち止まって両腕を鳥のように大きく広げ、歓迎のポーズを取っている。
「アック様。『ルティのこぶし亭』にようこそ! なのです~!」
「こぶし亭? ここで食堂を?」
「はいっっ! すでに何人かの獣人の女の子たちを雇いまして~! きちんとお店が出来上がったら、正式に開店しようと思っています! どうですか、どうですか~?」
「い、いいんじゃないか」
そういうことか。どうりで張り切り方が半端じゃないと思っていた。
「やった~!! そんなわけで、アック様が初めてのお客様なのです! ささ、お座りくださいませ」
「おぉ……」
料理に関しては文句はないが、一体何をメインに出してくるのだろうか。
「ミルシェとシーニャの分は?」
「あ、あたしは今度で構いませんわ」
「ドワーフの料理は信用出来ないのだ……だから、アックだけで大丈夫なのだ。ウニャ!」
二人ともルティへのトラウマが残っているな。おれはルティの料理に耐性があるし強くもなれたから文句は無いが。
「じゃあ、持ってきていいぞ」
「はいっっ! そう言われると思いまして、作っておきました! さあ、どうぞ召し上がれ~!」
ずいぶん手がかかってるが魚かな?
もしやこれも何かの効果があるんだろうか。
「……うん、美味い」
とんでもない味がするかと思っていたが至って普通だ。
「ほ、本当ですか? じゃあ、じゃあ! 今どんな感じですか?」
「ん? そういや、気のせいか喉の奥から何か熱いものが……」
「実はですね、わたしの特製ソテーを食べるとバフを一時的に得られるんですよ~!」
「バフ……。ちなみに得られた効果は?」
「思いきり息を吸って吐くだけですっっ!」
それなら問題なさそうだな。
「息を? どれどれ……」
「あっ! くれぐれも離れて――」
「ゴアアッ!」
思いきり息を吸って吐いたら、ドラゴンのように口から炎を噴いてしまった。
「うあちゃあああああ……!!」
「ルティ、これはどうやって止めるんだ!? ゴアッ!」
「あ、熱いです、熱いです! す、数時間くらいです~……」
「……だろうな」
予想していたのか、シーニャとミルシェはすでに避難している。一応の効果は得られたが、これはおれだからなんだろうな。
「今なら廃墟や枯れ木も燃やし放題ですよ!」
「……そ、そうだな。ありがとうな、ルティ……」
「アック様の為のお手製でしたので、良かったですっ!」
これはバフではないような気がするが、ルティが嬉しそうだから言わないでおこう。