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【まな板と包丁の関係】作 夢宮 楓
『殺してやるっ!!』
私は夫に包丁をむけながら脅した。
2050年3月8日、私は捕まった。
『私は悪くないわよ……』
尋問されても、私はそれしか言わなかった。
彼が先に私に包丁をむけたのだから、私は悪くない、ただそう言っているだけだ。
私は防御するものさえも、なかった……けど私はその時、できる限り頭の中を回転させた。
そしてたどり着いたこたえ……それは……
『まな板』
私は包丁があるなら、まな板もある。
そしてまな板は包丁と対立している。
ある意味!矛と盾!……そう思ったの。
『ほら証拠にもあったでしょ?』
『は?』
『まな板よ、まな板』
『はぁ、ありましたけど……』
『見ればわかるでしょ?』
見れば一目瞭然だ、まな板に思いっきり突き刺さっている包丁……何かしらの格闘はあったといえる。
『確かに見れば一目瞭然だ、殺意がこもっている』
『でしょ?ほら私は悪くないでしょ?』
『それはあなたが刺したからでは?』
『違うわよ、あれは夫が刺したの』
『けど、夫さんが貴女に殺されそうになったと言っているんですよ』
『私は正当防衛をしたの』
私は何度も聞かれたが、私は正当防衛をした、私は悪くないと何度もこたえた。
私は身を守っただけなのだから……。
『なら夫さんを脅した理由はなんなんですか』
『……それは、逃げるために決まってるでしょ』
はぁ、あそこで強がったのがいけなかったのかしら……全く、早く引っ越したい、安心できる場所に帰りたいわ。
『夫さんから、あの時、妻は怒鳴っていたと言っていたけど……それはどうなんだ?』
『は?……あれが怒鳴っていた?っぷ!あははは、あの時、私の声は怯えて震えていたのに?』
『……』
『はぁ?ふざけんじゃないわよっ!!』
私は立ち上がって、テーブルをバンっとたたいた。
『おっ奥さん落ち着いてください』
周りの警察の人たちも立って、私を落ち着かせようと、ゆっくりと座らせる。
『……夫さんは嘘を言っていると?』
私がどんな思いで、夫から逃げようとしたと思ってるの?どこまでも最低なのね……夫(あなた)って……。
『えぇ、そうよ、嘘に決まってるわ……私を犯人に仕立て上げたいんでしょうから』
私はもう、夫のことを信じられなくなっていた。
その頃、夫は……。
『殺されそうになったとは奥さんにですか?』
『そうだよっ……ったく、酷い目にあったぜ』
『まな板に刺さっていた包丁は奥さんが突き刺した……?』
『あぁそうだよ、俺は必死にまな板でガードしたんだ』
『なぜまな板をガードに使おうと思ったのか、聞かせてください』
『……っと、それは、まぁ〜、近くにあったからですよ、近くに……』
『奥さんは怒っていた?』
『あぁ、怒っていたよ、俺に包丁むけてた時なんて、俺を脅したんだぜ?』
『脅された理由、なぜ殺されそうになったのか、思い当たることはないですか?』
『あぁ、ないね、なぁそろそろ家に帰っていいか?俺は悪くないんだし……』
『……わかりました、ありがとうございました』
そして夫は家に帰って行ったらしい。
……私は帰れなかったのに。
けど、二ヶ月がたった頃、
2050年5月21日、私は無事に家に帰れた。
もう尋問ばっかり、同じこと言い続けて、同じこと聞かれて、嫌になっちゃったわ、本当に私は何にも悪いことしていないのに、全く許せないっ!!けど、まぁ誤解が解けてよかったわ。
それからまた一ヶ月がたち、私は引っ越しした。
夫?夫とは離婚することになったわ、まぁ当たり前よね。殺されそうになったのは、私だったんだから。しかも夫は浮気していたのよ?……私が邪魔だったのね。
私に言ってくれればよかったのに、私はそんなに心が狭い人間ではないのよ?浮気したから離婚してって言ってくれれば、こんな目にはあわなかったのに……。
私ってそんなに心の狭い人に見えたのかしら、浮気より、そっちのほうが、悲しい……わ。
今回のことを踏まえて、これからは、
『まな板を持ち歩くわ……』……なんちゃって。
私は知った、包丁にはまな板、
それはある意味、
スペシャルコンビだと言うことを……。
終