小鳥のさえずりに答えるように、その音は鳴っていた。
繊細で優しい音色が辺りに色をつけていく。
夕日に照らされる広場。その片隅にはひとつの笛のような楽器を持った少年が座っていた。
彼は誰もいない”そこ”で楽器を吹いていた。
「うーん、やっぱり誰も来てくれないや」
少年は小さくため息をついて、演奏をやめてしまった。
「今日はもうやめにしよう。パン、探しに行かなくちゃ」
楽器を自分のバッグにしまうと、少年は立ち上がって辺りを見渡す。
ブォォォォォ_____。
強い風が吹く、少年がつけている耳飾りがゆったりと風になびく。
「それじゃ、今日はこっちに行ってみよう」
少年は風に導かれるようにゆっくりと歩き出す。
歩いていくと、少しずつ屋台が見え始めてきた。
果物屋、呉服屋、さらにはシーシャ屋もある。
「水タバコかぁ、いつか吸ってみたいけどなぁ…」
様々なお店に興味を持ちながらも、少年はパンを探しに歩いていく。
しばらく歩くと、少年は1つの店の前で立ち止まり、目を光らせる。
「よーし、今日はこの店に決めだ」
少年はそう呟くと、お店に近づきパンを見る
「わぁ〜、すっげぇ。めっちゃパンが置いてある!ほうれん草とベーコンのキッシュに、シンプルで美味しい塩パン。あっ!僕の大好きな肉球パンも!」
少年の眼差しは先程と違い、パンを欲しがるようなつぶらな瞳に変わった。
「どれもほんとに美味しそうだな〜!でも、お金ないしなぁ…」
少年は憎たらしい目を店員に向ける
店員は嘲笑うような顔をして口を開く
「はんっ、そりゃあ残念だったな。今度来るときにはしっかりママにお願いするんだな!」
店員は煽るように少年に言葉を放った
少年は下を向き、店から離れていく
「チッ、これじゃダメか。だが、諦める訳にはいかねえな」
少年は考え込む
「ふむ、どうやってパンを盗もうか。あいつの気を逸らす何かがないと」
少年は辺りを見渡す
そこにはダンボールや、長めのロープ、ボールなどがある
「おっ、いいこと思いついたぞ」
少年はダンボールの中に大量の石を入れ始める
「ほんで、ここにロープを巻いて結んで、っと」
少年は石の入ったダンボールにロープを巻き、固く結びつける
「ロープのもう一方先はゆるめに結んで…、引っ張るように長くしておかないと…よし、準備完了だな」
少年は準備したものを眺める
「もう少しパン屋に近づけるか。ダンボールを運んでッ!?重ッ!!くっ、石を後で入れるべきだったか、」
少年は石が大量に入ったダンボールにタックルし、徐々にパン屋に近づけていく____
「はぁ、はぁ、重すぎだろコレ。とりあえず、ここに置いとくか」
少年はダンボールと円になるように結んだロープを地面に置く
「見えたらダメだから、ロープは体で隠すように持つか」
少年は呼吸を整える
「ははっ。これから面白い事が起きるだろうな。俺にとった、さっきの態度を後悔させてやる」
少年はそう言うとボールを右手に持つ
右腕を大きく振り、パン屋の店員をめがけ、ボールを投げた___
コメント
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続きがめっちゃ気になります!