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〔あ、雨止んだんじゃない?〕
そう言いながら夏は窓を指さした。
本当だ。
いつの間に止んだんだろう。
〔僕、もう帰るね〕
〔うん、またね〕
〔また明日!!〕
また明日?
明日もあの場所に居るってことだろうか。
もしかしたら、
この気持ちは夏も同じなのかもしれない。
遠くで夏が手を振っている。
私も振り返すと、
嬉しそうな顔をしながら帰って行った。
その日からずっと夏と私は遊んだ。
時には音を楽しみ、時には香りを楽しんだ。
夏と出会ってから結構経ったある日、
〔未鳥、僕、ついに補聴器を買ったんだ!〕
幸せそうに夏はそう言った。
〔実は少し前から買って付けようと思ってたんだ〕
〔喋る練習もしたよ〕
〔だから明日つけてくるね〕
そう私に微笑みながら言う夏。
明日、つけてくるってことは、
もう手話で話せないってこと?
夏の耳が聞こえないから私は自分の声を出さず、
手話を使って会話をすることが出来た。
だけど、夏の耳が聞こえるようになったら、
手話で会話するのではなく、
『声』での会話になるってこと?
そんなの嫌だ。
𓈒 𓏸𓈒 𓂃
夏side
僕は幼い頃、
目が覚めたら耳が聞こえなくなっていた。
昨日までは聞こえていたのに、
今は無音で怖さまで感じる。
僕のおじいちゃんも小さい頃、
急に聞こえなくなったらしい。
だからきっと、
僕はおじいちゃんと同じ道を辿ってしまったんだ。