夏の暑い日に、
自転車を止めて休憩していると
急に肩を叩かれた感覚がした。
僕は驚いて振り返ると女の子がアワアワしながら
手を合わせて申し訳ないポーズをした。
僕はなんだか可愛くて笑いながら
〔大丈夫〕
と手話で表した後、
自分の耳を指差しバツマークを作った。
すると女の子は
〔話したいことがあるから、また明日会える?〕
と手話で問われた。
僕は驚きながら
〔手話出来るの?〕
と聞くと
〔うん〕
と笑顔で答えた。
不甲斐にも、なんだか可愛く見えた。
そんな時、
ある音が聞こえたのは気のせいだろうか。
〔なんだか嬉しい〕
と微笑みかけると女の子の顔は
一気に真っ赤になった。
そして、
僕たちは結構な頻度で会うような関係になった。
女の子の名前は未鳥だということ。
未鳥は僕が鳴らした自転車のベルの音に
つられて僕に話しかけたこと。
未鳥は音が好きだということ。
それを僕に伝える時に僕が傷つかないか
心配してくれる優しいとこだって、
全部知れることが出来た。
そんな僕はまだ知らないことが1つある。
それは未鳥の『声』を知らないこと。
未鳥と『声』での会話をする。
それが僕の目標だった。
そんなある日、
僕は補聴器を買うことが出来た。
でも、まだ未鳥には言わない。
使い慣れてから。
少しだけでも喋れるようになってから。
僕は未鳥に伝えようと思った。
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